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入学式から早くも半月が過ぎた。
その間のフラグ折りはことごとく成功した。
まだ油断はできないが、この調子で地道に頑張っていこうと思う。
私は調子に乗らない。入学式の蓮見事件の二の舞は起こさない。私は学習する女だ。
あの事件はまずかった。
私はセカコイの主要キャラと接触する気は全くない。いや、ライバルキャラとは是非お友達になりたいけれども。
主要キャラと接触して、私という存在が王子の耳に入ることは防ぎたい。私に興味を持たれたくない。
だと言うのに。
あろうことか、王子の親友と接触してしまった。
王子に次いで接触したくない男なのに!
しかも、私の令嬢にあるまじき姿まで見られている。まことに遺憾だ。
いや、私が悪いんですけどね?
まぁ、彼に関しては恋愛方面の心配がないのが救いだ。
セカコイの設定では、彼はライバルキャラに惚れている。
しかし、ライバルキャラが王子を好きなのも知っているうえに、この時点では許嫁でもあるので、彼はライバルキャラの幸せを願って、彼女にアドバイスや激励をして彼女を応援している。
私にとってはとても共感できるキャラだ。
前世では、もうおまえライバルキャラ貰っちゃえよ!なんて思っていたが、今はそれは困る。ライバルキャラは王子とくっついて貰いたいのだ。
そこまで彼の設定を思い出してふと思いつく。
彼に協力して貰うのはどうだろう?
遠目から見た限りだと、蓮見は漫画の設定通り、ライバルキャラが好きみたいだ。
うん、いいかも。
いや待て待て待て。
蓮見は王子に一番近い存在だ。彼に協力をしてもらうということは、王子に近づくという事でもある。
それは危険だ。危険大だ。
それに私は入学式の怨みを忘れていない。いや、私が悪いんですけどね?
以上の判断から蓮見に協力してもらうという手段は却下だ。
とりあえず、私はこのままフラグ折りに専念しつつ、王子とライバルキャラの様子を眺めていよう。
「凛花さん?」
「えっ?あ、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてたみたいで……それで、なんの話だったかしら」
「遠足の話ですわ」
「ああ、そうでしたわね。遠足……」
「このメンバーで一緒の班になりたいわ」
「そうね、楽しそう」
きゃっきゃっと遠足について話し合う彼女たちは私のお友達だ。
彼女たちは編入組である私に真っ先に声を掛けてくれて、私をグループに迎えいれてくれた天使級に良い子たちだ。
好奇心旺盛でおっとりしている彼女たちとのおしゃべりは楽しい。
そしてここが重要なのだが、私の令嬢らしからぬ行動をうっかり見られた時も、彼女たちはまぁ、と言うだけで眉を顰めることはなかったのだ。
最近では、凛花さんらしいわ、と言って笑ってくれる。本当に良い子たちだ。
だだ、彼女たちはみんな王子と蓮見に憧れていて、ミーハーなところがある彼女たちはことあるごとに彼らを見に行く。
その時の私は王子たちの視界に入らないように必死に気配を消している。
それが難点と言えば難点だが、彼女たちは見るだけで満足しているようなのであまり問題はない。
私が空気になればいいだけだ。
「遠足ってどこに行くのでしたっけ?」
「確か……博物館じゃなかったかしら」
「なんでもそこの博物館の近くの植物園がとても素敵らしいわ」
「まあ、行ってみたいわ!」
「そんなところを東條様と周れたら……素敵」
あー……なんかそんなイベントありましたね。
うん、次のイベントはコレか。
漫画だと植物園でうっかり王子と会っちゃうんだよね……でも植物園行きたいな。でも王子と会うのは避けたいし……。
「ね、凛花さんも植物園行きましょうね?」
「ええ、もちろんよ」
私はニッコリ笑顔で即答してた。
おいおい、王子と会っちゃうんだよ?いいの私?
でも植物園行ってみたいんだよ。折角のお誘いなんだし、断ったら失礼だよ。
と、私VS私の言い合いが脳内で繰り広げられたが、勝ったのは植物園に行きたい私だった。
まあ、今までもさんざん王子を避けてきたし、大丈夫でしょ、と楽天的な私も囁いている。
大丈夫、なんとかなるさ。




