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【R15版】淫獣大戦 ~聖人のボクは女たちをセックスで癒す~  作者: 夢乃
第1章

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016 ???:聖人確保

 仕事に出掛ける前に、窓を開けてインセクト・ドローンを放つ。これで後戻りはできない。いや、できなくはないが、そのつもりはない。


「それじゃ、行ってくるわね。帰りは遅くなるから」

 玄関に見送りに出てきた従仕(じゅうし)に微笑む。彼には万一の時のために手紙を渡してあるから、わたくしが帰らなくても大丈夫だろう。従仕(じゅうし)に迎えてから一度も肉体を重ねることはなかったけれど、(ひとえ)にわたくしが臆病だったためだ。この任務に就く時に別れたままの牡を忘れるようなことにはなりたくない……その想いが彼との間に一線を引いていた。


「行ってらっしゃい。お気をつけて」

 何も知らぬ彼は、普段通りにわたくしを送り出した。もう会うことはないだろう。


 ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉


 夕刻、外出する旨を告げて職場を離れ、ヴィークルで研究所の地下駐車場へ移動した。大丈夫、怪しまれてはいない。

 聖人・セリエスを呼び出し、降りてくるのを見計らってエレベーターの前で待つ。エレベーターの扉が開き、セリエスが出て来た。

「お待たせしました」

「いえ、ちょうど良いタイミングです。こちらへ」

 セリエスを、乗って来たヴィークルへと(いざな)い、助手席に乗ってもらう。


「今日はどこに行くんですか?」

 その問いには答えず、首筋に手を伸ばして指先に仕込んだ電極を当て、電流を流す。セリエスは身体を震わせて意識を失った。まずは上手くいった。

 しかしのんびりしてはいられない。セリエスには護衛が付いているはず。その目を誤魔化さなければ。常に目視しているわけではなく、セルフブレスの位置を追っていると思われるが、この地下駐車場には身を隠す場所はいくらでもある。研究室内ならともかく、ここには潜んでいるかも知れない。上手く誤魔化せるだろうか。いや、やらなければ。


 急いで助手席をリクライニングさせ、セリエスの手首から外したセルフブレスをダミーアームに嵌め、後席から毛布を出してセリエスの身体を隠す。

 後席から別の荷物を持ってヴィークルを下り、斜め後ろに停めてあるセリエスのヴィークル(それを確認して、自分のヴィークルを停めた)のドアをセリエスのセルフブレスで開けた。座席にダミーアームと荷物を置き、荷物の紐を強く引く。それはすぐに膨らんで、座席に座る風船人形になった。いつまでも、というわけにはいかないけれど、とりあえず人目を誤魔化すくらいはできる。ましてここは暗い。


 ヴィークルに行先を設定する。彼の、すなわちハイダの家に直行させると時間を稼げないので、都市内を適当に回ってから彼の家に戻るように設定した。ドアを閉めて、彼のヴィークルから離れ、自分のヴィークルへと戻る。


 ドアを開いたところで、斜め後ろのヴィークルが静かに走り出した。ゆっくりと駐車場の出口に向かう。他に出て行くヴィークルはいない。護衛はここにはいないのか、それとも聖人がこのヴィークルに乗っていることがバレているのか。いや、それなら彼のヴィークルが出て行った時点で接触してくるだろう。


 自分のヴィークルに乗り込むと、一度毛布を剥がしてセリエスの手足に手錠をかけた。さらに身体をベルトで座席に固定してから毛布を掛け直す。

 時間を確認すると、セリエスのヴィークルが発車してから30秒が経っている。さらに30秒待って、ヴィークルを発車させた。


 向かうのはもちろん、東だ。


 ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉


 都市ソーセスは周りを囲む塀もないし、人の出入りを記録してはいるが監視しているわけではない。脱出は簡単だった。

 それでも、自動運転誘導エリアを抜けるまでは、かなり緊張していた。聖人誘拐が発覚したら、ヴィークルの制御を奪われてしまう。自動誘導は基本的にはヴィークルから示した場所へと誘導するだけだが、政府ないし軍部であれば、特定のヴィークルの制御を乗っ取ることも可能だ。実際にそれを行うことは、法律により厳しく制限されているが、誘拐された聖人を救うため、となれば市民の同意を得ることも容易だろう。


 都市の中央部から30キロメートルと少し離れ、ヴィークルから自動誘導範囲を抜けたことの警告音が鳴った時には、胸を撫で下ろした。


 そのまま、舗装路を東、フロンテス方向へと高速で進む。途中、道を逸れて草原を突き進むが、速度は可能な限り維持する。聖人が誘拐されたことが発覚すれば、すぐに追っ手がかかるだろう。それまでに、できる限り距離を取らなければならない。


 フロンテスの索敵に引っかからないよう、南方100キロメートルほども離れて通り過ぎる。フロンテスからエクスペル・アーマーが出て来ないことを考えると、聖人誘拐にはまだ気付かれていないか、気付かれていたとしても真っ直ぐにセレスタ地峡を目指しているとは考えていないのだろう。けれど、この先の淫獣警戒監視ラインで捕捉されると思われる。


 淫獣警戒監視ラインは、フロンテスから東へ20キロメートル離れた場所に、南北に10キロメートル間隔で並んで建てられている監視塔の列だ。目的はもちろん、ウェリス大陸へと侵入する牡の監視だ。ウェリス大陸側からセレスタ地峡へと向かうこのヴィークルは見逃される可能性もあるものの、それは希望的観測に過ぎる。

