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 もうすぐ文化祭だ。しかし文化祭といっても1年生ではほとんどなにも出来ない。1年生がやれるのはクラス展示のみと決まっていて、参加も自由だ。よってほとんどのクラスが参加しない。私のクラスもそうだ。

 なので私は気楽に文化祭を楽しもうと思っていた。うん、思っていたんだけどね……。


「頼むよ、神楽木さん~!先生を助けてくれよ~」

「オレからも頼むわ。もう凛花くらいしか頼める奴いねぇんだよ」


 またおまえらか! この生徒会コンビめ!


 文化祭前日の準備の間、やることのない私は図書室で勉強をしていようと1人で行動していた。お友達は部活と委員会の準備に出掛けている。

 2年、3年はクラスの準備で手が離せない人が多いため、部活や委員会では1年生が中心に準備をするのだ。

 私がやっていた体育祭の実行委員は体育祭の時のみ活動する委員会なので、部活にも入っていない私は暇だ。

 そう、暇なんだけどさぁ……。


「私、まだ生徒会に入ってませんよね?なのに何故私が生徒会の仕事を手伝わないといけないんでしょうか」

「他のメンバーがインフルエンザに罹ったんだよ……」

「インフル……エンザ?」


 この時期に?


「そうそう。今年は流行が早いみたいだね~。どっかの学校ではもう学級閉鎖になっているところもあるみたいだよ?」

「そうなのですか……大変ですね」

「そう、大変なんだよ~。だからね、神楽木さん」


 先生は、にやりと嫌な笑みを浮かべる。

 私はその笑みにぞわっと鳥肌がたった。


「生徒会の手伝い、してくれるよね?」

「いえ、そんな私では……」

「断るんだ?それじゃあ、しょうがないなあ」


 諦めてくれたと安心したのも束の間、先生は人を食ったような笑みを浮かべて言った。


「しょうがない。じゃあ、今日から生徒会の引き継ぎに入って」

「は、はい?」

「引き継ぎのついでに生徒会の手伝いをするように。わかった?」

「そ、そんな……」

「わ か っ た ?」

「ハイ……ワカリマシタ」


 私は先生の迫力に負けた。そんな私に朝斐さんが、ドンマイ、と言うように肩に手を置いた。

 そんな朝斐さんを恨み混じりに睨みつけ、私はしぶしぶ生徒会の仕事を手伝うことにした。




 朝斐さんに連れられて、私は生徒会室に足を踏み入れる。これで私の平穏な学園生活とお別れだ。さようなら、私の平穏……。

 生徒会室に入ると、そこには何故か蓮見が優雅に足を組んで座っていた。何故貴様がここにいる。ああそういえば生徒会に入るって言ってたか。

 蓮見の反対側には飛鳥の姿もあった。未来の生徒会長だから、飛鳥が生徒会に入ることは予想済みだ。彼は生真面目そうに紙を読んでいた。


「おぉ、揃ってんな、1年の生徒会メンバー」


 朝斐さんがにやりと私たちを見て笑う。

 蓮見は無表情に、飛鳥は朝斐さんを見てお辞儀をする。うん、性格がよく現れてるな。

 朝斐さんに座るように指示されたので、私は蓮見と飛鳥の間の席に腰かける。

 朝斐さんと一緒にやって来た私を見て、蓮見はぼそりと呟いた。


「………遅い」


 私は知らん顔をして正面を見た。知らん顔の私を蓮見はムッとしたように見る。

 飛鳥は私たちのやり取りを少し吃驚したように見た。驚くもなにも、無視しただけですが。


「蓮見に話しかけられて無視する女子がいるとは……」


 ボソボソ飛鳥がなにか言っているが、それも私は知らんふりした。

 女子だからって誰もが蓮見に良い顔するとは思うなよ。


「今からやる仕事を説明するぞ?いいか、おまえら」

「はい」

「どうぞ」

「早く言ってください」


 飛鳥、蓮見、私の順で答える。ここでも性格の差が出てるな、面白い。

 そんな私たちの返事を面白そうな顔をして聞いた朝斐さんは、仕事の説明をし始める。


 仕事の内容は細々した雑用だった。これくらいなら、なんて思った私が馬鹿だった。その雑用の量が多いのだ。

 蓮見も飛鳥も手際よく仕事を終わらせていくのに、次から次へと仕事がやってくる。私たちはあちこち走り回って必死に雑用を片付けていく。お昼もお弁当を食べながら仕事をした。お弁当は朝斐さんが食べやすいサンドイッチを用意してくれた。気の利く男だ。蓮見も飛鳥も学食派らしく、素直にお弁当を受け取っていた。私も今日は学食の予定だったので有り難くお弁当を受けとる。このカツサンドうまい。


 すべての雑用が終わったのは、日が沈んだあとだった。さすがに蓮見も飛鳥も疲れた顔をしている。私はぐったりだ。自慢ではないが、私の体力は少ないのだ。

 疲れている私たちに朝斐さんが「お疲れさん、助かった」と言って爽やかな笑みを浮かべた。

 朝斐さんは私たちより忙しくしていたのに、何故疲れていない。体力バカなのだろうか。

 考えてたことが顔に出てたのか、朝斐に頭を叩かれる。い、痛い。

 蓮見は呆れたような目で、飛鳥は少し笑って「大丈夫か?」と言ってくれた。紳士だ。蓮見も飛鳥を見習うといい。


 明日の仕事は見回りのみで良いそうだ。

 決められた時間にペアで見回りをしてほしい、と言われた。

 3人で見回る時間と、ペアを決めていく。最初は私と飛鳥で見回って、次の時間が蓮見と飛鳥、最後に私と蓮見で見回る段取りになった。

 それ以外は自由にしていいとのことなので、私は思いっきり文化祭で食べ歩きをしようと思う。

 食べ歩きをするの、楽しみだなあ。




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