015 聖人の仕事
連続で50回以上は射精して、ボクはハイダ様の裸身の上にぶっ倒れた。さすがにこれだけ連続したら、ベッドの上でも力尽きてしまう。家でヤる時も20回、30回と射精することは頻繁にあるけれど、連続ということはまずない。ほかの従仕と代わったり、しばらく中休みを取ったりするから。連続でこんなに射精したのは初めてのこと。
ハイダ様も、疲れ果てたボクを軽く抱きながら、荒い息を吐いている。ハイダ様にしても、これほど連続して射精を受け入れたのは初めてのことだろうから、いつも以上に疲労を感じているだろう。
激しかった割に充足感を感じないのは、今の行為が単なる性交渉ではなく、聖人としての仕事だからかな。でも、だからこそ、成功していて欲しい。大丈夫、ハイダ様はボクの責めでしっかりと感じてくれていたし、それならきっと、淫獣の仔も流せるはずだ。
ハイダ様の上で動けなくなったボクは、2人の看護士の手でベッドから降ろされ、白衣を着せられて椅子に座った。しばらく、1人で立ち上がることもままならなそう。セックス以外でも、こんなに疲れたことはない。
椅子から立ち上がることもできないボクの前で、知らない間に部屋に運び入れられていた分娩台に、看護士が4人がかりでハイダ様を移そうとしている。
「ちょっと待って」
ヘルミナさんが、それに待ったをかけた。看護士たちは持ち上げかけたハイダ様の身体をベッドに下ろし、けれど手はそのままに、いつでもハイダ様を移動できる体勢。ハイダ様は股間からボクの注入した精液を垂れ流している。
ヘルミナさんは、ハイダ様の開かれた股間から流れる白い液体をじっと見つめている。
「ハイダ、思い切りイキんで」
ハイダ様の美しい顔が歪んで、力を込めたのがわかった。一瞬止まった精液の流れが、ドボッと復活する。さらにそれがもう1回。そして、精液の流れが止まる。
「ハイダを分娩台へ。移動ベッドの方が良かったわね。まあいいわ。身体を洗って休んでもらって。こっちが片付いたらすぐに検査するから」
「はい」
待機していた4人の看護士がハイダ様をベッドから分娩台へと載せ換え、分娩台を押して部屋から出て行った。ボクも後を追いたかったけれど、まだ立ち上がることもできない。
「セリエスはそこで少し休んでいなさい。ハイダは多分、大丈夫だから」
ヘルミナさんは、笑いを含んだ声で言ったけれど、瞳は真剣そのもの。その視線はシーツの上の白い湖に注がれている。
ヘルミナさんは、ゴム手袋をはめた手にピンセットを持ち、その先で精液をかき混ぜている。ピンセットを持ち上げた時、その先には小さな何かを掴んでいた。白い粘液に塗れたそれは、薄い緑色の球を上下に少し押し潰したような物体。それを看護士の持つ金属製のトレイに載せる。それが2個。
さらにしばらく、精液の湖を捜索してから、ヘルミナさんはピンセットを近くの台に置いた。トレイを持った看護士さんは、それを持って部屋から出て行く。
「あ、あの……」
何を言ったらいいのかわからないままに、ボクはヘルミナさんに声をかけた。ヘルミナさんは、ゴム手袋を外してからボクの前に来ると、片膝をついて目線を合わせた。
「セリエス、ありがとう。検査をしないと断言はできないけれど、これでハイダは大丈夫よ」
「そうなんですか?」
「ええ。さっき精液に混じって出てきた塊、あれが淫獣の卵嚢、と呼んでいるけれど、それが排出されたし、それにあなたとのセックスで本気で感じていたようだから」
「そうなんですか。あれ、あの卵嚢、まだ残っているってことはありませんか?」
「調べないと断言はできないけれど。淫獣によって妊娠させられると、2匹ないし4匹の仔を孕まされるの。ハイダのケースは2匹だったと考えられるわね」
「卵嚢が2個だからですね。でも、残っている可能性もあるんじゃ」
「それが、これからの調査になるわ。今回は聖人の能力の調査も兼ねていたから、事前に子宮にカメラを入れることはなかったから。この後、それを確認するわ」
「大丈夫、ですよね?」
「ええ。出てきた2個の卵嚢が綺麗に取れていたから残っていることはないだろうし、たとえ残っていても、セリエスがもう一度今日と同じことをやれば、確実に流せるわよ」
「そうです、よね」
ヘルミナさんの言葉に、ボクは安堵した。それが表情にも出ていたのだろう、ヘルミナさんは苦笑い気味の笑顔を見せた。
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検査の結果、ハイダ様の子宮には卵嚢が残っていないことが確認されたそう。良かった、残っていなくて。
ところで、どうして『卵嚢』って名付けたんだろう? 両生類なんかの卵嚢とは違うのに。誰が名付けたのだろうか。どうでもいいことだけれど。
性欲の方も問題はなさそう。久し振りに帰宅した家で従仕たち4人と性交したハイダ様は感じまくり、潮まで噴いていたから。そのことに、ボクは改めて胸を撫で下ろした。