 ソーセスへの連絡ができる限り遅くなりますように、と無駄な祈りを捧げながら、わたくしは監視ラインの隙間を走り抜け、セレスタ地峡へと侵入した。




 セレスタ地峡の途中で夜になったが、速度をやや落としただけで走り続ける。暗くて見えにくいけれど、周囲に牡の気配を感じる。死なないで、と心の中で唱え、先を急ぐ。

 夜が明ける頃、取り敢えずの目的地が見えた。すでに湖沼地帯に入り、気を付けないとヴィークルを沈めてしまいそう。一人なら沈んだところでどうということもないけれど、今は気絶したセリエスがいる。彼を抱えての沈むヴィークルからの脱出は困難を極めるだろう。

 そんな羽目に陥らないように、慎重にヴィークルを操作し、目的の小屋まで辿り着いた。


 助手席の毛布を剥いでベルトを外し、セリエスの拘束を解く。手錠は悪いけれどそのまま。鎖を長くしているから、動くのに問題はない。

「セリエス、起きてください」

 痺れさせたとは言っても、良く今まで起きなかったものだ。わたくしはセリエスの頬を軽く叩いた。

「う、あ、こ、ここは……モレノさん?」

 セリエスが目覚めた。そして、わたくしをはっきりと認識すると、後退るように身体を動かす。ヴィークルの中でそれは無駄だけれど。


「も、モレノさん、ぼ、ボクをどうするんです?」

 彼は、自分の身に起きたこと──わたくしに誘拐されたこと──をきちんと把握しているようだ。

「この場に留まると危険です。周りは淫獣で溢れています。わたくしの後に着いて来てください」

 それだけで、彼なら正しい判断ができるだろう。


 助手席の背を起こしてヴィークルを下り、セルフブレスを腕から外して捨てる。もっと早くに捨てたかったけれど、これがないとヴィークルが動かないから仕方がない。実のところ、この作戦のためにヴィークルの改造も考えたのだけれど、定期整備でそれが見つかる危険を考慮して諦めたため、ここまで捨てられなかった。


 あらかじめ用意してヴィークルに載せておいたバックパックをトランクから下ろして背に担ぎ、小屋に向かって歩き出す。チラリと後ろに意識を向けると、セリエスも恐る恐る着いて来る。

 周りに牡の気配はあるけれど、姿を見せなかった。その方が都合がいい。


 小屋に入り、そのまま奥に抜け、反対側から外に出て、係留してある大型のボートに乗ってバックパックを船体後部の船室に置いた。


「セリエス、船室に入ってベンチにかけていてください」

「えっと、これは外してもらえないんですか?」

 セリエスは手を上げて手錠の鎖を揺らした。

「すみません、目的地に着くまでは」

「どこに行くんです?」

「それは秘密です」


 わたくしは係留してあるロープを外し、広い甲板からロープの付いたブイを5個、湖に投げ入れた。甲板から身体を乗り出し、舷側を特定のリズムで叩く。すぐに5体の牡が現れ、ブイを咥えて泳ぎだした。

「わっ」

 船室でセリエスが声を上げた。わたくしは船室に入った。

「しばらく不自由をかけますが、ご辛抱ください。バッグにレーションと水がありますので、食事はそれを。睡眠は、ベンチと毛布を使ってください」

「えっと、どれくらい、かかるんです?」

「数日、でしょうか」

「そうですか……わっ」

 突然、セリエスが恐怖の表情を浮かべて身体を仰け反らせた。なんだろうと甲板を振り返ると、牡が1体、湖から乗り込んでいた。あれは……良かった、生きていたのね。


「大丈夫です。船室からは出ないでください」

 セリエスがガクガクと頷くのを見て、船室から甲板に下りた。牡が大きな淫口を少し開けて、中から触手を伸ばす。

「良かった。無理をして死んだかも、って思って心配していたのよ」

 わたくしは触手を愛おしく頬擦りしながら言った。

「え? 彼? 駄目よ。知っているでしょう? 彼を連れ帰らないといけないから。危害を加えたりしたら、許さないわよ」

 優しく、しかし厳しく言い聞かせる。


「うん、そうね。ちょっと待って。服を脱ぐから」

 一度船室に入って全裸になり、服をまとめてベンチに置いた。セリエスは、船室の隅に縮こまり、甲板の牡を凝視して震えている。わたくしのことは目に入っていないよう。


 再び甲板に下りると、牡は淫口から16本すべての触手を伸ばしてわたくしの裸身を包み込んだ。ヌルヌルとした触手が肌を這い回る。10数年振りに感じるその感触に、快感が即座に高まる。


「あっ、ああっ、いいっ、あっ、ああっ」


 わたくしは久方振りの快感に溺れ、何度も何度も絶頂に達した。



==登場人物==


■モレノ

 軍参謀長の次席秘書官を務める才女。医師と看護士の資格も持つ。銀色のショートヘア。身長約170cm。

 聖人能力調査特別部隊の秘書官として、参謀長秘書室から異動。特別部隊が解散した後、新たに創設された聖人能力調査室に所属する。

 何らかの目的を持って、セリエスを誘拐する。その目的は……?



==用語解説==


■フロンテス

 巨大都市ソーセスの東、セレスタ地峡の入口付近にある、ソーセスの衛星都市。都市全体が壁で囲まれており、“城郭都市”と呼ばれる。

 対淫獣の最前線。フロンテスの東約20キロメートルに淫獣警戒監視ラインが敷かれ、約10キロメートル間隔で南北に無人の監視塔が設置されており、セレスタ地峡からやって来る淫獣を監視している。見つけた淫獣は、駐在しているエクスペル・アーマー部隊により駆除されるが、監視塔の間隔が広いので見落としも多い。

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