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乙類一位は確かに変わり者だった

 なにやら結構な数の方に読んでいただいているようで、ありがとうございます。お楽しみいただけているでしょうか?

 折角なので、とりあえず急遽新章の頭だけ投稿しておきます。


 遅筆マン&仕事忙しいのでちょっとお待たせしますがご贔屓いただけると幸い。

 今後ともよろしくお願いします。

「ねえ、アニキ、あれテレビ局の人かな」

「どうかな?」


 リビングの窓のカーテン越しに外を見ると、確かに二人ほど家の近くの塀の傍に立っているのが見えた。

 どっちかというと、雑誌のとかそっちの人な感じがする。何となくだけど。

 テレビ局はカメラマンとかがいる関係か、装備が大きいということがここしばらくで分かった。


「昨日もいたわよ、兄さん」


 後ろからのぞき込む朱音が教えてくれる


「はあ……そうか」


 また魔討士の協会に連絡しておかないといけないな。


「勿体ないなぁ、アニキ。取材受ければいいのに。テレビに出れば可愛いアイドルとか美人のアナウンサーさんとかと知り合いになれるかもよ」


 そう言ってわざとらしく絵麻が言葉を切る


「ああ!でもアニキには!檜村さんがいるんだった!」

「絵麻……もういい加減にしなって」


 朱音が絵麻を窘めてくれるけど。でも檜村さんとのキスの瞬間を撮ったのは朱音だったわけで、写真を後で見せられた。

 二人でシェアしてあちこちにバックアップを取っている……らしい。

 

 銀座のダンジョン攻略から2週間ほどが経った。

 テレビ局とか雑誌とかから取材の申し込みとかはあったんだけど、とりあえず断った。魔討士の公式アプリでインタビューは配信されたけど。


 しばらくは記者とかカメラマンらしき人が家の周りをうろうろしていたけど、魔討士の協会が話を通してくれたようでしばらくしたらいなくなった。でもやっぱり定期的に戻ってくる。

 高校生を追いかけまわすのは止めてほしい。


 別にテレビ嫌いとかではないけど……どうもテレビで話している自分が想像できなかったってのはある。伊勢田さんのネット配信は出る約束をしているけど。

 絵麻は勿体ない、折角だから出ればいいのに、と繰り返し言うけど。まあこの辺は性格の違いだな。


 あと、自分で取材とか受けてみて分かったんだけど……ああいうのは結構疲れる。

 俳優さんとかスポーツ選手とかは大変だろうな―と思った。

 


 その人が現れたのは、いつも通り代々木の訓練施設の道場で訓練をしているときだった。

 師匠との一対一が終わって一休みしていた時。


「ねえ、君。僕と一つ手合わせ願えないかな?」


 ちょっと間延びしたような口調で声がかかった。


 藍色の作務衣を着ている。ここではジャージ姿か、もしくは袴姿が多いのでかなり珍しい恰好だ。

 何となく狐を思わせる吊り目の顔には人懐っこい笑顔が浮かんでいた。

 アバウトに伸ばした黒髪を後ろで一つ結びにしていて、180センチ程ありそうな長身だけど、体はけっこうひょろりとしてる。

 片手には、長い訓練用の刀を肩に担ぐように持っていた。


 ……流石に誰だかは僕にも分かった


「宗片十四郎さん?」

「ああ、僕のこと知ってるんだ……君、つまんないことを覚えているねー」


 先日伊勢田さんに言われたからってのもあるけど。

 さすがにテレビやネットで何度も見る程度の有名人だ。さすがに僕でも知ってる。

 どっちかというと、なんでここにいるんだこの人って感じだけど。


「だけど、一刀斎と呼んでくれる方が僕は好みだねー、どうせ呼ぶならそう呼んでくれない?」


 あいかわらずなにやら間延びした口調で宗片さんが続ける。

 宗片``一刀斎``十四郎。専業魔討士で、なんでも国家公務員に近いらしい。

 各地でダンジョンの討伐を請け負っているはずだ。確か22歳だったと思うけど、実物にはもっと若く見える。

 制服着て僕の学校にいてもおかしくない感じだ。

 

「ところでねー、真面目に忠告するけどさ……人の顔とかどうでもいいことに脳のメモリを使うのは無駄だよー。剣士たる者、脳のメモリの98%は刀の為に使うべきだ。相手がどこのだれかなんてどうでもいいでしょーよ」


 しかし……空気の抜けた喋り方で、なんというかすごみは全く感じない……本当にこの人、国内一位なのかな?

 体格も上背はあるけど、そこまで鍛え上げて頑丈って感じはしない。 


「君のことは伊勢田君の動画で見たんだ。なかなかいいじゃないか、乙類のライジングスター、風使い。実物もまたなかなかいいね。雰囲気あるよ」


 僕の周りをまわる様に歩きながら宗片さんが言う。

 畳の周りに人が集まってきた。ひそひそ話をしている声も聞こえる。そりゃあ国内最強がいるんだから当然かもしれないけど。


「さあ、構えて構えて、もちろん断らないよねぇ」


 やんわりしているけど、有無を言わせずって口調で宗片さんが言う。

 師匠がどうするって顔で僕を見た。


「せっかくだから……是非お手合わせください」


 国内最強の乙類との立ち合いだ。お願いしてもやれる機会があるか分からない。

 勝てる勝てないは置いておいても、最強の太刀筋ってのはどんなものか見てみたい。


「かたっ苦しいなぁ……かかってこい!この野郎!くらい言っていいよぉ。戦いなんだからさ」


 ……乙類一位にそれを言える奴がいたら見てみたいぞ。

 宗方さんが離れていって、開始線に立って長い刀を横に寝かすように構える。

 身長より長い。多分2メートル近くある。あんなの振りまわせるんだろうか。

 


「始め!」


 師匠の開始の合図と同時に、切っ先が無造作に伸びて来た。

 刀で突きを払う。


 踏み込もうとしたら、宗方さんが滑るような動きで一歩下がった。

 遠い。鎮定を使っているなら、破矢風を飛ばして強引に踏み込んでもいいんだけど……ここでは無理だ。


 師匠と相対した時のような圧力がないのは逆に拍子抜けだけど、落ち着いて考えをまとめられるのは助かる。

 どの道、この距離じゃ届かない。まずはこっちから行くか。

 相手ははるかに格上。挑戦者の立場なのに待ちをやっていてもしょうがない。

 息を吸って踵を浮かせる。


 サイドステップを踏んで回り込もうとするけど。

 踏み込みに合わせるように、横薙ぎにされた長い刃が軌道上に置かれていた。とっさに刀を立てて受け止めて一歩下がる。

 刀を振り抜いた宗片さんがもとの立ち姿勢に戻った。


「どうしたんだい?楽しもう、時間はまだあるよ」


 宗片さんが長い刀を切っ先を向けるように掲げて構えた。確か師匠の霞の構えと言うのに似ている。

 突いてくるか。なら。


 突き出された切っ先を今度は強く横に払いのけた。長い刀に振られて宗片さんの体が傾ぐ。

 背中が見えた。

 チャンス!と思ったけど。

 一歩踏み込んだとき目の前に切っ先があった。




 あと一話、明日には投稿します。プロットは大体決めているので、早めに書きたいと思います。

 感想、評価等、お待ちしています。

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