死闘とわたし
振り回されるグランアイズの腕を避けていると、攻撃が当たらない事にイラついたのか、身体を大きく沈めたと思うと身体を勢いよく振り、右回りに回転、尻尾を叩きつけて来ました。
【尾斬】では無く、普通の身体強化された打撃です。
まぁ普通のストーンドレイクは身体強化なんて出来ないのですが……
コレもわたしが戦った影響でしょうか?
身を屈めて尻尾の薙ぎ払いをやり過ごしたわたしは、グランアイズの左の膝裏に狙いを定めて水龍の戦斧を振りかぶります。
「【魔装:鱗戦斧】」
わたしの周りに漂っていた光の鱗の内の3分の1程が水龍の戦斧に殺到します。
あらかじめ小さく凝縮しておいた魔力を集める方が、1から魔力を凝縮するよりも精神的な負担が少なく、タメも短く済むのです。
膝裏の皮の薄い場所に、5層の魔力を纏った戦斧を叩きつけます。
水龍の戦斧は弾かれる事無くグランアイズの膝裏に傷を付ける事が出来ました。
「グガルルゥ!」
何度も有効打を与えたわたしを、獲物では無く、排除するべき敵であると認識したのでしょう。
魔力を凝縮し淡く光る爪が、ただわたしを殺す為だけに振るわれます。
魂を刈り取る死神の大鎌の如き爪の一薙ぎを後方に跳び、紙一重で躱すと爪の一振りの勢いのまま左に回転し、尾斬を繰り出して来ました。
速いですね。
まだ空中に居るわたしは、かわす事が出来ません。
狙ってやっているのならとんでも無く頭が良いです。
「【魔装:鱗盾】」
光の鱗が集り、わたしの前に輝く盾を形作ります。
光の盾は、膨大な魔力が凝縮された【尾斬】を受けると砕け散ってしまいました。
しかし【尾斬】もかなり勢いを殺され、身体強化を使い防御力を上げる事で何とか耐える事が出来ました。
ダメージはあまり有りませんが、大きく弾き飛ばされます。
これは体格差からくる物です。
流石にあれ程の質量のある攻撃をその場で受け止める事は出来ません。
「【光鱗】」
残り僅かになっていた【光鱗】を補充します。
精神的な負担が少ないとは言え、長時間は無理ですね。
修行中は半日くらいは特に気にせずに維持出来ましたが、戦闘で激しく動いたり【光鱗】を消費したりすると思ったよりも消耗が激しいです。
やはり短期決戦は避けられません。
そもそも、長期戦は不利です。
スタミナが違い過ぎます。
水龍の戦斧を双斧に持ち替えると、グランアイズの攻撃を避けながら懐に潜り込みます。
「【魔装:鱗双斧】」
両手の戦斧で、グランアイズの腹に裂傷を量産して行きます。
「グルルゥラァア!!!」
「くっ!」
大ダメージを受けたグランアイズが身体を捩り、わたしを振り払おうとします。
特に強化された攻撃では有りませんでしたが、グランアイズの巨体からの一撃は人間から見ればその全てが必殺技です。
夜天のローブと光鱗鎧のお陰で、耐えられますが、その衝撃はわたしの体力をガンガン削ります。
周囲の光鱗が集り、砕けてしまった光鱗鎧を修復して行きました。
わたしの体力も減って来ましたが、グランアイズの方もかなりのダメージを受けている様です。
「グルルゥ!!」
「今です!」
グランアイズが威嚇の咆哮を上げた時に見せた僅かな隙に、魔力を込めて影縫いの刃を投擲します。
影縫いの刃はグランアイズの身体を外れ、後ろの岩山に突き立ちました。
外れた訳では有りません。
わたしの狙いは、初めから背後の岩山に写っていたグランアイズの影です。
影を固定されたグランアイズは動きを止めます。
これも長くは持ちませんね。
カタカタと揺れる影縫いの刃を見て、そう判断したわたしは、すぐに次の攻撃に移りました。
「【魔装:鱗双斧】」
もう1度、双斧の連撃をグランアイズのボディに叩き込みます。
影縫いの刃の効果が消える直前、水龍の戦斧の1撃で大きな傷を作っていた左の膝裏に右手のシンデレラを叩き付け魔力を込めます。
シンデレラに込められた炎属性の魔力から生み出された炎がグランアイズの脚を焼きます。
わたしの炎属性の練度がイマイチである為、焼き払うと言う程の威力は有りませんが、それでも与えたダメージは小さくは有りません。
「グァ!!」
「あだだだ!」
グランアイズが魔力を纏った爪を地面に思いっきり叩きつけました。
砕けた地面は、無数の石飛礫となりわたしのなけなしの体力を削って行きます。
グランアイズは全身から血を流し、満身創痍と言った様子です。
対するわたしも体力、魔力共に殆ど残っていません。
急ごしらえの【光鱗】の負担はわたしの予想より重かった様です。
「グルルゥラァア!!!!」
グランアイズの右の爪に魔力が凝縮されて行きます。
輝きが今までの物と違います。
グランアイズの残りの魔力の大半をつぎ込んだのでしょう。
まさに全力の1撃を放とうとしている様です。
「いいでしょう、受けて立ちます!」
わたしも残りの魔力を水龍の戦斧に集めます。
周囲の光鱗だけでなく、光鱗鎧も分解して全魔力を注ぎ込みます。
恐らくこの攻撃を放つとわたしは魔力切れで倒れるでしょう。
後の事はオリオンに任せます。
わたしは上空を飛んで様子を窺っているオリオンの姿をチラリと見ると、グランアイズに向けて水龍の戦斧を構えます。
魔力は今までで最高の11層です。
「さぁ、これが最後の「グルルゥ!!」です!」
最後の最後まで…………許しません!




