76 ミモザ先生による【彫刻師】講座!
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「オーケー! 教え甲斐ありそうじゃん? アタシみたいに腕吹っ飛ばすんじゃないよ!」
「褒められた事ではありませんが、肝に命じたいと思います」
「おなじくです!」
「ん、痛い所を! それもまたよし! アタシの事はミモザ先生って呼びな!」
「先生分かりました」
「先生ですね」
中々勢いのある先生がやって来たようだ。
でもここまでエネルギーがあると返って気持ちがスッキリするっていうか。
腕吹き飛ばしたのはミス!! って言える豪胆さが好きになるっていうか。
こうして『彫刻師とは』と言う授業が幕を開けたのである。
【彫刻師】とは、元々この世界ではお守りを作って家々の安泰を願ったり、鉄の国サカマル帝国では家の大黒柱にその家を象徴する生き物を彫刻したりするらしい。
地味な仕事ではあるが、『心の拠り所を作るのが彫刻師の役目である』と言う考えの元、鉄の国サカマル帝国では貴族の子供で【彫刻師】が生まれると、金を集めてでも投資する家が多いのだとか。
ただし、【金食い虫の彫刻師】と言われるだけあって、本物の彫刻師になれるのは僅かな人数のみ。
大体はお守りを売って行くのが精々なのだという。
「また、庶民で彫刻師が生まれた場合は悲惨だね。まずスキルを上げさせないでスキルの封印を施す家が殆どなのさ」
「スキルって封印することができるんですか?」
「テリサバース教会で封印する事は可能だよ。金は掛かるけどね。他の国では【箱庭師】が迫害を受けていた時代もあるけど、それ以上に長い間『要らないスキル』と言われていたのが【彫刻師】なのさ。ダイヤ王国でも彫刻師と聞いて笑われるのが関の山だろう?」
「そうですね」
「うん……」
「彫刻師の迫害はとても歴史が古い。表舞台に出ることが出来ないとさえ言われている。そこに焦点を当てようなんて輩はまずいない……って、思ってたんだけどねぇ?」
「彫刻師はいて良いと思います。特に『心の拠り所を作る』と言う点では最高のスキルだとも取れますけど?」
「そう言ってくれると助かるねぇ。まぁ、不遇だけどユリのように理解してくれる人間もたまにいる。本当に稀だけどね。ただ、スキルが上がった彫刻師の彫刻は彫金師では出せない美しさがある。テリサバース教会にあるテリサバース女神の像なんかは、彫刻師が手掛けていることが多い」
「「「へ――……」」」
「一度見た事がありますが、それはもう見事な物でしたよ」
「スキルの高い彫刻師が作った物は芸術品だからね。それだけで価値が一気に上がる。ただし、ロストした場合は体の一部を欠損する恐れがとても高いのが彫刻師。故に最初に作れるようになる【身代わりの雫】は必ず身に着けておかねばならない。体を守りたいならね」
「「「はい!」」」
「スキル5までは木材でレベルを上げ、スキル5からは石を使ってスキルレベルを上げる。スキル6からは彫刻の神髄である造形をメインにスキル上げをして、スキル8からはその集大成として宝石や石を入れ込んだ彫刻を作って行く。ただし、付与できるのは限定された付与のみとなるのが彫刻師だ。見た目だけ作って他の付与師に付けたい付与を入れて貰う……と言うやり方も多い」
意外とやりようはありそうで、少ないのが彫刻師なのね。
「あの、家内安全とかのお守りの付与は一生涯続くんですか?」
「続かない。一年が限度のお守りだね。だから一年に一度の交換が必要になるし、使い終わったお守りと交換で、彫刻師が新たにお守りを作って付与をするのが習わしだよ」
「なるほど。彫刻師の付与は一年が限度なんですね」
「付与師が羨ましくなっちゃうよねぇ……まぁ、彫刻師の付与は一年契約みたいなものだから仕方ないんだけど、その分効果は絶大なんだよ」
「恋愛成就のお守りも一年なの?」
「それも一年だね」
「むう、意外と短いのね……」
「しかも、願いが叶った場合お守りは壊れる仕組みになってる。お守りが一年せずに壊れた場合は、恋愛が成立した証ともいえるね」
