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 放課後の生徒会室。1年生の生徒会メンバーに沈黙が降り注ぐ。

 1人は頭を抱えて俯き、1人は腕を組んで難しい顔をしている。

 そして私は、痛みに悶えていた。


 思いっきり机を叩いたせいで、手が痛い。とにかく、飛鳥の誤解を解かなくては、と必死になりすぎた。

 これが自業自得というやつか。


「つまり、先輩方は私と蓮見様が付き合っていると勘違いしているため、私と蓮見様に声を掛けるのを遠慮していると、そういうことでよろしいかしら」


 なんとか手の痛みから立ち直った私が飛鳥に改めて確認すると、飛鳥は真面目な顔で頷く。

 なるほど……つまるところの原因は。


「蓮見様のせいですわね」

「……は?俺?」

「そうでしょう。蓮見様が一緒に馬に乗らなければこんなことには……」


 私が恨みがましく言うと、蓮見は冷たく笑って呟く。


「喜んでたくせに」


 うぐっ!た、確かに初めての乗馬体験を楽しんでましたけれども!

 私は視線をさ迷わせて、口をモゴモゴする。

 反論の言葉が思いつかない。

 飛鳥は私たちのやり取りを見て、呆れたように言う。


「……俺が思うに、君たちが文化祭で乗馬してなくてもこうなったと思うぞ?」

「何故ですか?」

「まあ、わからないならいい」


 飛鳥の言っている意味がわからず、ハテナマークが頭の中でたくさん飛び交った。

 そんな様子の私を蓮見はじっと見たあと不意に顔をそらし、飛鳥はただ苦笑を浮かべている。

 なんだか蓮見が切なそうな顔をしていた気がしたが……気のせいだったようだ。今はいつもと変わらない無表情だ。


「それで、君の言う秘策とは?」


 飛鳥は話題をそらすように私に質問をする。

 私はそれににっこり笑顔で答える。


「先輩方に甘い物を差し入れしようと思いますの。どうでしょう?」


 私はドヤ顔をした。

 ね、いいアイデアだと思いません?

 先輩方と話すきっかけができて、尚且つ美味しい。まさに一石二鳥。

 差し入れした本人も食べる気満々ですが、なにか?


 そんな私とは裏腹に、蓮見は頭が痛そうに、飛鳥は難しい顔をした。

 な、なんだろう。いいアイデアだと思うんだけどな。


「神楽木」

「はい」

「お菓子の持ち込みは校則で禁止されていることを知っているか?」

「……あ、そういえばそうだったような……」

「それに俺たちは生徒会執行部だ。桜丘学園生の手本にならなければならない存在だ。そんな俺たちが校則を破ってもいいと思うのか?」

「い、いいえ。思いません」


 なんだろう。私、先生にお説教をされてる心境なんですが……。

 うん、私が悪いよね。わかってますよ、ええ。


「よって、その案は却下だ」

「そ、そんなぁ……!朝斐さんがよくお菓子を貰ってたって言ってたからいいと思ったのに……!」

「……そんなにお菓子が食べたいの?」


 蓮見の呆れ声なんて聞こえてません。


「相模さんがそんなことを?」

「え、ええ……3年の先輩方がよく持ってきてくれたと……」

「……とりあえず、相模さんにそのあたりのことを確認してみよう。とりあえず、2人とも仕事は終わったな?」

「はい」

「終わってる」

「今日のところは解散にしてまた明日、考えよう」

「わかりましたわ」

「わかった」


 そうしてその日は解散になった。

 翌日、朝斐さんに確認したところ、生徒会は遅くまで作業していることが多いため、夜食として学校も黙認しているそうだ。ただし持ち込めるのは生徒会室内のみ。

 つまり、私の差し入れ作戦はやっても問題ないということで。私はにっこりとした。

 飛鳥はそれでも気難しい顔をしていたが、私がなんとか説得し、渋々だが飛鳥の了承を得た。


 その際に顧問の先生にも報告するように、と言われ顧問のところへ事情を説明しにいくと「ああ、そんなこと報告しなくても誰も文句言わないよ~。食べたいときに好きなだけ食べて~。それが忙しい生徒会における唯一のメリットだからね~」とのことだった。

 おいおい、唯一のメリットとか言っちゃっていいのか。あんた教師だろう、と思わなくもなかったが、先生の言質もとれたのでこれからは気にせずお菓子を持ち込もうと思う。


 やった!これで放課後の楽しみが出来る!

 私はさっそく蓮見にお菓子作りの依頼をした。

 蓮見は「なんで俺が」と言いつつも作ってくれるようだ。

 作戦の決行は来週。来週、私と蓮見の疑惑を晴らし、先輩方と仲良くするのだ。

 上手くいきますように、と心の中で祈った。



 結論として、私の作戦は大成功だった。

 ある程度時間が経ったあと、私たち1年生でお茶とお菓子を出した。

 先輩方は戸惑っていたが、私が笑顔でごり押ししお菓子を食べて貰うとみんな美味しいと誉めてくださった。

 その際に、私と蓮見の関係の誤解を解くことも忘れない。

 私が全力で否定したのが良かったのか、先輩方は誤解だとわかってくれたようだ。

 男の先輩と朝斐さんは蓮見に近寄り、肩にポンと手を置いて何やら蓮見を励ます言葉を掛けている。

 蓮見は先輩の手前、その手を振り払うことはしなかったが、心底嫌そうな顔をしていた。

 女の先輩も「蓮見くんも大変ねぇ」と面白がっていた。

 すみません、話の流れが私には見えないんですが。


 とにもかくにも、私たち生徒会メンバーの仲はこの日を境にぐんと良くなった。

 やっぱ甘い物って最高で最強だ。

 甘味で世界を救える日が来るかもしれない。


 いや。さすがにそれはないか。



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