武器職人とわたし
解体は夜遅くまで掛かりました。
手伝ってくれた冒険者達に報酬を渡し、雪獅子のたてがみ亭に戻ります。
今日はつかれたのでもう休みましょう。
翌日の昼過ぎにギルドに行きました。
これから依頼者の武器屋さんに木材と素材を納品します。
ギルドの2階に有る会議室でリゼさん立会いのもと、依頼者にお会いするのです。
「ほぉ、お前さんが依頼を受けた冒険者か」
依頼者は武器職人のガルフさんです。
「はい。こちらが依頼の木材です」
「なかなかの魔力を帯びてるな」
「それとこちらが追加の素材です」
「こ、こりゃぁ」
ガルフさんはわたしが取り出した素材を見て驚きます。
「リーフウルフの牙にブッシュスネークの皮と牙、トレント材、それにこれは、まさか……」
「あ、それはエンシェントトレントです」
「やっぱりか! Aランクの魔物の素材を手に入れてくるなんて、ほ、本当にお前さんが倒したのか?」
おや、ガルフさんが戸惑いと疑いの混ざった目で見て来ますね。
まぁわたしが強そうには見えないのは分かっていますから良いのですが。
肯定するため口を開こうとするとガルフさんがわたしの背中の戦斧に目をやり、先に口を開きました。
「いや、確かにお前さんは一流の腕前が有るようだ。悪かったな」
「武器を見ただけで分かるのですか?」
「俺は一流の武器職人だからな。
お前さんのその戦斧、鋼だろ」
「はい。丈夫な作りですが、店売りのごく普通の戦斧ですよ」
「その戦斧に魔力を通しながら使ってるだろ」
「分かるのですか!?」
「その戦斧の材質は鋼から魔鋼へ変質している。強い魔力に長時間晒された証だ。
それに、武器に魔力を通すのはかなりの高等技術だからな。
お前さんはそれだけの技術を扱える一流の冒険者だと言うことだ。
是非、この素材も買い取らせて欲しい」
ガルフさんが提示してくれた金額はかなりの大金でした。
しかし、リゼさんによると、これでも少ないようです。
「ガルフさん、ユウさんが入手されたエンシェントトレントは発見例の少ない希少な魔物です。
素材としても魔力伝導率が非常に高く、加工もしやすい優れた素材です。
適正な価値であれば金貨が7枚程少ないと思いますが?」
「う~む、しかし、これ以上となると流石に予算が……」
「ならばエンシェントトレントの素材は競売に掛けるか商業ギルドに持ち込むほうが良いですね」
「ま、まってくれ!
あ~、え~、そ、そうだ!
現金は払えないが俺の作った武器をやる! 金貨7枚分……いや、金貨12枚分だ!」
「う~ん、どうするユウちゃん?
ガルフさんは腕は確かよ。
すぐお酒に使っちゃうからお金はないけど」
「そうですねぇ……うん、それで良いですよ。
わたしも腕の良い武器職人さんを探していましたし」
「おぉ、そうか。
恩にきる、ユウだったな俺も腕の良い冒険者とは懇意にしたいからな。
これからは武器に困ったら俺を頼ると良い。力になるぞ!」
「はい。よろしくお願いします、ガルフさん」
わたしとガルフさんはがっしりと握手をかわしました。
翌日、約束の武器を頂く為に、ガルフさんの工房を訪れました。
「よく来たな。さぁ、好きな物を選んでくれ」
「ありがとうございます。見せて頂きますね」
工房に併設された店舗でガルフさんが作った武器を見せて貰っています。
《紅蓮のサーベル》
火属性の剣ですねこれが金貨7枚。
《大地のナイフ》
こっちは地属性、値段は金貨5枚です。
今のところ、この2つが気になる武器ですね。
「ん?……これは!」
《双斧:スノーホワイト&シンデレラ》
金貨20枚
これは素晴らしい斧です。
スノーホワイトは刃から柄に至るまで真っ白で美しい戦斧で、シンデレラは真紅の刃に灰色の柄を持つ、力強い印象を受ける戦斧です。
2本の戦斧は色こそ異なっていますがデザインはまったく同じで、柄の長さは魔鋼の戦斧の半分くらいです。
「ガルフさん、この戦斧を下さい。足りないお金は支払います!」
「あ、あぁ、分かった」
その後、ガルフさんに武器の整備をして貰い(もちろん代金は支払いました)お店を出ました。
今日は素晴らしい武器を手に入れることができて満足です。




