058 いつまでも幸せに
ボクとスカーレットが最初の関係を持ってから、早くも半年が過ぎた。
新都市セイクリアはまだ完成とは言えないけれど、外壁はすでに出来上がっている。小都市の住人の出入りを管理することになっているから、これがないと移住すらままならないからね。
アルクスたち、ボクと同じハイダ様の従仕たちもセイクリアに移住し、今はボクも一緒に暮らしている。誘拐されてから長かったけれど、ボクもやっと家族の元に帰って来られた気分。エイトとも、これからは存分に遊んであげられる。
今、セイクリアには、ボクと肉体関係を持ったことのある女と牝、彼女たちと関係を持ったことのある男たちが、全員集められている。小都市の出入りを管理される対象の人々ということになる。それ以外に、ボクと女、牝は性行為も管理される。性行為をすること自体が制限されたりすることはないんだけど、誰とヤったかは記録され、その相手は新たな管理対象になるわけ。
ちょっと窮屈だけれど、ボクの持つ聖人の因子のことを考えれば仕方がないね。
ボクが淫獣やエタニア人誕生の経緯をスカーレットに暴露したせいで、“臨時”の取れたソーセス政府も計画を変更し、エタニア人廃絶から共存へと舵を切った。というか切らざるを得なかった。
他の都市の政府にソーセス政府の元の計画がバレると、多分めちゃくちゃ責められるはず。だから、ソーセス政府はそのことをおくびにも出さずに隠し通している。
エタニア人たちは、ソーセス政府の元の思惑に勘付いているだろうけど、何も言ってこない。ソーセス政府の弱味を1つ手に入れた、くらいに思っているのかも知れない。いや、そんなことよりエタニア人の生存戦略を考えるのに忙しいかな。
ソーセスやフロンテスは、ウェリス人のというかソーセス政府の手に戻ったけれど、エタニア人の牝も続々と移住している。まだソーセス圏内に留まっているけれど、それほど掛からない内に他の都市圏でも、触手を持った牝が街を歩く姿が珍しくなくなるだろう。
逆に、エタニア大陸へと渡って定住したウェリス人も、少なからずいる。男の大陸間移動は認められていないので、女だけ。
女たちは、従仕と別れてエタニア大陸へと行くわけだけど、中には従仕と別れ難く、しかし淫獣とのセックスも諦め切れず、ウェリス大陸とエタニア大陸を定期的に行き来する女もいる。
そんな女たちのため……だけではないんだけれど、セレスタ地峡からエタニア大陸に入ったところにも都市が造られ、通いの女はその都市とフロンテスないしセイクリアの2箇所に家を持っている。
彼女たちもセイクリアに出入りする時は厳しいチェックが入るけれど、ボクやボクと致した女たちと違って、都市の外では監視されないから、セイクリアに敢えて居を構えることに難色を示さない。
むしろ、自分が目の届かない場所に行くからか、都市全体が完全に壁で守られているセイクリアやフロンテスは、従仕たちだけで住まわせておくのに安心らしい。淫獣の危険は無くなっても、都市からある程度離れれば猛獣の危険はあるからね。
従仕と完全に別れてエタニア大陸の奥地にまで移り住んだ女もいるけど、上手く生活できているかな? 囚われの身だった時はずっと閉じ込められていたから判らないけれど、文化や生活習慣はかなり違うだろう。場所によっては気候もまったく違うし。
そんな新しい生活に慣れていけるか。もっともそれは、ウェリス大陸に移住して来たエタニア人も同じこと。試行錯誤を繰り返しながら、何とかやっていくだろう。
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そして今日は、月に一度のスカーレットとのセックスの日。朝食の後で彼女の館に来て、丸1日共に過ごし、明日の昼を過ぎたらハイダ様の元に帰る。
実は一度、ハイダ様や従仕のみんなも一緒に、と誘ったけれど、家族全員に首を横に振られた。一応は同じ都市に住んではいるものの、ボクという家族を誘拐した件はまだみんなの心の中で燻っているらしい。本当なら、ボクとスカーレットの性交も我慢ならないみたい。
確かに、ボクも誘拐されたのがアルクスたちの誰かだったら、同じ反応をするかも。ボクたち家族はみんな、自分のことより家族のことで感情を揺らすよね。
