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後半部分、一部改稿しました。

 蓮見と王子から告白されて、2人と一緒にいることが多くなった。いや、私は全力で逃げようとしているのだが、最終的に捕まるのだ。

 その分、周りからの目が厳しくなった気がする。

 2人は、イケメンなのだ。東條派、蓮見派という派閥ができるくらい、人気なのだ。

 今は表立ってなにかされることはないが、それも時間の問題かもしれない。


 そんな悩みを抱えつつ、中間テストの日が近づいてきた。

 いくら悩みがあろうと、手は抜かない。

 去年は蓮見がずっと1位をキープし続けていた。

 目立ちたくないからあまり上位に入りたくなかった去年とは違い、今年はもう目立ってしまっているので、堂々と1位を狙おうと思う。

 生徒会活動の前に私が勉強をしていると、飛鳥が生徒会室に入ってきた。

 飛鳥は私が勉強している姿に目を丸くした。


「珍しいな、君がここで勉強するなんて」

「今年はテスト順位で1位を狙おうと思いますの。飛鳥くんも一緒に狙いませんか?」


 目指せ打倒蓮見だ。

 そんな私に飛鳥は苦笑する。


「そうだな。それくらいの気概を持っていないとな」

「ええ。目指せ、打倒蓮見!ですわ」

「俺がなんだって?」


 突然涼やかな声が乱入してきて、私はびくりと肩を揺らす。

 振り返れば魔王みたいなダークな笑みを浮かべた蓮見が入り口で立っていた。

 私はその姿に冷や汗がたれる。


「は、蓮見様……」

「打倒蓮見って聞こえたんだけど?」

「それはその……」

「神楽木はテストで1位を目指してるらしいぞ」


 飛鳥ぁ!裏切ったなぁ!!


「ふーん……1位ね。まあ、頑張りなよ」


 蓮見は余裕の笑みを浮かべ、自分の席に座った。

 くそう……!あいつ、絶対無理だと思ってるな……。

 見てろ。私の本気を見せてやる!

 私はその日から怒濤の勢いで勉強をした。


 そして中間テストの順位発表の日。結果は―――



「う、嘘でしょ……」


 私の結果は、2位だった。

 1位は当然のごとく蓮見だ。

 あと1点。あと1点で蓮見と並んだのに。

 あんなに必死に勉強したのに、なぜ勝てない。

 スペックの違いか!?そんなの認めない!


「その……惜しかったな」


 飛鳥が励ますように私の肩を叩く。

 私はただ、目の前の結果に呆然とすることしかできない。

 そこに蓮見がやって来て、結果を一瞥すると、私を見て胡散臭……清々しい笑みを浮かべた。


「惜しかったね?次は1位をとれるといいね」


 ……この野郎。いつか絶対、ギャフンと言わせてやる!




 中間テストが終わると、今度は体育祭がやってくる。

 中間テストが終わったあと、生徒会は体育祭の運営に関する細かい仕事が入り、忙しくなった。

 とは、言ってもほとんど体育祭の実行委員会で段取りを決めるため、そんなに大変な仕事はない。

 ちょっと確認したりするだけだ。

 開会式や閉会式の進行は生徒会で行うので、その打ち合わせをする。

 それ以外は実行委員会にお任せだ。

 もっと忙しいのかなぁと思っていたけど、わりと余裕はあった。


 そして迎えた体育祭当日。

 私は来賓の方々の接待をしたり、実行委員のお手伝いをしたりして、わりと忙しく過ごしている。

 しかしそれも午前中だけで、午後からはゆっくりできる。

 午前中で私の出る競技は終わってしまったので、午後からはクラスの応援に専念する。

 ちなみに今年の私の参加競技は二人三脚と大玉転がしだ。大玉転がしは大玉が迷走して大変だった。

 今年はクラスに蓮見がいるので、私のクラスは体育祭にかなり熱を入れている。

 総合優勝を狙っているらしい。うん、がんばれ。



 午後の競技が始まる前にお昼だ。

 私は2人分のお弁当を抱え、1年生の場所に向かう。

 近くにいる子に弟の居場所を訊ねていると、弟が走って私の方にやって来た。


「姉さん」

「悠斗。ちょうど良かった、探してたの。お弁当、食べましょう?」

「あ、うん」


 弟は少し恥ずかしそうにはにかむ。

 可愛いな。さすが私の弟だ。

 弟が周りのお友達からなにか言われていたが、弟がひと睨みすると静かになった。

 ……うん、なんだかお姉ちゃんは、君の将来が心配になってきたよ。お父様みたくなりそうだ。


 私と弟が仲良くお弁当を食べていると、みんななぜか暖かい笑顔を浮かべて去っていく。

 なんだろ。まあ、気にしてもしょうがないか。


「悠斗、これ食べる?」

「……姉さん、ちょっと恥ずかしいんだけど……」

「まあ。なにを言うの。ただの姉と弟のスキンシップじゃない。恥ずかしがる必要はないわ」

「いや……この歳で食べさせてもらうのはさすがに恥ずかしいよ……」


 え?聞こえないなぁ。

 だって、こういう時じゃないと、できないではないか。

 弟にお弁当を食べさせて、何が悪い。


 周りの目なんて気にしませんとも。

 ブラコンなのは自覚してるから今さら気にしないもんね!



