巣とわたし
ハーピィの巣は大木のテッペンに有ります。
身体強化をかけた、わたし達は大木の幹を駆け上がって行きます。
前にテレビで見た、崖に住んでいるヤギの様に僅かな窪みを足場にして、ハーピィの巣に近づきます。
「ギィィィイ!」
「気づかれたか」
「はっ!」
「ギィガギャ!」
鳴き声を上げて警戒していたハーピィに烈風の斧を投擲して黙らせます。
「一気に乗り込むぞ!」
「「「おぉ!」」」
ハーピィの巣はバスケットコート位の広さです。
中央にハーピィクイーンが陣取り、その周囲をハーピィが飛び回っています。
「デネブについて行って下さい」
「分かった」
デネブを捕らえられている子供の所に飛ばすと、わたしは正面にいる群れのボスを睨み付けます。
ハーピィ達の気を引かなければなりません。
子供がいる方とは逆の方向に移動しながら魔法を放ち、数体のハーピィを仕留めます。
うまく行きました、ハーピィ達は1人だけであり、自分たちを攻撃してくるわたしを優先目標に定め、追ってきました。
スノーホワイトを取り出し、一振りする動作に合わせて複数のつららを飛ばします。
シンデレラは使えません。
山火事になります。
つららが3体のハーピィを貫くとハーピィクイーンが重い腰を上げ、こちらに向かって来ました。
周りには5体のハーピィを従えています。
わたしの視界の端で少女を担いだブライアンさんと数体のハーピィを蹴散らす《虹の大河》の姿が見えました。
彼らは周囲のハーピィを片付けると10メートル以上ある大木からヒラリと飛び降りてしまいました。
一瞬、ドキ! っとしましたが恐らくリュミナスさんとカナンさんの精霊魔法でうまく着地するのでしょう。
精霊魔法は他の魔法に比べて効果の柔軟性が非常に高いのです。
この大木から飛び降りた場合も、風魔法だと【エアクッション】や【バーストエア】などの魔法を威力を繊細に制御しながら使用する必要が有ります。
しかし、精霊魔法の場合、風の精霊に『受け止めてね』とひと言頼んでおけば良いのです。
魔力のコントロールや威力の調節などは全て精霊がやってくれます。
ただし、精霊との信頼関係がある事が前提です。
精霊を蔑ろにしていると突然精霊魔法が使えなくなったりするそうです。
リュミナスさん達が無事着地し大木から離れて行くのを確認し、わたしも撤退するため、ハーピィの巣から飛び降りる事にします。
精霊魔法は使えませんが、わたし1人くらいなら何とでもなります。
ハーピィの巣の縁に向けて走っているわたしの前にハーピィクイーンが回り込みました。
大きな身体をしていますが意外と速いですね。
進路を変えて走りますがそちらも回り込まれてしまいます。
「如何あっても逃さない気ですか」
「ギィャヤ!」
背後から鋭い爪でわたしの首を狙って来たハーピィを水魔の戦斧で真っ二つに切り捨てます。
「水よ 惑い揺らめけ 虚ろな刃 【アクアエッジ】」
わたしの周囲に水の刃がランダムに打ち出されます。
水魔の戦斧によって強化された水の上級魔法により、ほとんどのハーピィは息絶えました。しかし、ハーピィクイーンはランダムに放たれた水の刃を全て躱して見せました。
烈風の斧を投げつけハーピィクイーンが躱したところでハーピィクイーンの背後にいたハーピィを始末します。
「ギィギィ」
こちらに突進して来たハーピィには雷鳴の鉈で翼を切り落とし、墜ちて来たところで喉を踏み潰し、息の根を止めます。
「ギィギィャヤ、ギィ」
ハーピィクイーンがなにやら指示の様なものを出した気がしました。
すると3体のハーピィが突進して来ます。
飛んで火に入る夏の虫とはこの事です。
タイミングを合わせ、先頭のハーピィに向かって雷鳴の鉈を振るいました。
しかし、鉈はハーピィに当たることは有りませんでした。
ハーピィは鉈が当たる直前、軌道を変えたのです。
そして、鉈を空振りしてしまったわたしに2体目のハーピィが迫ります。
「くっ!」
素早く、左手にスノーホワイトを召喚したわたしは、2体目のハーピィにカウンターを仕掛けます。
「な!」
なんと、2体目のハーピィも、1体目と同じく、スノーホワイトが当たる直前に軌道を変えたのです。
そして、身体が半身になり、無防備な背中を晒してしまったわたしに3体目のハーピィが迫ります。
「ぬうぅう」
なんとか身体を捻り、直撃は避けましたが、鋭い爪に引っ掛かれ、かなりのダメージを受けて仕舞いました。
夜天のローブを着ていなければ今ので戦闘不能だったかも知れません。
しかし、この前の木に続いて鳥にまで作戦負けするとは屈辱です。
まさかハーピィがジェット○トリームア○ックを仕掛けて来るとは思いませんでした。
わたしが体勢を立て直す暇を与えない様にハーピィがまたもや3体で突進してきました。
でも、もう同じ技は通用しません。
なぜなら、わたしはファーストを見ているからです。
猛スピードで突進してくる1体目を踏み台にするべく、わたしは飛び上がるのでした。




