034 潜伏中
「はぁ、はぁ、これで、大丈夫なはずです」
5回は射精したから、この女の傷も癒えたはず。
それにしても、男を何人か連れて山菜採りに行って、クマに襲われて、右腕を砕かれながらも男たちを守り、残った左腕一本でクマを撃退って、この女の戦闘力、軍人並じゃない?
「じゃ、抜きますよ」
「ああん、駄目ぇん」
そして性欲も人より強いのか、まだ満足いかないらしく、逞しい脚でボクの下半身をガシッとロックする。考えてみると、ハイダ様はボクたち従仕4人を相手に1晩で20回以上も搾るのだから、5回くらいじゃ満足できなくても当然かも。
それでも、続きは従仕を相手に発散して欲しい。もしかすると、ダリアンと同じ18歳くらいに見えるから、まだ従仕を迎えていないのかな。
「駄目ですよ。セリエスはボリーの従仕なのですから」
立ち会っていたカルボネさんが言い、女の右腕をパシンッと叩く。さっきまで骨折してた腕をそんなに強く叩いちゃ……と思ったけど。
「痛っ……くない? あれぇ?」
ボクを逞しい両脚でしっかりとロックしたまま、女は不思議そうに首を傾げた。
「怪我の様子を診ますから、脚を解いてください」
「あ……はっ、はぁ……物足りない……」
女はぶつくさ言いながらも脚の力を緩めた。その隙を逃さず、ボクはゆっくりと肉棒を引き抜いた。
ボクが股間の後始末をしている間に、カルボネさんは上体を起こした女の腕から包帯を取り、副え木を外した。傷ひとつない、とは言えないけど、古傷以外はまったくない肌が露わになる。
「腕を動かしてみてください」
カルボネさんに言われて、女ばベッドの上で腕を動かす。
「何とも、ないです」
不思議そうな表情で女は腕を曲げ伸ばししている。確かに、ついさっきまでは骨が折れていて動かすこともままならなかったんだから、不思議に思って当然だよね。
「完治していますね。他も大丈夫でしょう」
カルボネさんは、女の身体に他にも巻かれている包帯を外し、絆創膏を剥がしていった。クマを相手に戦ったのだから、当然のことながら右腕以外もあちこちに軽傷を負っていたわけで。それらの傷もすべて完治している。普段の仕事で身体のあちこちに小さな傷はあるけど、それ以外は綺麗なもの。
女はベッドの上で身体のあちこちを検めた。着ていたシャツの下に巻いた包帯も解いた。
「どこも、何ともありません」
女はますます不思議そうに、カルボネさんとボクに言う。
「良かった。それで、ここでの治療のことはほかの人に言っては駄目よ。聞かれたら、私たちが持っていた貴重な秘薬のお陰、薬について聞かれたら材料が少ないから余程のことがないと使えないと言っておいて」
「は、はい」
言葉は穏やかだけれど、視線を鋭くしたカルボネさんに、女は素直に頷いた。黙っててくれるかな? くれるよね?
「それじゃ、服を着て、帰っていいわよ。くれぐれも、ここでセックスしたなんて口にしないように」
「は、はい。その、お代は……?」
「ここであったことを誰にも決して伝えないこと、それだけで十分です」
「はい。解りました。その、もう一度、シてもらえません?」
ベッドに座り込んだままでボクをチラッと見た。ボクはもう身繕いを終えていたから、女の求めるモノは隠れていたけど。
「快楽のために招いたのではありませんよ。それは街の男を誘ってください」
「はぁい」
ようやく、女はベッドから下りて帰り支度を始めた。取り敢えずこれで、終わりだね。
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ソーセスを出て最初に泊まった農村を出た後、ボクたちはこの街に来て家を借り、ひとまず腰を据えた。この街は広大な山林を背後に備えていて、林業を生業にしている。ソーセスにも木材を卸していたというか、ソーセス都市圏の木材の一大産地になっていた。もちろん、ここだけでなく何ヶ所かあるけど。
ソーセスからは300キロメートルくらい離れていて、ソーセス都市圏の端に近い。ボリーさんたちの話では、ソーセスから80キロメートルくらい離れた場所に基地を建設しているそう。それが落ち着くまで、ボクたちはこの街に滞在することになる。
エクスペルアーマーは、基地建設地よりソーセスに近い地点に造られた仮設陣地に配備され、建設中の基地の防衛と淫獣の偵察および攻撃を行なっているらしい。ハイダ様が今いるのは、その仮設陣地かな。多分そうだろう。基地が完成すれば、エクスペルアーマー部隊もそこまで引くか、前線として残るとしても交代で基地に戻るだろうから、再会できるのはその時になるかな。
アルクスたちの情報は入っていない。と言うか、ボリーさんたちも積極的には情報収集していないみたい。エスタやソウトの諜報員がボクの家族構成について調べていたら、アルクスたちに接触する者から辿られるかも知れない、と言っていた。
