◆砕けた仮面
修復された舞台の上、わたしは国王様の前に立っています。
わたしの直ぐ後ろにはザムさん(今回は仮面を付けたままです)その後ろにはナーブさんとカイさん、その後にクルーガー殿下達と続きます。
「ユウよ、見事な戦いであった。
そなたの栄誉を称え、この水のオーブを授ける」
「有難き……」
……幸せと言い切る前に、背後から突き飛ばされてしまいました。
「な⁉︎」
驚愕するわたしの視界に映ったのは、水のオーブを掠め取り、国王様を蹴り飛ばしたザムさんの姿でした。
国王様は数メートルも吹き飛ばされた様ですが命に別状はなさそうです。
控えていた魔法使いが国王様に駆け寄り治癒魔法を掛け、近衛騎士がザムさんと国王様の間に立ちふさがります。
しかし、ザムさんは国王様を無視して控え室の方に向かいます。
その行動を止めようと兵士さんとクルーガー殿下達がザムさんへと武器を向けます。
「【覇円】」
ザムさんが剣を振るうと全方位へと高威力の衝撃波が放たれました。
兵士さんやクリミナさん、ユミンさん、それと審判さんや実況さんを庇ったナーブさんは吹き飛ばされてしまいました。
衝撃波を打ち消す事が出来たのはわたしとクルーガー殿下、ヤナギさんとカイさんの4人です。
「血迷ったか!ザム!」
クルーガー殿下の拳を躱し、鳩尾を剣の柄で殴りつけ、トライデントを腰だめに構えたカイさんの方へと突き飛ばします。
「これ程の狼藉、もはや命は無いと思え!」
ヤナギさんの神速の居合い斬りをザムさんは軽々と止めました。
「なに⁉︎」
「【震牙】」
ザムさんは刀を受け止めたまま、魔力を放ち、ヤナギさんを攻撃しました。
「ぐふぅ!」
崩れ落ちたヤナギさんの身体に隠れる様に接近していたカイさんがトライデントを突き出しますが、ザムさんは三又になった槍を掴み取り、引き寄せカイさんの顎を素早く殴り飛ばしました。
瞬く間に3人の強者を無効化してしまいました。
あの決勝戦ですら力を隠していた様です。
ザムさんは控え室から駆け出してきた少女へ水のオーブを投げ渡しました。
少女は懐からスクロールを取り出しましす。
スクロールに刻まれた魔法陣は召喚に近い形です。
しかし、召喚では有りませんね。
多分同系統の魔法です。
少女が魔法陣に水のオーブを置き、魔力を込め、魔法陣を発動させました。
すると、水のオーブが消え去り、スクロールが燃え上がります。
使い切りの転送魔法陣でしたか。
「【光鱗】」
ザムさんに追いついたわたしは水龍の戦斧を振り上げます。
「【魔装:鱗戦斧】」
「【光球】」
ザムさんの身体の周りに小さな光の球が浮かびます。
「アレは⁉︎」
どうやら、わたしの【光鱗】と同じ様に魔力を凝縮した塊のようです!
「【魔技:極光剣】」
ザムさんの剣に光の球が集まり、凝縮された魔力の輝きが宿りました。
「【遍断ち】」
「【閃光】」
わたしの戦斧とザムさんの剣。
魔力の輝きを持った武器同士がぶつかり合った衝撃は、舞台を修理した魔法使いさんの頑張りを嘲笑うかの様に石畳を粉々に砕きました。
その威力は凄まじく、わたしの飛来した瓦礫がかすめ、額から一筋の血が流れて来ます。
砕けた石が粉塵となり、辺りに立ち込め、視界が一時的に遮られてしまいました。
衝撃で数メートル後退したわたしと、粉塵で姿が見えないザムさん。
そして、わたしの足元には、砕けたザムさんの仮面が転がっています。
光り輝く剣を手に、粉塵から1人の男が現れます。
ザムさんと同じ装備、同じ服装をしていますが、あの時見た人族の男性の顔とは全く違います。
やはり、あの顔は幻術か何かだったのでしょう。
男は苦笑いを浮かべて話し掛けて来ました。
「やっぱり強いな、ユウ」
「そう言う貴方は随分と腕を上げましたね、ザジさん」
わたしは、久し振りに再会した魔族に言葉を返し、ニヤリと笑うのでした。