「ひと月というのは長いのぉ。いつも待ち侘びておるよ」
妖艶な色気を放つスカーレットに、もう危機感を感じることはなくなった。慣れただけかも知れない。危機感を感じようと感じまいと、ヤることをヤるだけだけど。
「お待たせして悪いね。これでも忙しい身だから」
これは社交辞令みたいなもので、実はそこまで忙しくはない。エタニア人との協定が成立してから、淫獣の生態研究もエタニア大陸に渡った女が行なっている。淫獣と直接触れ合える彼女たちがいるので、淫獣と接触できないボクにやることはない。時々、送られてきた彼女たちの報告書を読むくらい。
だから、ボクは今は、聖人研究のための毎日の搾精の他は、家事をしながらのんびりと仕事を探しているくらい。
「解っておるよ。それより、早速始めようぞ」
そそくさと服を脱いでいくスカーレット。それを見ながら、ボクも服を脱いで、控えている侍女に渡す。
ここに来ると、ほとんど1日中を全裸で過ごす。何しろ、スカーレットが何度も求めて来るから、いちいち服を着ているのも面倒で。寝る時はもちろん、食事中も全裸。温度管理は完璧だから、寒いことはない。
そして、寝室にも行かずに性交を始める。今から明日の昼過ぎまで、可能な限りの聖人の精を、スカーレットに流し込む。
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丸一日と少しの時間をスカーレットと共有して家に帰ると、まずはハイダ様に裸に剥かれて広い風呂に連れ込まれる。他の3人の従仕たちも当然一緒。
その間、まだ幼いエイトは、同居するようになった護衛の女が見てくれる。この家はソーセスに住んでいた時よりもずっと広くて、数人の護衛も一緒に住んでいるんだよね。いまさらボクが狙われることはないと思うんだけど、ソーセス政府もエタニア人たちも、それを警戒している。過保護もいいところ。
けれど、そのお陰で防犯対策はバッチリだ。
スカーレットとの逢引から帰った後の入浴は、ハイダ様曰く聖女の薫りを洗い流すため。スカーレットの館を出る前にシャワーを浴びているから、残っているとも思えないんだけれど。聖女とまぐわっているボクは、慣れちゃって気付かないのかな。
ハイダ様は、セイクリアに配備されたエクスペル・アーマー部隊の小隊長として、小都市周辺の警備をしている。淫獣の脅威がなくなり、警戒対象は猛獣しかいない今、エクスペル・アーマーは過剰装備なのだけれど、軍はそのまま使うことにしたらしい。
ソーセス政府および軍としては、万一淫獣が襲って来る可能性を考えているのだろう。
アルクスとベルントは、前と同じく家事に専念している。ボクが暢気に外の働き口のことを考えられるのは、二人がしっかりと家を守ってくれるという安心感があるからだ。
ダリアンもやっぱり家事をこなしているけれど、ボクと同じく働きに出ることを考えている。以前と同じようにヌイグルミ工房ができれば、そこで働きたいようだけれど、セイクリアの人口は建設が完了した時点で2万人程度の予定だから、ヌイグルミ工房ができるかどうかは微妙。最近では、自宅でヌイグルミを作っての通信販売にしようかと考えているようだ。
しばらく会っていなかった姉と妹も、従仕を連れてセイクリアに引っ越して来た。2人とも、初めてはボクを襲ったからね。セイクリアに居を構える必要がある。
今までもソーセス都市内に住んでいたけれど、何しろ人口500万の大都市だから、住んでいる場所も遠くてあまり会うことはなかった。
それが今は、人口2万人(予定)程度の小さい都市に一緒に住むことになったから月イチくらいで会っている。家族の距離が近くなったのは、いいことかな。
ボクが聖人と認定されてからというもの、男に似つかわしくない波乱万丈という言葉が相応しい人生だった。これでやっと、元の穏やかな日々が戻って来る。
以前と完全に同じというわけにはいかないけれど、これからはずっと、ハイダ様や従仕たち、それにエイトとこれからも産まれてくるだろう子供たちと、いつまでも幸せに暮らしていきたいな。
End
あとがきも同時投稿しています。




