044 淫獣の新しい生態
ボクは毎日、初めて見る女を相手に腰を振り続けた。最初の4日は1日に1人ずつ20回の膣内射精、次の2日はそれぞれ2人の女に10回ずつの膣内射精、そして今日は4人の女に5回ずつの膣内射精で、今、その4人目の女を相手にするところ。
「あなたが聖人様ですか?」
「はい、そうらしいです」
ってか、部屋に2人きりなんだから、判っているとは思うんだけど。
ちなみに、複数の女を同時に相手をすることはなく、1人ずつ順番に相手をしている。諜報部に所属している人たちなので、軍内部にもなるべく姿を隠しているみたい。ボリーさんたちはいいの?と思ったけれど、多分、諜報部と言っても色々と分担があるんだろう。
「光栄です、聖人様と交わえるなんて」
「そんな風に言われるほどじゃないです。見ての通り、ただの平凡な男ですし」
精液に治癒の力(女限定)があることを除けば、本当にただの男にしか過ぎない。仲間の従仕に比べて絶倫ではあるけれど、絶倫男は聖人でなくても普通にいるし。
「いえ、聖人と言えば伝説の存在です。その聖人様と同じ時代を生きられるだけでも光栄なのに、まさかこうして身体を重ねることができるなんて、夢のようです」
えっと、この人、聖人崇拝とかしている人? ちょっと引いちゃうんだけれど。
まあ、悪い人ではなさそうだし、さっさと済ませてしまおう。
「それでは、ヤりましょう」
今日すでに3人の相手をしたボクの方は全裸なので、彼女が服を脱ぐのを待って、一緒にベッドに入った。
すぐに、女は快楽の喘ぎを漏らしながら身悶えた。
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女たちへの膣内射精という儀式を終えたボクは、しっかりと身体を洗ってから身支度を整えて、研究所に行く前に、ヘルミナさんに挨拶に行った。
因みに、聖人能力調査室は今も健在なようで、彼女も室長のままだ。人が減って忙しいので、色々と兼任しているようだけれど。
ボクが訪ねた時も忙しそうにしていたけれど、ボクを見ると空間投影させていた映像を消して、座るようにソファーを指し示した。
今日の予定はもう終わったから、ボクに用事はないはずなんだけどな、と思いつつもソファーに座ると、ヘルミナさんは手ずから淹れたお茶をボクに出して、向かい側に腰を掛けた。
ボクがお茶を飲んで落ち着くのを待って、ヘルミナさんは口を開いた。
「セリエス、明日からまた、搾精をお願いしたいのだけれど、構わないかしら?」
はい?
一瞬、何を言っているんだろうこの人は?と思ってしまったけれど、すぐに得心がいった。誘拐される前は、毎日ボクの精液を搾り取って凍結保存していたんだっけ。兵士たちが重傷を負った時の特効薬として。
淫獣の侵攻の時、ボク自身も救護部隊に混じって、その場で精液を出したり治療したりとしていたけれど、ストックしてあった凍結精液も使われていたはず。
「ストックはあの時に使いきっちゃった……んですよね」
“あの時”でヘルミナさんには伝わった。
「ええ、そうなの。あの時は非常事態だったから、普段なら使わないような軽傷者にも使ったから」
さすがに擦り傷程度では使わなかったそうだけれど、普段なら使わないような軽傷も、ボクの精液で治していたらしい。搾精していたボクのいた後方のテントには重傷者しか運び込まれて来なかったから、そこまでの状況は知らなかった。
「今日は搾精しなくていいんですか?」
「4人とヤった後なのに、元気ねぇ。男は体力はないのに、精力は女並みなんだから」
男が女に勝てることと言ったら、それくらいだもんね。それだって、弱い男は強い女に敵わないけれど。
「それは置いておいて、今日はまだ準備が済んでいないのよ。手配しておいた機材がようやく届いたのが昨日で、今は設置中。だから、明日からお願いするわね」
「はい、解りました。機材って、何か特別な物が必要なんですか?」
「精液を凍結保存するためのものよ。前にも使っていたでしょう?」
