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使用人さんが切り分けてくれたケーキが並ぶ。
蓮見が作ってくれたのは、ショートケーキみたいだ。
苺だけじゃなく、フルーツがたくさん挟まれている。美味しそうだ。
ケーキ以外にも蓮見はお菓子を色々作ってくれたようで、クッキーやらマドレーヌやらマカロンが並ぶ。
菜緒が持ってきてくれたのは、ゼリーだった。
綺麗なグラデーションのゼリーだ。
ピンクと黄色と緑の3種類の色で、それぞれ味も違うようだ。
ゼリー以外にも羊羮を持ってきてくれた。
洋菓子も美味しいけど、たまには和菓子の素朴な甘さもいいよね。餡子美味しい。
冷たいゼリーと羊羮は今の時期にぴったりだ。
私が用意したのは、プリンだ。
またか、と思われるかもしれないが、プリンはプリンでも今日のプリンはひと味違う。
普通のプリンも用意したが、マンゴープリンとかチョコプリンとか、生クリームがたっぷり乗ったプリンとか、焼きプリンも用意した。
中でも私のイチオシはかぼちゃのプリンだ。
今はかぼちゃの時期じゃないため手にいれるのが大変だったが、幸いにも準備期間を長く取れたのでよかった。
プリンの他にシュークリームアイスも用意した。
私はシュークリームアイスがマイブームだ。
毎日1個は必ず食べている。
みんなで持ち合わせたお菓子を並べると、とてもすごいことになった。
まあ、ちょっとボリュームあるかなって思うけど、甘い物は別腹って言うし、大丈夫だよね。
最悪、弟を連れてこよう、うん決めた。
私たちはお菓子を食べながらおしゃべりを始める。
女子会のスタートだ。
1人女子じゃない奴も混じっているが、女子力高いから大丈夫だろう。私は気にしないことにした。
「このケーキ、とっても美味しいわ。さすが凛花が誉めていただけはある」
「それほどでも~」
「あんたは、誉めてない」
「え」
「ふふ、凛花さんと菜緒は仲良しね。私たちも他所から見ればこう見えてるのかしら。ねぇ、奏祐?」
「さあ?そう見えてるんじゃない」
「もう、適当ね」
蓮見はさっきから私のイチオシであるかぼちゃプリンに夢中だ。
プリンに夢中になるがあまりに美咲様への対応が雑になっている。
気持ちはわかるが、美咲様の対応はもっと丁寧にしてくれ。
蓮見はかぼちゃプリンを食べ終わるとじっと私を見てきた。
なんだね、言いたいことがあるなら口で言いたまえ。
「このプリン……」
「秘密です」
「まだなにも言ってないけど」
「言わなくてもわかります。このプリンのお店は教えません」
「……けちだな」
「なんとでも仰ってくださいな」
この店のプリンは数量限定で、手に入れるのが大変なのだ。
ライバルは沢山いる。むやみにライバルを増やしたくない。
よって蓮見には教えない。ごめんあそばせ。
「…………」
蓮見は名残惜しそうにプリンの容器を見つめる。
ふん、そんな顔したって教えてやらないのだ。
蓮見はしばらくプリンの容器を見つめたあと、なにか覚悟を決めたように顔をあげた。
「神楽木」
「なんでしょう」
「何が食べたい?」
「はい?」
「俺が君の食べたいお菓子を作る。君が食べたいと言ったら必ず作ると約束する」
「………!!だから、どうしろと?」
「このプリンの店を教えてほしい」
蓮見はじっと真剣な目で私を見る。
私は好きなお菓子をいつでも蓮見に作って貰える権利に、ぐらぐらと心を揺らされている。
このプリンは中々手に入らない。蓮見のお菓子も滅多に食べられない。
どちらを取るべきなのか。どうする私!?
「………いつでも作ってくださるんですよね?」
「すぐに作れない時もあるかもしれないけど、頼まれた物は絶対作ると約束する」
「……わかりました。あとで、お店の名前を教えますわ。約束は絶対に守ってくださいね?」
「もちろんだ」
こうして私はプリンのお店のライバルを増やすかわりに、蓮見にお菓子を作って貰える権利を手に入れたのであった。
「ぷぷっ……し、真剣に話している内容がプリンのお店って……!」
「笑ったら悪いわ……ふふっ」
「そう言いながら美咲だって笑ってるじゃない……!フフ、でもお菓子でこんな……!あははっ」
「ふふふっ」
隣で笑っている声が聞こえる気がするが、私と蓮見は聞こえてないふりをした。
ヒロインは餌付けされた模様です