「へぇ……儚さもあるけどロマンチックともとれるわね」
「何より証だから分かりやすいわ」
「後は冒険者や魔物討伐隊になら交通安全とかね。行き帰りの道中に不幸が無いようにお守りを手渡すという事もあるみたいだよ」
それは良い事を聞いた。
エンジュさん辺りが聞いたら是非に作って欲しいって言いそうだわ。
ただ、隊員分ってなるとかなりきつい事になるけど。
スキルが上がり切らないとどうしようもないわね。
「でも、これで理解出来ました。どうしてこうも彫刻師のスキルは失敗した時のリスクが高いのかと謎だったんです。スキルに応じて身体も破損する場合が高いんですね」
「ふふふ、そう言う事。だから必ず始める前に【身代わりの雫】と『身代わり付与』は必須なのさ。他に質問は?」
「今の所は無いです」
「おなじくないです」
「オーケー。分からなくなったらまた先生に聞きな」
「「はい」」
「じゃあアタシも何か作ろうかな……」
「あ、ミモザさん依頼していいです? 実は台座が欲しくて」
「台座?」
「ええ、宝石を置けるような台座なんですけど、宝石の大きさは余り考えてなくて、まずは10cmくらいの球体の宝石が乗せられるような台座が欲しいかなと。次に20cmくらいで、最高は30cmくらいの大きさの台座があればいいかなと思ってるんですが」
そう聞くと「木工が良いかなぁ」と口にすると、アイテムボックスから50センチ四方で取って置いたヒノキの木材を三つ取り出すと「オーケー。作ろうか」と作ってくれることになった。
その前にお守りは作っていたけれど。
ドマとスギはミモザの作る台座に興味津々で、一つ作り終えるとチカッと光り、出てきたのは艶のある10cmの宝石を置く台座。
「まずはこの一つ。次に20cmの宝石を置く台座だね」
その後も危なげなく20cmの宝石を置く台座、最後に30cmの宝石を置く台座を作ってくれて、どれもニスで塗ったかのように綺麗だった。
「ええ、ではこちらも宝石を作りましょう。集中力アップなら趣旨を変えてブルートパーズにしようかな。アイテム生成・ブルートパーズ」
そう言うと魔法陣が現れ、そこから10cm、20cm、30cmのブルートパーズを出してみた。
その内まずは小さな10cmから台座に置いて……。
「ブルートパーズに『集中力アップ付与』」
そう口にして宝石に付与すると、気持ち集中力が上がった気がする。
「どう? 皆、なんとなく感じる?」
「気持ち上がったような感覚?」
「へぇ……付与ってそんな付与もあるのかい?」
「宝石にある意味合いを引き出して付与をしてるんです。ブルートパーズには集中力以外もあるけど、まずはそこを強めにしたんですよ」
「10cmじゃ余り変わらないかも、ほんとに気持ちって感じかなぁ」
そう口にしたのはラフィ。次に20cmの台座にブルートパーズの球体を置き『集中力アップ付与』とすると、部屋全体に掛った感じがする。
これには皆も感じ取っているようで、ミモザさんは「へ――、こりゃ凄いね!!」と驚いていた。
「この部屋くらいなら20cmの宝石でいいみたい。ミモザさん、20cmの台座後一つ作って貰えます?」
「いいよ、素材あるかい?」
そう言って最後の50cm四方のヒノキを出して手渡すと、同じように台座を作ってくれたので、次に運気アップのラピスラズリを用意して『幸運アップ付与』を付けると、部屋全体に効果は広がった。
ただ、膜が広がった感じがするだけで本当に幸運が上がっているのかは分からないが、鑑定したところ【幸運の上がるラピスラズリ】と出ている。
「鑑定ではちゃんと幸運の上がるラピスラズリって出てますね」
「なら付与は失敗してないんでしょうね」
「後は私達が体感するかどうかね」
「私もアイテムを作りつつ体感してみます」
こうして全員がスキル上げ、もしくはアイテム作りを始めた訳だが――。
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