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ガールズトーク

「俺たちの彼女が可愛すぎる件について」のガールズサイドです。

楽しみにしてくださっていた方はお待たせしました!





 私はいそいそと、待ち合わせ場所へ急ぐ。

 今日は菜緒と美咲様と、最近仲良くなった飛鳥の婚約者である都ちゃんと日和ちゃん、そしてなんと橘さんと一緒にお茶会をするのだ。場所は美咲様おすすめのケーキ屋さん。どうやら今日のために貸し切りにしたらしい。美咲様恐ろしい。

 お店の前に行くと、少し困った様子の都ちゃんを発見した。都ちゃんは今日初対面の人も多い。だから一緒に行こうかと言ったのだけど、大丈夫だと言うので別々で行くことにしたのだ。だけど、やっぱり知らない人の間に入るのは気まずいよね。


「こんにちは、都ちゃん」

「あ…凛花さん。こんにちは」


 ペコリと私に頭を下げる都ちゃんは今日も日本人形のように可愛い。白と黒のワンピースがとっても似合っている。


「都ちゃんも今来たところ?」

「えっと…実は、入るのに躊躇してしまって…」

「まあ、そうなの。じゃあ、一緒に入りましょう?」

「は、はい…」


 少し恥ずかしそうにはにかむ都ちゃんの可愛い事!ああ、こんな妹が欲しい…!

 あ、いや、うちの弟も可愛いんですけどね?でも、ほら。男の子と女の子だと、違うじゃない?


 都ちゃんと共に扉を開けると、カランと音が鳴った。

 そしてすぐにお店の人がやって来て席へ案内してくれた。案内された場所にはもうすでにみんな揃っていて、私たちをみてにっこりと笑った。


「ごきげんよう、凛花」

「ごきげんよう、美咲。それから皆さんも。来るのが少し遅かったかしら…」

「いいえ、ちょうど時間通りよ。都ちゃんも。ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう…美咲さん。初めまして、皆さん。北条都と申します」


 都ちゃんが緊張気味にみんなに自己紹介をする。そんな様子すらとても可愛いのだ。いいなあ、飛鳥。こんなかわいい婚約者がいて。

 私が微笑ましく思いながら都ちゃんを見ていると、「凛花、顔にやついているよ?」と菜緒に指摘されて慌てて私は顔を引き締めた。…いけないいけない。


 私たちが席に着くと、なんのケーキを選ぶ?とみんなでメニューを見合って選ぶ。どれも美味しそうだけど、今日はショートケーキな気分なのだ。だからショートケーキ一択だ。

 生クリームと苺が食べたい!って言う日が女子にはたまにある。…あるよね?私だけ?


「どれも美味しそう……うーん、迷っちゃうなぁ」


 困った顔をしてメニューを見つめる日和ちゃんに、「どれで悩んでいるの?」と聞くと、桃のタルトとチョコレートケーキで悩んでいるのだと答える。

 うんうん、どっちも美味しそうだもんねぇ。


「私、桃のタルトを頼もうと思っておりますの。一口、食べますか?」


 困っている日和ちゃんを見かねてか、橘さんがそう声を掛けた。

 日和ちゃんは驚いた顔をして橘さんを見たあと、嬉しそうに笑う。


「え、いいの?やった~!嬉しい。ありがとう、姫樺ちゃん」


 にこにことお礼を言う日和ちゃんに、橘さんはツンとすました顔でで「たいしたことではありませんわ」と答える。ツンデレか。可愛いな。

 しかし、二人ともスピンオフでのヒロインと悪役なのに、すっかり意気投合したようだ。他にもお互いにメニューを見てああだこうだと話している。二人は今日会うのが初めてなはずだけど、違ったのかな?

 そう問いかけると、一度二人は話したことがあるのだと、言った。


「奏祐様に用があって大学へ行った時、奏祐様と綾崎さんが一緒でしたの。それで少しお話を……」

「いやあ、あの時の姫樺ちゃんの迫力はすごかったよ。『奏祐様、あなたには神楽木さんという素敵な婚約者がありながら、他の女性と一緒にいるなんて……いったいどういうことですの?』ってね」

「あ、あの時の事は忘れてください…!」


 かあっと顔を赤くして、橘さんは悲鳴をあげるかのように叫んだ。

 え。そんなこと言ってくれたの?嬉しい…!

