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 蓮見との待ち合わせ場所に着いた。

 まだ蓮見は来ていないようだ。

 私は帽子の位置を調整する。

 今日は日差しが強い。帽子だけじゃなく日焼け止めも塗るべきだった。失敗したなあ。


 私がぼんやりと待っていると、女の子たちのヒソヒソ話があちこちから聞こえ出す。

 ああ、やっと登場か。


「ごめん、待った?」


 定番の台詞を口にした蓮見を私は睨み付ける。


「遅いですわ。日焼けするかと思いました」

「……日焼け?クリーム塗ってないの?」

「塗るのを忘れたんです!さぁ、早く行きましょう。私が日焼けする前に」

「あ、うん……」


 私がスタスタ歩き出すと、蓮見もそれに続く。

 私たちの目的地は百貨店だ。いつか蓮見と遭遇したあの百貨店だ。

 小物を中心に見て回りたい。

 美咲様にぴったりの小物をプレゼントしたいのだ。


 私は蓮見の前を歩いていたのに、足の長い蓮見があっという間に隣に並んでしまう。

 私は負けじと歩くペースをあげてまた蓮見の前に出る。

 蓮見も歩幅を変えて私の隣に並び、呆れた口調で言う。


「なに張り合ってるの?怒ってる?」

「張り合ってないし、怒ってもいません」

「じゃあ、なんで俺の前を歩くの?」

「……そういう気分だから、でしょうか?」

「俺が聞いたんだけど……」


 蓮見が顔をしかめる。

 本当は、なんとなく、蓮見の隣を歩くことに抵抗を感じたのだ。

 なんとなくだけど、気まずい。

 気まずさから、私は会話を絞り出す。


「蓮見様は、美咲様になにをプレゼントされるんですか?」

「ああ……そうだな」


 蓮見は少し考えて答えた。


「日常的に使えそうな物にしようと思う」

「そうなんですか。私もですわ」

「被らないように気を付けないとね」

「ええ、そうですね。ちなみに、去年はなにをプレゼントされたのですか?」

「去年は、花束をプレゼントしたんだ」

「まあ、花束を」


 あれ?なんかこの話どっかで聞いたことあるな。

 どこだったけ?えーと……そうだ。

 確か、弟が言っていたのだ。

 蓮見は毎年、美咲様の誕生日に花束を贈っていると。生花は枯れて残らないから、と。

 蓮見つらい。なんて思ったなあ。そういえば。


 でも、今年はちゃんと残る物をプレゼントするのか。

 美咲様のことを吹っ切れたという証なのか。

 たぶん、そうなんだろうな。

 なら、この買い物は蓮見にとっては記念すべき第一歩だ。



「……なに。その目は」

「いえ。蓮見様も成長したなあ、と……」

「なんで上から目線なの」

「うふふ」

「……気持ち悪い目で見ないでよ」


 気持ち悪いなんて失礼な!

 私は純粋に蓮見の成長を微笑ましく思っただけなのに。

 しかし、なにを言われようが私のにやにやは収まらない。

 蓮見は居心地悪そうに目線を漂わせた。



 百貨店についた私たちはさっそく小物を取り扱うお店を中心に見て回った。

 うーん、なにがいいかなぁ。

 アロマとか?あ、このアロマレコードってやつ可愛い。あ、こっちの置くのとかもいいな。

 でもアロマとか、好き嫌い別れるよね……。

 美咲様、どういう匂いが好きかな。

 私はさっそく蓮見に相談すると、蓮見が匂いを嗅ぎ、これがいいと思うよ、とアドバイスをしてくれた。


 よし、じゃあ、これにしよう!

 あ、このタオルも可愛いな。密かに色違いで買ってしまおう。

 ピンクが美咲様、水色が菜緒、それでオレンジが私。

 私はピンクのタオルと蓮見が選んだアロマの置物を購入して、ラッピングも頼む。

 店員さん、可愛くよろしくお願いします!


 私がにっこり笑ってラッピングを頼むと、店員さんに「彼氏かっこいいね」と言われた。

 か、彼氏!?違いますからぁ!

 私があわあわしていると「彼氏とデートなんでしょう?羨ましいな」とにこにことして言われた。

 か、彼氏じゃありません!それにデートでもないんです!

 私が全力で否定すると、店員さんは「そうなの?」と言いつつ温かい目で私を見る。

 居たたまれなくなった私は、ラッピングの番号を貰ってすぐ逃げた。


 蓮見は顔を赤くして戻ってきた私を不思議そうに見た。

 私は蓮見の顔を直視できずに俯く。


「どうしたの?調子悪くなった?」

「な、なんでもありません……」

「顔が赤いけど……熱があるんじゃない?」

「平気です!ちょっと、熱いだけなんです!」

「空調効いてるのに?」


 蓮見は納得できてないようだ。

 私は話をそらすべく、違う話題を振る。


「蓮見様はプレゼント決まりましたか?」

「ああ。これはどうかなって」


 蓮見が手に取ったのは、ハンドクリームだ。

 試供品を使ってみると、とてもいい匂いがして、すぅっと肌に馴染んだ。

 つけたあともベタベタしないし、これいいかも。


「いいんじゃないでしょうか。女子には嬉しいと思います」

「じゃあ、これにしようかな」


 蓮見はハンドクリームのセットを手に取り、会計を済ませたあと、私と同じようにラッピングを頼んだ。

 そうしたらさっきの店員さんが「彼女と一緒に渡した方がいいですか」と、トンデモ発言をしてくれた。

 蓮見は一瞬私の方を振り返ったあと、いつもの無表情になり、「一緒でいいです」と答えた。

 彼女って否定しろよ!

 ほら、否定しないから、店員さんが微笑ましい顔をして私を見てる!

 お店を出るまでの間、正直私は生きた心地がしなかった。



 プレゼントを買ったあと、どこかでお茶をしようという話になった。

 買い物に付き合って貰ったし、そのお礼を含めてお茶くらい私が出さなきゃ。

 いつも奢ってもらってばかりで悪いし。


 2人でプレゼントを開けた時の美咲様の反応について話をしていると、目の前に小さい影が飛び出した。


「奏祐様!」


 小さい影は蓮見に近づく。

 艶やかな黒髪は、まるで中世ヨーロッパの貴婦人みたいな巻き毛で、大きなつり目の下は泣き黒子に、形のよい小さな唇。

 まさに、美少女だ。美少女が満面の笑みを浮かべて蓮見に声をかけた。


 あれ?私、この子どこかで見たことある気がする……どこでだっけ?思い出せない。



 私はもどかしい思いで、蓮見と彼女をじっと見つめた。

 お似合いの2人だなぁ、と思いながら、私は成り行きを見守ることにした。




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