教え子とわたしとサプライズ
ミーナさんがシアさんと何やら話し込んでいるので、わたしは貴族然とした虚勢をはるレオさんに話しかけます。
「クルスさんとマーリンさんは来ていないのですか?」
「ええ、連絡は取ろうとしたのですが、クルスには連絡が取れませんでした。
まぁ、クルスはなにかと器用で要領が良いから心配はしていないが居場所が掴めませんでした。
マーリンは連絡は取れたのですが現在遠方の国で仕事を受けている様でパーティに間に合わない、との事です」
「そうですか、残念ですね」
「はい、ですがマーリンからは祝いの手紙は届いているそうですよ」
「そうなんですか。
クルスさんは冒険者になったと聞きましたが、マーリンさんは何をしているのですか?」
「マーリンは卒業後、師である大賢者イナミ様を探す為に冒険者となって旅に出ました」
「…………大賢者、ですか」
その大賢者ならさっきそこでミーナさんが作ったケーキやらシュークリームやらを楽しそうに食べてました。
気付いている人は殆どいないようですけどね。
どうやら闇魔法の【認識阻害】を使って正体がバレないようにしているみたいです。
レオさんはわたしが微妙な顔をしている事には気付かずに、さり気なく周囲を窺い声音を落として続けました。
「それで、この話は内密にして欲しいのですが、師を探す旅に出たマーリンは現在、勇者の仲間として行動しています」
「勇者ですか」
確か以前何処かで…………ああ、わたしがこの世界にやって来る時にドルオタ神が言っていましたね。
この世界には邪神や勇者が居るって。
「勇者は今何をしているのですか?」
「今は各地を巡って精霊の加護を受けた仲間を集めているらしいです。
マーリンも闇の精霊の加護を受けたと聞きました」
「そうなんですか」
マーリンさんはすごい冒険をしているのですね。
まるで王道RPGの様です。
しばらく談笑をしていると、一通りの挨拶を終えたアルさんとコゼットさんがこちらへとやって来ました。
「やぁ、レオ、シアさん」
「ああ、アル、コゼット嬢。挨拶回りは終わったのか?」
「一応ね。ユウ先生やお嬢さん方も今日は来てくれてありがとう」
「ありがとうございます」
アルさんとコゼットさんはリリやミーナさん、メイさんにも笑いかけます。
「アルベルト様、本日はお招き頂きありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
リリはアルさんとは結構会っていますからレオさんやシアさん程緊張はしていませんね。
ミーナさんはシアさんと話して少し慣れたのか、もしくは感覚が麻痺して来たのかも知れません。
「アルベルト様、コゼット様。この度はご婚約おめでとうございます。我々、商業ギルドと致しましても、次代の辺境伯閣下であられるアルベルト様のご婚約がガスタの街の発展に明るい未来を齎すと確信しております」
メイさんが少々堅くお祝いの言葉を送ります。
メイさんは一応、商業ギルドの代表の1人とした此処にいる訳ですからこれは仕方有りませんね。
ギルドの制服で来ていますし。
こうしてパーティも中盤に差し掛かった頃、唐突に音楽が鳴り響き、中庭の奥作られた即席の舞台に人が集まり始めました。
「何だ?」
「楽団なんて予定していましたっけ?」
アルさんとコゼットさんが不思議そうな顔をします。
当然ですね。
サプライズなんですから。
それから始まったのは悲劇の令嬢を救う為、奮闘する若き貴族の冒険活劇。
多少、誇張している部分や美化している部分、意図的に伏せられている部分などは有りますが、ほぼノンフィクション。
わたしが書いた脚本を原案に、メイさんの知り合いの劇作家に台本を起こして貰い、婚約パーティ当日の公演に間に合わせたのです。
この為にわたしとメイさんはここ最近は随分と忙しくしていました。
でも、その甲斐あって招待客の皆さんはとても楽しんで貰えている様です。
『ああ、コゼット。僕はもう君を決して離さない!』
『アルベルト様、この命が尽きるまで貴方様について行きます!』
現在、舞台の上はクライマックスでした。
アルさん役のイケメンとコゼットさん役の美少女(ちゃんと豹人族の役者さんをお願いしました)が熱演中です。
「やるなぁ、アル」
「情熱的ですわね」
レオさんとシアさんには好評の様ですね。
そしてモデルの2人はと言うと。
「「……………」」
ポカンと口を開けて茫然としているアルさんと、真っ赤になりプルプルしているコゼットさん。
……………喜んでくれていますね。
「ゆ、ユウ先生、コレは一体……」
再起動を果たしたアルさんが頬を引きつらせながら聞いて来ました。
「お祝いのプレゼントですよ」
「で、ですが……」
「私達が許可したのだ」
アルさんの抗議を遮る様に声が掛かりました。
「父上!」
「お父様!」
声の主はフレイド様、そして一緒に居たのはコゼットさんの父親であるレオパルト公爵でした。