ボクが聖人と判ってから、ハイダ様との子を残せないだろうことに気持ちが沈んでいたけれど、今は聖人であることを嬉しく思う。子を残せなくても、ハイダ様を淫獣から取り戻すことができたのだから。
そして数日後。ハイダ様と同じ戦闘で淫獣に犯された乙女戦士──彼女は妊娠はしていなかった──ともセックスした。ボクが射精し、相手がイッたところでストップがかかったけれど、どうやらそれで、人並みの性欲に落ち着いたらしい。
さらに数日が経ってから、聖人のボクは忙しくなった。これまでに淫獣に犯されていた乙女戦士たちと、頻繁にセックスすることになったから。
淫獣に犯された女は並のセックスでは満足できなくなり、絶頂を迎えられない欲求不満からストレスが溜まるので、淫獣との戦闘には出せない。そうでなくても、症状が酷いとデスクワークの効率も落ちるし、日常生活にすら支障が出る。
その問題を、聖人の能力で解決できる。ハイダ様以外の女と肉体を重ねることは不本意ではあるけれど、それで困っている女やその従仕の助けになるなら、とボクは別の女と身体を重ねた。
これができるなら、今回のハイダ様の事件が起きる前からやっていても良かったのだけれど、ハイダ様(ともう1人)が淫獣に犯されるまで、聖人能力調査室の誰も思い付かなかったらしい。聖人本人であるボクも考えもしなかったのだから文句を言うつもりはないけれど、ちょっと考えが足りなかったんじゃないかな、とは思う。ボク自身も含めて。
今回のことを糧に、聖人の能力で出来そうなことを考えていこう。
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過去に淫獣に犯されたレディーウォーリアーたちとのセックスも一巡し、ボクの生活も元に戻った。聖人の能力でできる新しい仕事は、まだ思いついていない。基本的に女とのセックスになるわけだけれど、セックスで解決できる他のことはないか? セックス以外に何か活用方法はないものかな? 調査室でも考えているそうだけれど、まだ案は出ていない。せっかくの聖人の能力なのだから、できることは何でもやりたい。
聖人の能力の有効活用方法を頭の隅で考えながら、精液を搾られつつも研究に勤しむ平穏な日々。そんなある日。ボクはまた仕事中、というか勤務終了時間の少し前に呼び出された。今度は何だろう? また重傷者が出たのだろうか。
そんなことを思いつつも、ボクは帰り支度を手早く整えて、今回の待ち合わせ場所に指定された地下駐車場にエレベーターで降りた。
エレベーターから出たところで待っていた彼女の後について行くと、ヴィークルに乗るように言われたので助手席に乗る。今日のヴィークルは軍施設内用じゃないから、外に行くのだろうか?
「今日はどこに行くんですか?」
いつも答えはないので、今日も『行けば判ります』だろうなぁ、と思いつつ聞いてみたけれど、今日は答えの代わりに首筋に手を当てられた。
「え?」
と思った次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
==用語解説==
■淫獣(いんじゅう)
オオサンショウウオのような姿をした、体長6m前後の巨大生物。人間を丸呑みできるほど大きな口の中には16本の触手があり、10mほどまで伸びる。全身は堅く柔らかく分厚い皮膚で覆われ、刃物も銃弾も通さない。口の中が弱点ではあるが、触手のため、狙っての攻撃は困難。
その巨体に似合わず、本気を出せば時速25kmという高速で走行できる。
触手の先端は男性器のような形をしており、実際、そこから吐き出される白濁液は人間の女を妊娠させる。淫獣に犯されると2匹ないし4匹の仔を孕み、卵嚢と呼ばれる緑色半透明の膜に包まれて、子宮壁に癒着するように成長し、産まれるまで摘出は不可能。また、淫獣に犯された女は男とのセックス程度では絶頂を感じられなくなる。
見た目は爬虫類ないし両生類を彷彿とさせるが体組成は哺乳類に近く、水辺を主な生息地にしている。ある程度の知能(10~12歳の人間程度)を持ち、人間の男女を見分け、男に対しては敵意を見せ、女は捕食して犯す。
主人公の住むウェリス大陸には元々生存せず、エタニア大陸からセレスタ地峡を通ってやってくるらしいが……
■聖人
時代の節目に現れるという、女の傷を癒す能力を持った男。絶倫で、性交することで女の傷を癒す、しかし子を残したことはない、と伝えられている。
その精液は、女の負傷を短時間で治癒する。患部に直接かけても、セックスで中出ししても効果を発揮するし、全治1ヶ月の負傷も即座に治癒する、現代医療を遥かに凌ぐ治癒力を持つ。なぜか、患部に精液をかけるよりもセックスの方が効果が早く現れる。また、長期間繰り返しセックスすることで、古傷も癒されるらしい。ただし、疾病に対しては効果は見られない。
淫獣に犯されて男との性交では満足できなくなった女も、聖人とセックスすることで快感を取り戻す。
なお、聖人の能力は男相手には効果はなく、男の傷に精液を掛けたりホモセックスしたりしても、ヤるだけ無駄。




