表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/152

44

 バスが目的地に到着し、私と蓮見は入り口に一緒に向かう。

 入り口には、王子が一足早く来ていて、私たちを見つけると笑顔で手を振ってきた。

 私はひきつり笑いで会釈をし、蓮見に至ってはノーリアクションだ。

 それもそうだ。

 王子の周りは女の子で溢れている。


「東條様ぁ、私たちと一緒に回りましょうよぉ」

「私たちと一緒に回りましょう~」

「ごめんね。先約があるから」

「えぇ~!」


 近づきたくな……近寄りがたい雰囲気である。

 ここで私が近づいて王子と一緒に回ると知られたらすごい目で睨まれそうだ。

 王子のファンこわい。

 私は思わず蓮見の背後に隠れた。


「……なにしてんの」

「東條様のファンの方がこわくて……」

「あぁ……気持ちはわかる」


 蓮見は同情してくれたようで、私が背後にいても何も言わなくなった。

 王子はファンをなんとか宥めてこちらへやって来る。

 ひぃ~!ファンの人たち睨んでるよぉ!!


「あれ。神楽木さん、そんなところに隠れてどうしたの?」

「……なんでもありませんわ」


 察してくれ。

 あなたのファンがこわいんですって。私に話しかけないで睨まれるから!

 私が王子ファンの視線に怯えていると、美咲様が小走りでやって来た。

 美咲様がやって来るとファンの睨みも緩む。さすが美咲様。王子のファンにも認められていらっしゃる。


「お待たせしてごめんなさい」

「しょうがないですわ。美咲さんの乗ってらしたバスが一番出発点するのが遅かったのですから」

「そうだよ、美咲。美咲のせいじゃない」


 私と王子がすかさず美咲様をフォローする。

 蓮見も気にするなと言うように、美咲様の肩を軽く叩く。

 そんな私たちに美咲様も安堵の笑みを浮かべた。

 そして、豪華メンバーによる遠足が始まった。




「まずは、スポーツ施設に行こう」


 王子は爽やかに笑って言った。

 蓮見の言った通りだ。さすが幼馴染み。よくわかってる。

 私が抵抗する間もなく私たちはスポーツ施設に入った。

 よし、もう諦めよう。諦めて見学しよう。


 スポーツ施設内では、いろんなスポーツが楽しめるらしい。

 テニス、バドミントン、アーチェリー、バスケなどなど、かなりの数のスポーツ名が書かれている。

 王子は蓮見を見た。


「奏祐、一対一(ワン・オン・ワン)やろう」

「バスケね……たまには、いいか」

「よし、決まりだね!美咲と神楽木さんはどうする?」

「私は見学させて頂きますわ」

「凛花さんが見学するなら、私も見学するわ」

「わかった。じゃあ、行こうか、奏祐」

「ああ」


 王子が蓮見を連れてバスケのスペースに入っていく。今はちょうど誰も使っていないようだ。

 私と美咲様は隅の方で見学をすることにした。


「負けないからね、奏祐」

「ああ、もちろん」


 2人はじゃんけんをし、どうやら王子が勝ったようだ。

 ますば王子がオフェンスをやるみたいだ。

 ゲームを始める前に2人はブレザーを脱ぎ、私たちに預けていく。

 そしてコートの中心に立ち、2人は向き合った。

 王子がダムダムとドリブルをしだす。

 そして、一瞬だった。王子は一瞬で蓮見を抜き、綺麗なレイアップシュートを決めた。

 さすがの蓮見もそれには驚いた顔をした。


「まずは2点。奏祐、10点先取だからね?」

「……わかってる。次は俺の番」


 今度は蓮見がオフェンスのようだ。

 蓮見はドリブルをし、足下を確認すると、その場でシュートを放つ。


「な……!?」


 今度は王子が驚く番だった。

 蓮見は初っぱなからスリーポイントシュートをしたのだ。

 そしてボールはきれいにゴールをくぐる。


「これで3点だ」

「……さすが奏祐。おもしろいじゃないか……!」


 そして2人の高レベルな試合が繰り広げられる。

 すごいなあ、よく、あんなに動けるな。

 私が感心して2人を見ていると、いつの間にか隣にいた美咲様の姿が消えていた。

 あ、あれ?美咲様どこ?

 私がきょろきょろと回りを見ると、ボールなどが置いてある倉庫から美咲様が笑顔で手を振っていた。

 なぜそんなところに。

 私も美咲様のところへ移動する。

 美咲様は笑顔で手に持っているものを私に見せて「これ、やらない?」と可愛らしく言うので、私はにっこり笑顔で「やります」と答えた。



 王子と蓮見の試合が終わった。

 結果は僅差で王子が勝ったらしい。2人とも額に汗を浮かべながら私たちのところへやって来た。


「あら。昴、奏祐、お疲れさま」

「ああ。ギリギリで勝ててよかったよ」

「あとちょっとで勝てたんだけどな……」

「ふふ。いい勝負だったわ」

「本当に。とても素晴らしい試合でしたわ!」


 私は笑顔で2人を讃える。

 2人は私の方を見て、なにか言おうとして、固まった。


「か、神楽木さん……?」

「君、なにしてるの……?」

「フラフープをしているだけですが?」

「あ、うん……それはわかるんだけど、なんでフラフープをしているわけ?」

「ちょっと体を動かしたくなりまして」


 さきほど美咲様に勧められたものは、フラフープだったのだ。なんでこんなところにあるのかは謎だが。

 私は運動はできないが、フラフープは得意なのだ。

 今は3つ同時に回している。

 5つもできそうだな……でもやめておこう。

 王子と蓮見の視線が痛い。


「本当に神楽木さんって面白いね……」


 なんだか呆れたような響きがある気がするけど、気のせいですよね?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