 私が笑顔でありがとう、というと橘さんはさらに顔を赤くしてそっぽを向いた。どうやらすごく照れているらしい。わかりやすいなあ。


「その誤解もすぐに解けたんだけどね~。そのあと一緒に甘い物を食べに行って、仲良くなったんだよ」

「まあ、そうだったの」


 ねー、と日和ちゃんはにこにこ笑顔のままで橘さんに話しかけるが、橘さんはそっぽを向いたままだった。


「ええっと…綾崎さん、だっけ?」


 菜緒がちょっと怪しげに日和ちゃんに話しかけると、日和ちゃんは親しげに答える。


「日和でいいよ?」

「じゃあ、遠慮なく。日和は彼氏いるの?」


 あ、私のことも菜緒でいいからね、と言って菜緒がそう問いかけると、日和ちゃんはぱあっと顔を輝かせて「うん!」と元気よく答えた。


「幼馴染みなんだけどね、ちょっとぶっきらぼうなんだけど、優しいの。昔から好きだよって言い続けていたんだけどなかなか信じて貰えなくて……最近ようやく彼氏になってくれました!」


 えへへ、と幸せそうに笑う日和ちゃんに、私はほっとする。

 いや、だってほら…日和ちゃんはスピンオフのヒロインですし?万が一ってことも…ね?

 だけど彼氏がいてこれだけ幸せそうなんだから、そんな心配はもう不要だよね。うん、よかったよかった。


「まあ、付き合っている方は幼馴染みだったのね。私と同じね」


 にっこりと美咲様が日和ちゃんに微笑みかけると、日和ちゃんもそうだね、と微笑み返す。


「美咲ちゃんの彼氏さんって王子様みたいだよね~!なんかすごくキラキラしてて、美咲ちゃんとすっごくお似合い」

「そうだね、キラキラしてるよね、東條くん」

「東條様ですものね」


 日和ちゃんの言葉に菜緒と橘さんはうんうん、と頷くけれど、私は素直に頷けなかった。

 まあ、王子様っぽいことは認めますよ?ええ、そりゃあね。

 だけど、中身はお腹真黒だし、高校時代はさんざんヘタレてて情けなかったことを知っている私は素直に頷けないのだ。

 一方で、東條のことを知らない都ちゃんは「そうなんですか?」と興味深そうに聞いている。聞くのもいいし写真で見るのもいいけど、出来れば都ちゃんはあいつに関わらないでほしい。その純真さが穢れそうで怖い。


「ふふ、ありがとう。お似合いといえば、菜緒と相模様もお似合いよね」


 美咲様の台詞に私と橘さんがうんうん、と頷く。

 菜緒かクールな表情で「え、そう?」なんて言ってるけど内心では照れているに違いない。

 朝斐さんのことを知らない日和ちゃんと都ちゃんは興味深そうに「へえ~そうなんだ~どんな人?」と食いついてきた。

 私が持っていた朝斐さんの写真を見せると、「わあ!かっこいい!確かにお似合い!」と大興奮。そうだろうそうだろう。


「都ちゃんは飛鳥くんと婚約しているんだっけ?」


 恥ずかしいのか、菜緒は話を逸らすように都ちゃんへ話題を振った。

 都ちゃんは生真面目に「はい」と答える。


「冬磨さんとは昔からの付き合いで、親同士も仲が良くてその縁で…」

「そうなんだ!じゃあ、私と美咲ちゃんと同じだね!」


 「ここにも仲間がいた~」と日和ちゃんは嬉しそうだ。

 美咲様は飛鳥が都ちゃんに対してどう接しているか興味があるようで、「飛鳥くんって都ちゃんにとってどんな感じなの?」とぐいぐい聞いている。

 都ちゃんはもともと表情が乏しい子らしいんだけど、さすがにこの状況に戸惑っているのか、ちょっと困ったような顔をしつつも、一生懸命答えていた。

 ああ、可愛いなぁ。いいなぁ、飛鳥……。


「美咲様、都さんが困っておりますわ。その辺りにして差し上げて」


 ぐいぐいと質問する美咲様にタジタジになっていた都ちゃんを庇うように、凛とした声音で橘さんが言った。

 うおお…美咲様にそんな毅然な態度で物申せるなんてすごい…!私だったら「あの……そのぉ……そのあたりに……その……」なんて言って、もにょもにょと何とも情けないことになっていたに違いない。

 ……ああ。自分で言っていて悲しくなってきた……。


「あら…私ったらつい……ごめんなさいね?」


 反省したようにしょぼんとして謝る美咲様に都ちゃんは首を横に振る。

 そんな都ちゃんに美咲様はほっとした顔をした。


「美咲様はもう少し遠慮なさった方が良いのではなくて?あなたはそういう問いかけはすぐに答えられるのかもしれませんけれど、中には答えられない方もいらっしゃるのですから」

