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 私は思わぬ美咲様からの一言に、口に含んだお茶を吹き出しそうになったが、気力で堪えた。


 ちょっと待って。なにをどうしたらそんな解釈が生まれるのですか美咲様。


「あら、違ったかしら……?」

「違います。私は蓮見様のことをなんとも思っておりません」


 恋愛のれの字もないんです。彼とは顔見知り以上友達未満な関係なんです。


「そうなの……残念だわ」


 美咲様が本当に残念そうに言った。

 期待に応えられなくてごめんなさい。でも彼を好きになる予定は今後一切ないんですの、ごめんあそばせ。おほほほほ。

 私は変なテンションで心の中で答える。


「どうして、私が蓮見様のことをその……す、好きだと思ったんですか?」


 蓮見のことが好き、と言うのが嫌すぎて噛んでしまった。

 美咲様の前なのに、恥ずかしい。

 畜生。蓮見め。と私は心の中でここにはいない蓮見に八つ当たりをする。


「そうねぇ……女の勘、かしら。でも、外れてしまったみたいね」


 ふふ、とおかしそうに美咲様は笑う。


「最近ね、奏祐が楽しそうなの」

「蓮見様が、ですか?」


 私にはとても楽しそうには見えないが。


「昴も言ってたわ、最近の奏祐は楽しそうだって。きっと、神楽木さんのお陰ね」

「私?」

「そう。この間、3人で一緒にケーキを食べた時、奏祐がとてもいきいきしていていつもより楽しそうだったわ。私といても、奏祐少しも楽しそうじゃないんだもの……だからあの時、すごく嬉しかったの」


 蓮見……!美咲様に誤解されてるぞ!?

 ああ、報われない蓮見に涙が零れそうだ……。


「……もしかしたら奏祐は私のこと……ううん、気のせいね」

「水無瀬さん……」


 美咲様は気付いているのか……蓮見の気持ちに。

 でも知らない顔をしているのだ。蓮見が望んでないし、きっと美咲様も知らない顔をしていた方が楽だから。


「ちょっと前までずっと浮かない顔をしていたけれど、最近はなにか吹っ切れたみたいにスッキリした顔をしているの」

「そうですか……」

「奏祐は、あなたの話をする時、すごくいきいきとした顔をして楽しそうなのよ。女の子の話なんてするような人じゃないのに」

「……………」


 それって、私、女の子扱いされてない証拠じゃないだろうか。

 “女の子”だと思われてないから、話すのだ。そんな気がしてならないが、気づかないふりをしよう。

 その方が私のためになる気がする。

 いや、だって、女の子扱いされてないとか、悲しいじゃないか。だって私、ちゃんと女の子だし。女の子してるし。


「ふふ……あなたは本当におもしろいわ。奏祐の言っていた通りの人ね」

「はあ……そうですか」

「神楽木さん……いえ、凛花さんとお呼びしてもいいかしら」

「ええ、もちろんですわ」

「ありがとう。私のことも美咲と呼んでほしいわ」

「え。いいんですか?」

「もちろんよ」


 美咲様はにっこりと笑った。

 内心、ぐっと拳を握って喜んだ。

 美咲様に、名前呼びの許可を頂いてしまった!すごく嬉しい!



「凛花さんは、昴が苦手なんですって?」


 私が心の中で、拳を振り上げ小躍りをしていると、美咲様がふいに王子の話を振ってきた。


「ええ……実はそうなんです」


 私は申し訳なさそうな表情を作りつつ答えた。


「ですので、出来れば東條様に私のことを話さないで欲しいのです。東條様に興味を持たれても困るので……」

「わかってるわ。凛花さんのことを昴に話す気はないから安心なさって。ふふ、秘密の友達みたいね」


 私は100%本音を美咲様に言う。失礼かとは思ったが、美咲様にはあまり嘘をつきたくないのだ。

 気を悪くされるかと思ったが、美咲はそんな様子もなく、柔らかく微笑んでいた。

 私はそんな美咲様の様子にホッとしつつ、秘密の友達という響きに酔いしれそうになる。

 いけない。調子に乗ってはだめだ。私が調子に乗るとろくな目に遭わない。


「たぶん気づいているとは思うけれど……私は、昴が好きなの。でも、昴は私を“女”として意識してくれないの……やっぱり幼馴染みだから、異性として認識してもらえないのかしら……」


 少し顔を赤くして言う美咲様は、とても可愛らしかった。

 私が男なら惚れたね、絶対。

 なんでこんなに素敵な幼馴染みがすぐ傍にいるのに好きにならないんだ、王子は。もったいない。


「そうですね……やっぱり幼い頃からずっと一緒にいると異性として意識し辛いのかもしれません」

「そう……やっぱり、そうなのね」


 私は生真面目な顔で言った。美咲様はそれにちょっと落ち込んだように言う。

 私は美咲様を励ますように、明るい声を出す。


「ですので、意識させてあげれば良いのですわ」

「どうやって?」

「もうすぐ夏ですね」

「え?ええ……そうね」

「知っていますか、夏にはカップルが生まれやすいイベントがたくさんあることを」


 私はにやり、と笑った。

 きっと悪どい顔になっているだろう。


「夏祭り、花火大会、プールにバーベキュー、肝試し。夏は吊り橋効果が期待できるイベントが目白押しですのよ」

「まぁ、そんなにイベントあるのね」

「そうなのです。ところで、美咲様と東條様は二人きりでお出掛けをされたことはありますか?」

「……無いわ」

「では、夏のイベントの前の予行練習として、東條様をデートに誘ってみてはいかがですか」

「でも……私から誘っていいのかしら」

「いいのです。今の時代の流れは肉食系女子ですし。なにか観たい映画があるなら、その映画を観に行きたいから付き合って、と言えば簡単にお誘いできますよ」

「なるほど……」


 私の考えに美咲様は真剣な表情で頷く。

 私も生真面目な顔で頷き返す。

 そしてプリンを手に取り、甘味を補充する。

 頭を使った後にはやっぱ甘い物だね。疲れた脳に甘味が染み渡る気がする。

 美咲様もつられるようにプリンを一口食べた。

 プリンを口に含むと、美咲様はたちまち笑顔になった。

 プリン、気に入って頂けたようですね?



 それから私達は細かいデートの打ち合わせをし、日にちを決めたあとは、美咲様のクローゼットを開いてファッションショーを開催した。

 テーマは夏のデートだ。

 ちょっと気が早いかもしれないけれど、いくつか着ていく服の組み合わせを決めておけば前日や当日に焦らずに済む。

 あれをこうして、いや、やっぱりこっちで、なんて話しているうちに時間はあっと言う間に過ぎていった。




 また一段と美咲様と仲良くなれた気がする。

 今日はとても充実した幸せな1日だった。



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