ケモミミとわたし
「ご馳走様でした」
満足したわたしはナイフとフォークを置きました。
「お粗末さん、それで、嬢ちゃんは何者なんだ?
辺境伯様に所縁があるみたいだが……貴族か?」
「わたしはただの冒険者ですよ。
少々、縁あって辺境伯様に目を掛けて頂いているだけです」
「いやいや、ちょっと縁があったくらいで貴族が自分の家の家紋が入ったメダルを他人に渡すわけ無いだろ」
「いえ、本当ですよ。
ちょっとユーリア様の治療をしただけです」
「じゃあ、嬢ちゃんが噂の大陸の外から来た薬師なのか?」
「どんな噂かは知りませんが、多分そうですよ」
「そうか……ユーリア様を助けてくれてありがとな」
「あれは依頼でしたからね」
わたしがユーリア様を治療した薬師だと知ると、この街の人たちはみんな口を揃えてお礼を言います。
ユーリア様は本当に人気があるのですね。
「それと、俺たちも助けて貰ったからな。
嬢ちゃんのおかげで娘を奪われずに済んだ。
ありがとう」
「それこそ、気にしないで下さい。
わたしは店主さんの料理が気に入ったんですよ。
あいつらにこの店を潰されては、もう料理が食べられないですからね」
「でもな……俺の腕を評価してくれるのは嬉しいんだが……あいつらに大分荒らされてな。
悪評が立ってあまり人が来なくなったんだ。
嬢ちゃんに借りた金も直ぐには返す事は出来ないんだ」
「まぁ、お金は別に良いのですが……」
店主さんと話しながらも、わたしの視線は、オロオロと店の中を彷徨い、奥に引っ込んだり、物陰に隠れたりしながら、最終的に店主さんの右足に引っ付いたケモミミに釘付けです。
「おっと! そうだ。
すまねぇ、助けて貰って置いて自己紹介もしてなかったな。
俺はバント、こっちは娘のヨナだ。
ほらヨナ。
お姉ちゃんがパパとヨナ助けてくれたんだぞ」
バントさんがそう言ってヨナちゃんの背中を軽くこちらに押しやります。
「お、お姉さん、ありがとうございました」
ヨナちゃんは少し頬を染めながらペコリと頭を下げてそう言いました。
「うぐぅぅう」
何でしょう、この可愛い生き物は!
モフモフして、ペロペロしたいです!
(落ち着くのです、わたし!)
ひっひっふ~ ひっひっふ~
よし、耐えました。
YESロリータ、NOタッチ!
「お、お姉さん!」
「ぐっ!」
ケモミミ美少女の上目遣いでの「お姉さん」をわたしは絹ごし豆腐の様に硬い意思の力で耐え抜きます。
「何かな? ヨナちゃん?」
わたしの手はヨナちゃんの頭上で右耳と左耳の間を行き来するのに大忙しです。
「お姉さんはユーリアさまの病気を治した、すごい薬師さまさんですよね?」
「凄い訳では無いですけど、薬師ですよ」
「お母さんの病気も治せますか?」
「お母さんは病気なんですか?」
わたしはヨナちゃんに問いかけながらチラリとバントさんを見ます。
「あぁ、実は女房はずっと体調を崩していてな。
治療してやりたくてもかなり難しい病気らしいんだ。
薬で誤魔化してるんだがその薬も高価で借金が嵩んじまうし、治療には更に金が掛かるらしい」
「なるほど、では、わたしが診てみましょう」
「えっ! まてまて、辺境伯家御用達の薬師に払える報酬なんて用意出来ねぇよ」
「ん~では、報酬は後でヨナちゃんを抱っこさせて下さい」
「は?」
「?」
「さ、奥さんの所に行きましょう」
わたしはポカンとする2人を促し店の奥に入って行きました。
ふふふ……わたしの異世界に行ったらやりたい事ランキング堂々の1位、『ケモミミを思う存分モフモフする』が叶う時が来たのです。
この世界に来てから、わたしのロマンが次々に現実となっています。
このペースで行くと主砲を発射する日も遠くないかも知れません。