そう言われてみると、そうだった。放置しておくと2日くらいしか効果の保たないボクの精液を凍結保存するために、専用の機材を使っていたっけ。その機材がなかったから、今までは搾精の依頼がなかったのか。
そんなわけで、ボクの仕事に毎日の搾精が加わった。あまり、仕事とは思えないけれど。
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淫獣は、ソーセスの郊外で生活していて、都市内にはあまり入らないらしい。偵察用のドローンは都市中心部に近付くと撃ち落とされるので、郊外しか撮影できないけれど、都市に潜入している諜報員からの情報でも、ごく稀に見る程度で、普段は都市内で淫獣を見ることはないのだそう。
エタニア大陸の都市では、淫獣は都市の外も中も自由に闊歩していた。それにもかかわらずソーセスの都市内に入らないということは、都市の中に入れないわけではなく、おそらく牝たちが淫獣に言い聞かせているのだと思う。
このことは、エタニア人が無闇に男を減らす意図はない、ということの証左に思える。つまりは、スカーレットの言う『エタニア人とウェリス人の雌雄交換』は本音だろう、ということになる。これだけで判断するのは難しいけれど。
とは言っても、それは軍や政府の考えること。ボクがやらなきゃならないのは、淫獣の生態研究だ。
エタニア大陸で見た限り、淫獣は基本的に水の中か水辺で暮らしていた。セレスタ地峡の東の方からエタニア大陸中央付近まで、ずっと湿地帯や湖が続いていたから、当然と言えば当然のこと。
だから、水辺での生活に特化した進化をしたのかと思えば、そうでもないらしい。
元々淫獣は、湿地帯から遠く離れたフロンテスの警戒ラインも越えて、ウェリス大陸の奥まで侵入はしていた。それでも、そう長居はせずにセレスタ地峡へと帰っていた。ほとんどは、乙女戦士たちが駆除していたけれど。
それは偏に、淫獣が水場から離れて活動できるのは短期間に限られるから、と思っていた。エタニア大陸の地形を見た後は余計に。淫獣の形状も、水棲爬虫類か両生類のように見えるし。
けれど、淫獣の侵攻からこっち、フロンテスからソーセスまでの広範な土地に散らばった淫獣は、ひと月以上も居座っているらしい。これまでの観察結果を覆す事態だ。
もちろん、この辺りにも川や沼、湖があるし、その近くにいる淫獣は水浴びもしている。しかし、近くに大きな水場がなくても、淫獣は平気で生活しているようだ。もちろん、時には近くの小さい水場で水浴することもあるけれど。
淫獣は水辺での生活に最適化するように進化した、とボクは考えていたけれど、そうでもないらしい、とこれまでの推測を修正する。水辺の方が生活はしやすいのだろうけれど、生命維持に必要な量の水さえあれば、陸上生活も可能なようだ。ずっと水辺で生きてきたから、慣れるまでに多少の時間は必要だろうけれど。
それにしても、これじゃあんまり淫獣の生態研究にはならないなぁ。何しろ、エタニア大陸では淫獣と牝が一緒に暮らしていたのに、ウェリス大陸では都市の中心部と郊外とに別れて生活し、たまに牝が郊外に出かけて淫獣とまぐわっているだけのようだから。
淫獣が水辺を離れて生活するのは初めてだろうから、考えようによっては、淫獣の新たな生態を一から観察できる、ということでもある。むしろ、研究内容をそっちにシフトした方がいいかもね。
いや、待てよ。エタニア大陸でも、水場の少ない地域はあるだろう。ボクが見た土地は、ずっと水の多い地帯だったけれと、それはエタニア大陸のほんの一部にしかすぎないし。
エタニア大陸でも、水のないというか少ない地域にも、淫獣は住んでいるのかも知れない。
それなら、淫獣の新たな生態というよりも、別の生態というべきかな。
どっちにしろ、もっと資料が必要だよね。そのためには、ドローンや哨戒中の軍用兵器での撮影だけでなく、定点カメラによる観察映像も欲しいな。
本当なら、直接ボクが奴らの生活圏に赴いて観察すべきなんだけど。研究のためとはいえ、淫獣に近寄るのは真っ平御免だ。対峙しただけで身の毛もよだつようなアレの前に出るなど、二度としたくない。