正直、気にしすぎにも思うけど、3人、特にボリーさんとカルボネさんにとっては、そんな些細な懸念も捨て置けないんだろう。例の件があったから。
それと、ボクの両親と姉妹は逃げられただろうか? アルクスたちにはハイダ様が連絡したようだけど、両親たちには何も言っていない。と言うことは、政府の出した避難指示の後で行動を開始したはず。取るものもとりあえず、すぐに動いたのなら脱出できただろうけど、もたもたしてたら取り残された可能性もある。具体的な数字は判らないらしいけど、かなりの人数がソーセスに取り残されたそうだから。
一番心配なのは父親かな。それと姉の従仕。女は、最悪でも犯されるだけで済むと思うけど、男は淫獣に見つかったら問答無用で殺されるだろう。
救護部隊として参加を決めた時、どうして母父姉妹のことを思い出せなかったのか。悔やまずにはいられない。
今からの連絡は無理だ。ボクはハイダ様やアルクスたちに連絡を入れたかったけど、ボリーさんたちに止められた。って言うか、使おうとしたけどセルフブレスの認証機構が働かなかった。
ボリーさんに聞いたら、ボクのセルフブレスの認証機構を切っているそう。そんなことができるなんて知らなかったよ。それにしてもいつの間にやったんだろう? ボクの個人認証を使うことで、存在が東の都市や南の都市に知られることを警戒してのことらしい。
実際のところ、エスタやソウトの政府がボクの身柄を狙っているというのも、ボリーさんたちの推測に過ぎないんだけど。警戒するに越したことはない、かな。
この街に来てから16日が経った。
ボリーさん、カルボネさん、ニトラさんの3人は、毎日交代で、日雇いの仕事と街の内外での情報収集とボクの護衛をしてくれている。ボクは専ら、家事。ここの仕事、林業なだけあって力仕事が多く、男じゃ非力で働き口が少ない。ましてやボクは淫獣の研究者だから、技能を発揮できるような仕事は皆無。必然的に、家事手伝いをボクがやることになった。
で、今日は4人揃っての夕食の後、ボクは3人の護衛たちに問いかけた。
「あの、3人とも、溜まってるんじゃありません?」
こんなこと、主姐でもない女に聞くのは失礼だし恥ずかしいけど、この3人が欲求不満で仕事に集中できないと、この先いろいろと困ってしまう。
「いえ、そんなことはありません」
ボリーさんが言いきり、カルボネさんとニトラさんも頷いた。確かに、仕事は3人とも完璧にこなしている。だけど……。
「誤魔化さないでください。3人とも、2〜3日前から苛立ちを隠せていませんよ」
それは、本当に微妙な違いなんだけど、3人が3人とも、普段と違うんだよね。『苛立ち』と表現したけど、それとも少し違うような。言うなれば、長期の出張から戻って来た後のハイダ様のような感じ。苛立っているというより、男に飢えているような。
3人が互いに顔を見合わせた後、ボクに向き直ると、代表するようにボリーさんが口を開いた。
「セリエスにはお見通しでしたか。上手く隠していたつもりだったのですが」
「解りますよ。男は女を良く見ているんですから」
「けれど、今の状況では各自で抑えるしかありませんから、セリエスは気にしないでください」
ニトラさんが言った。だけど、今は大丈夫でも、この生活が長くなればなるほど、看過できない問題になるだろう。
「ボクは皆さんに、完璧に仕事をこなして欲しいんです。それがボクの安全にも繋がりますし、ひいてはハイダ様に再会できる可能性が上がるんですから」
ほかの都市がボクの身柄を本当に狙っていて、また誘拐されたりしたら目も当てられない。だから、3人には常に完璧な心身状態でいてもらいたい。
「そうは言っても……」
一番いいのは、それぞれの従仕と肉体を重ねてもらうことだけど、それは今は叶わない。この街の男を誘惑してもらってもいいけど、妊娠してしまうと任務に支障が発生してしまう。残る方法は1つしかない。
「だから、ボクが皆さんの相手をします。今夜は3人と果てない程度にヤって、明日からは交代で1日1人ずつ。どうでしょう?」
ボクも、ハイダ様以外の女とヤるのは本意ではないけど、背に腹は変えられない。聖人のボクなら、妊娠の心配もない(はずだ)し。
3人は協議した結果、完璧な状態で仕事に従事することにした。要するに、ボクで性欲を満たすことにした。ただし、毎日でなく、1日空けることにして。1週間程度なら我慢していても仕事に支障は出ないから、とそういうことに決まった。ボクとしても、ハイダ様以外の女に挿れる回数は少ない方がいいので、それで了承した。
まずは今日、3人まとめて相手をして、1日空けて明後日はボリーさんとだ。
3人まとめてといっても、同時ではない。常に1人は部屋の入口の扉傍で立ち番をし、ボクが同時に相手をするのは2人。
ボクは、明け方近くまで、3人の女を相手に肉剣を振るいまくった。