「……そうね。姫樺さんの仰る通りだわ」

「わかればいいのですわ」


 フン、と小さく鼻を鳴らして橘さんはお冷を飲んだ。

 そんな橘さんに都ちゃんが「ありがとうございます」とお礼を言うと、橘さんは少し顔を赤くさせて、「勘違いなさらないで。別にあなたのために言ったわけではなくってよ!」と早口で言った。どうやら照れているようである。

 ツンデレか!……ってこのツッコミ本日二回目だな。


「そ、そういえば……今日は東條様たちも男子会を開くのだとか」


 生ぬるい空気を払拭するべく、私が発言すると、美咲様が「そう言えばそんなことを言っていたわ」と同意し、他のメンバーも「聞いた聞いた」というように頷く。


「カイトも呼ばれているんだってね!」

「たまたま帰国されていらっしゃるのですよね。丁度良いタイミングで帰ってきて良かったと仰っておりました」


 菜緒の言葉に橘さんがさらに言葉を重ねる。

 どうやら橘さんはこまめにカイトと連絡を取っているようだ。

 橘さんから語られるカイトの話はほぼ愚痴。だけど、それにはなんだか優しい感情がこもっているような気がするのは、私だけなのかな?

 今は小さな種のような気持ちかもしれない。だけどそれがいつか芽を出して花を咲かせればいいな、と思う。だって、カイトの事を話す橘さんの顔は、なんだかとても活き活きとして、楽しそうだから。


「悠斗くんも参加してるんでしょ?」


 橘さんの話が終わったころを見計らって、日和ちゃんがそう問いかけて来たので、私は頷く。


「ええ。無理やり参加させられることになったと、弟は言っていたわ」

「はは!悠斗くんっぽいね。それにしても男子会かぁ。どんな話してるんだろうね?」


 わくわくとした表情で「興味あるなぁ」と呟く日和ちゃんに、美咲様も同意した。


「そうね。でも……きっと私たちと似たようなことを話しているのではないかしら」

「え?なんでそう思うの?」


 確信めいた口調で言う美咲様に、菜緒が不思議そうな顔をしてその理由を聞く。

 美咲様はそれに悪戯げな笑みを浮かべて答えた。


「私の勘。……それと、昴が主催だから、きっとそういう話になるだろうなと思ったの」

「ああ……東條様ですものね……」


 私は少し虚ろな目をして答えた。

 きっとあの元ヘタレは嬉々として美咲様との惚気を語っているんだろう。キラッキラッと無駄に輝く笑顔を浮かべて美咲様とのアレコレを語る元ヘタレ。わあ、むかつくわぁ……!

 しかしながら、その姿がありありと想像できてしまうのが悲しい。


「蓮見くんも凛花の自慢話してるんじゃない?」


 私の想像の中の元ヘタレをぶん殴っていると、不意に菜緒がからかうようにそう言ってきた。

 蓮見が元ヘタレと同じように、私の自慢話を?

 ……うーん、想像できない。どちらかというと、ムッツリとした表情の方が思い浮かぶ。

 それはないんじゃないかな~、というと、なぜか皆不満そうな表情を浮かべる。なぜだ。


「じゃあ、凛花ちゃんは蓮見くんの自慢話ないの?」


 皆を代表するように問いかけてきた日和ちゃんに私は首を傾げた。

 自慢……自慢ねぇ……。


「……自慢話なんて、ないわ」

「えっ!ないの!?」


 驚いて言う日和ちゃんに、私はこくりと頷く。


「自慢もなにも……奏祐さんが素敵な人だってことはもう皆知っていることじゃない。今さら私が自慢する必要もないでしょう?」


 私が普通にそういうと、なぜか皆唖然とした顔をしている。なぜだ。

 しかし、そんな私の疑問も、運ばれてきたデザートを前にすぐに消え去った。

 わあ!ショートケーキ美味しそう!!


「…凛花からそんな発言を聞くとは…」

「ふふ、奏祐ったら愛されているのね」

「蓮見くんが羨ましいなぁ」


 呆れたような菜緒と、微笑ましそうな美咲様と、羨望の眼差しでどこかを見る日和ちゃんと、どう反応すればいいのか困っている橘さんと都ちゃんの様子に、デザートの写メを取り、蓮見にそそくさとメールを送っていた私が気付くことはなかった。





次回の更新は蓮見&凛花のいちゃラブ話です。

凛花視点・蓮見視点両方とも書く予定ですので、お楽しみに!

週末あたりに更新できたらいいなあ、と思います。


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