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地味萌えとわたし

「なんでも、あの怪盗108面相が貴族の屋敷を狙っているんですって」

「依頼を受けるのに審査があるが、俺達みたいな中堅が受けるには、かなり割りのいい仕事でな」

「それは良さそうな依頼ですね。

 しかし、相手の怪盗108面相はかなりの腕だと聞きましたよ。

 失敗する可能性の方が高いのではありませんか?」

「それも問題ない」

「依頼は貴族の屋敷を警備するだけで怪盗108面相を捕まえる必要はないんだ」

「捕まえる事が出来たら褒賞がでるけど、捕まえられなくてもペナルティーはないんだよ」

「ただし捕まえる場合は生け捕りが条件だけどね」

「なぜ、生け捕りなんですか?

  義賊とはいえ貴族の屋敷に盗みに入った盗賊です。生死問わずが普通ですよね」


 わたしが尋ねるとガイルさんは少し声を落として教えてくれました。


「ああ、あまり大きな声では言えないが恐らくテスタロッサ殿下は怪盗108面相を捕らえて配下にしたいんじゃないかな?」

「配下にですか?」

「ああ、表向きは盗賊として処刑したことにして密偵にするつもりじゃないかな」

「そんなに上手く行きますか?」

「無理だろうな。だからテスタロッサ殿下は無理に捕らえる必要は無いと考えているんだろう。

 王族としての義務として貴族を護る人員を集めたりしているが、不正貴族が捕まった方が王家を中心にしている王族派としては都合がいいからな」

「それに盗まれた財貨もほとんどは孤児院なんかに寄付されるらしいし、貴族派が力を付けるのを抑えたい王族派からすると怪盗108面相は無理をしてまで止める必要は無いのよ」

「貴族派の貴族の中には怪盗108面相は王族派の密偵だと言う者もいるらしいな。

 だが怪盗108面相は、テスタロッサ殿下と何度も直接闘っているし、貴族派よりは少ないが王族派の貴族も怪盗108面相にやられているからな。

 それに、王族派なら王女殿下に刃を向ける無礼を働くとは思えないしな」

「へぇ、その依頼、わたしも受ける事は出来るのでしょうか?」

「大丈夫だと思うぞ。

 王族からの依頼だから受けるにはある程度ギルドから信頼がある事が条件だが、Aランクなら問題ないだろう。

 そもそも、Aランクに上がるためにはギルドからの信頼がある事が条件の1つだったはずだ」

「なるほど、受付で聞いてみますね」


 わたしはチラチラとこちらを窺っていた受付嬢さんに話しかけます。


 まだ、幼さがのこる顔立ちにソバカスと三つ編みと言う、一部の人間にとても人気がある容姿です。


 地味萌えです。

 わたしですか?

 嗜む程度です。



「すみません、依頼についてお聞きしたいのですが……」

「はっは、は、は、はい! 何でしょうか?」

「………………あの、緊張し過ぎではありませんか?」

 

 わたしは何故か直立不動で敬礼している受付嬢さんに尋ねます。


「す、すみません。

 まさか漆黒のユウさんに話しかけられるなんて思ってもいませんでしたから」


 《漆黒》とは最近呼ばれ始めたわたしの二つ名です。

 ふふふ、カッコいいです。

 厨二といえば、二つ名です。

 《赤い彗星》とか《麦わら》とかと同じです。

 冒険者にも有名になると二つ名がつく事があります。

 リュミナスさんの《虹》とかリゼさんの《至高》とかです。

 なんか最近盗賊共がわたしを見ては、漆黒、漆黒と騒いでいたので締め上げて聞いてみるとわたしの目や髪、夜天のローブなどから漆黒と呼ばれ始めているらしいのです。

 閑話休題です。


「まぁ、ギルドの受付なんですから冒険者に話しかけられる事もありますよ。

 それより、依頼についてなんですが?」

「は、はい、どう言った依頼でしょうか?」

「テスタロッサ殿下が貴族の屋敷の警備を募集していると聞いたのですが?」

「はい、怪盗108面相の件ですね。

 確かに現在、信頼できる冒険者を集めています」

「わたしがその依頼を受ける事は出来ますか?」

「え、ユウさんがですか?」

「無理なのですか?」

「いえ、無理ではありませんが……その……確かに中堅クラスの冒険者にとっては割りのいい依頼ですが、Aランク冒険者に対する報酬としてはあまりいい額とは言えません。

 それに依頼の内容も捕縛する場合は生け捕りと指定されています。

 手練れの怪盗108面相を相手に生け捕りはほぼ不可能、テスタロッサ殿下からの指示で、警備していた貴族に何があっても依頼は成功と成りますが、世間的には失敗です。

 Aランクの経歴に傷がつくかも知れませんよ?」


 なるほど、いろいろと考えてくれていたようですが、わたしの答えは変わりません!


「報酬はみなさんと同じで構いません。

 もともと傷が付くほど売れた名でも有りませんからね。

 わたしも依頼を受けます」

「わっ分かりました。

 ユウさんならギルドからの信頼も十分です」


 こうしてわたしは異世界で初めての日本人との邂逅に臨む事になったのです。


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