 私はホクホク顔で弟と別れ、自分のクラスの応援をする体勢に入る。

 順調に点数を稼いでいるようだ。この調子なら本当に優勝できるかもしれない。



 そして迎えた一番大盛り上がりをする、混合リレー。

 うちのクラスは当然のごとく、アンカーは蓮見だ。

 隣のクラスのアンカーはもちろん王子である。

 私は遠くで見守ることにする。しかしリレーの始まる前にお手洗いに行っておこう。

 リレーが終わったらすぐに閉会式になる。閉会式は長いのだ。途中でトイレに行きたくなったら困る。


 私がトイレから出て、少し歩いたところで王子と蓮見に遭遇した。げぇっ。


「蓮見様、リレーで優勝すれば私たちのクラスが総合優勝できますので、絶対優勝してくださいね」


 私はにっこりと笑顔を作って蓮見に話し掛ける。

 激励くらいはするべきだと思ったのだ。だって同じクラスの仲間なのだから。

 しかし私はすぐに立ち去る体勢をとるのを忘れない。


「ああ。任せて」


 蓮見は力強く頷いた。これなら大丈夫そうだ。


「僕には?頑張ってって言ってくれないの?」

「東條様はクラスが違うので」


 私は笑顔を保ったまま、王子に言う。

 なぜ私が違うクラスの人を応援しなければならないのだ。


「え~。僕と神楽木さんの仲でしょ?」

「それはいったい、どんな仲でしょうか?」

「質問に質問で返すのはずるいよ」

「申シ訳アリマセン」


 面倒臭くなってきた私は棒読みで答える。

 そんな様子の私を見て、王子は楽しそうに笑う。

 え?どこに笑える要素がありました?


「あー、楽しい。あ、そうだ。僕が優勝したらお茶に付き合ってよ」

「なぜ私が?」

「奏祐と僕がお茶してもご褒美になんないでしょ?」

「……ある一部の方にはご褒美になるかと思いますが……」


 そう、2人があらぬ仲だと想像して楽しんでる方たちとかね。


「僕にとってはご褒美にならないから。それに楽しみがある方が頑張れるでしょ?」

「……そうかもしれませんが、それとこれとは別」

「あ、もう行かないと。じゃあ、神楽木さん、お茶楽しみにしてるからね」


 そう言って王子は走り去っていく。

 ちょっと待って!私、お茶に付き合うなんて一言も言ってないよ!?なに勝手に決めてるの!!

 人の話を聞け!


「……蓮見様」

「わかってる。優勝すればいいんだろ?」

「絶対ですよ!優勝したら、つばき屋のプリンをご馳走しますわ」

「……君じゃないし、食べ物じゃやる気でないよ」


 蓮見は呆れたような顔をして言った。

 食べ物じゃやる気でない?じゃあ、なにすればいいの?


「では、なにをすればいいですか?」

「そうだな……1回だけ、俺の言うことを聞いてくれればいいよ」

「……変なこと以外なら」

「それでいいよ。じゃあ、俺も行ってくる。応援、よろしく」

「ええ。頑張ってください」


 蓮見は柔らかい笑顔を浮かべ、走り去った。

 私はその後ろ姿を見送る。

 私たちの様子をこっそり見ていた人影があったことに、私は気づくことはなかった。



 そしてリレーが始まる。

 私は、どきどきしている。あまり良い意味じゃなく。

 お願い!どうか蓮見が勝って!

 私は胸の前で手を組みながら必死に蓮見の優勝を祈り、リレーを見守る。

 バトンはアンカーに渡った。

 今のところ、蓮見と王子が同率1位だ。

 私は神にも祈る気持ちで見守った。

 そして優勝をしたのは―――


「なっ……!」

「嘘だろ……?」


 私は目を見開いて、優勝者を見つめた。

 そう、優勝したのは。


「悠斗~~!!」


 私は思わず弟に駆け寄り飛び付いた。


「わっ。姉さん、驚かさないでよ……」


 弟はしっかりと私を受け止めて、呆れた声をする。

 そう、リレーで優勝したのは、王子でも蓮見でもなく、弟だったのだ。


「すごい!さすが私の弟だわ!すごく格好良かったよ!」


 私は弟に抱きついたまま、笑顔で話しかける。

 弟は照れくさそうにしていた。


「悠斗、優勝おめでとう!」


 私は興奮したテンションのまま、弟の頬にちゅっとキスをした。


「ちょっ、姉さん。みんな見てるんだけど……」


 弟は少し顔を赤らめて、眉をしかめて言う。

 しかし、興奮している私はどこ吹く風だった。

 弟は困ったように私を見たあと、呆然と私と弟を見つめる王子と蓮見を見つけ、にっこりと笑って言った。


「残念でしたね?東條さん、蓮見さん」

「悠斗君……」

「悠斗……」

「言っておきますけど、姉にちょっかいを出すなら、容赦しません」


 そして弟はそれはもう、いい笑顔で言い放った。



「姉に手を出すなら、オレが相手になりますよ?」




「(姉にキスして貰えなくて)残念でしたね?東條さん、蓮見さん。(オレはして貰ったけど)」


シスコン弟参戦の回。

1話分遅れて、次は弟視点になります。


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