馬とわたし
ガタガタ……ガタガタ……
現在、わたしは王都に向けて移動中です。
今回はいつもと違い辺境伯家のみなさんと馬車で移動しています。
護衛依頼を受けた訳ではありませんが赤ちゃんを連れての長旅なので同行する事にしました。
フレイド様は護衛として報酬を払うと言ってくれたのですが、大抵の魔物や盗賊くらいなら護衛の騎士さん達で何とでもなるので依頼は断りました。
今も馬車の外では騎士さん達が危なげなくゴブリンを仕留めています。
わたしの出る幕は有りません。
「ふぅ」
そう思っていたのですが…………わたしは馬車から飛び出すとゴブリンを討伐してひと息ついていた若い騎士さんに向かって水龍の戦斧を振り上げます。
「え⁉︎ な、ゆ、ユウ殿‼︎」
ガキィ!
わたしが振り下ろした水龍の戦斧は若い騎士さんの首を狙って突っ込んで来た剣の様に鋭いツノを受け止め、弾き返します。
「ブルルゥ!」
森から飛び出し、若い騎士さんの命を狙ったのは辺境伯家の馬車を引く馬(名馬で有るがあくまで普通の馬)の倍はある巨体を持つ馬の魔物です。
額には刀剣の様な鋭い2本のツノが生えています。
「えっと、確か……バイコーンでしたっけ?」
図鑑で読んだ事があります。
気性が荒く、危険な魔物でCランクだったはずです。
ツノをこちらに向けて、前足で地面を掻き威嚇するバイコーンに戦斧を構えます。
「ブルゥ⁉︎」
「ん?」
バイコーンは何故か、わたしが睨み付けると数歩後退りし、若干よろめいています。
「えい!」
わたしの戦斧はバイコーンの首を軽く切り落としました。
サクッと討伐しましたが、何だか釈然としませんね。
バイコーンは明らかに様子が変でした。
首を傾げながらバイコーンを回収したわたしが馬車に戻ろうとしていると、若い騎士さんが話しかけて来ました。
「ユウ殿、ありがとうございました。
ユウ殿が助けてくれなければ今頃、僕は死んでいました」
「いえいえ、お気になさらずに。
たまたま気が付いただけですから」
若い騎士さんと話した後、馬車に戻ります。
馬車に入り座り直すと苦笑い気味にフレイド様が声をかけてくれました。
「突然飛び出したから驚いたぞ」
「済みません、ご心配おかけしました」
「お怪我は有りませんか?」
「はい、ミッシェル様」
「ユウ様、凄く強いのですね!」
「ははは」
ユーリア様は久し振りに街から出た上、目の前での戦闘に少し興奮している様です。
まぁ、こんな緊急事態はもう無いでしょう。
後はゆっくりさせて貰うとしましょう。
そう思い馬車の椅子に深く腰を落としたわたしですが、数時間後、前言を撤回する事になるのでした。




