戦いの終わり、その後・上
カマキリのライフコアを拾った。
明らかに今までとは違う蟲の存在とか色々とあったけど……今はとりあえず勝ったことを喜ぶか。
難しいことは後で木次谷さん辺りが考えてくれるだろう。
「大丈夫?」
後ろを見ると、ライアンとケーシーが唖然としたって感じでこっちを見ていた。
「いまのが日本の古武道なのか……動画で見たのより遥かにすごかった。正直言ってランクが並んだから同等とか少し思ってたんだが……到底かなわないな」
「カタオカ、あなたの師匠は貴方よりも強いの?」
「そりゃもう」
刀での切り合いに限定するならまだまだ師匠には及ばないと思う。
鎮定を使っていいなら流石に勝てそうだけど。
「是非、紹介してほしいわ。その人の動作解析をすればきっとこのスーツにフィードバックできる」
ケーシーが言う。
師匠はどう思うだろうか……嫌がる気もするけど、案外喜ぶかもしれない。自分の技を継いでほしくて師範をやってるって話だし。
それに意外と最新式のデバイスとかは好きらしいし。
「まあ、それはそれとして帰ろう」
ダンジョンの赤い光が明滅して岩壁に亀裂が入り始めていた。
撤退した方がよさそうだ。
「肩を貸す?」
「いや、大丈夫だ。流石にそれは情けない」
ライアンが痛そうに顔をゆがめたけど、強がるように笑って首を振った。この辺はタフだな。
案山子が彼を守るように周りを飛んだ。
「ところで、カタオカ……あいつは俺との戦いでもあの獣がどうとか言ってたんだが、何のことか分かるか?」
「……さあ、分からない」
獣っていうのは多分シューフェン達のことを言ってたんだろうな。
これは、ライアン達にはまだ知られるとまずいことな気がする……余計なことを言ってくれたな。
◆
元来た道を戻って地上に戻ると明るい光が目に飛び込んできた。
いつのまにか空はだいぶ暗くなっていて、周りには照明がいくつか置かれてこっちを照らしている。
同時に大歓声と拍手が周りから響いた。
「戻ってきた!」
「勝ったのかよ!すげえ!」
「さすが上位帯!」
「お疲れ様です、片岡五位!檜村4位」
「お怪我はありませんか?」
警官と魔討士の人たちが次々と声をかけてきた。
後ろでダンジョンの入り口が崩れて行って、跡形も無く消えて元の芝生に戻る。
とりあえず終わったか。
「ライアン、怪我はないか?」
スミスが心配そうに駆け寄ってきてライアンの手を取った。
「ありがとう、大丈夫だ……ただ、案山子の殆どを失ってしまった」
「問題ないさ、その辺をどうにかするのは私の仕事だ。とにかく君らが無事でよかった」
スミスがライアンとハグしてこっちを見た。
「カタオカ、本当に感謝する。ありがとう。支払いの件は近日中に連絡するから、少し待ってくれ」
「いや……別にそれはいいんですけどね」
「そう言うわけにはいかない。これはビジネス、契約だ。君は契約を果たしてくれた。私も契約を必ず守る」
スミスが生真面目に言う。
10万ドルなんて貰っても使い道が全く思いつかないぞ。
「グラシアス!!カタオカ!」
スミスと話していたら横から大きな声がして、マリーサが抱き着いてきた。
ぎゅっと抱きしめられて、服越しに暖かい体温が伝わってくる。
ちょっと強めの香水の香りがした。
「案山子で映像を見ていたわ……マジでアナタ格好イイのね!」
「ありがとう……でもちょっと離れてくれる?」
マリーサの顔が間近に近づいて長い髪が触れる……横を見なくても檜村さんの視線を感じる。
色々と気まずいぞ。
「えー、なんで?じゃあ祝福のキスしていい?」
「それはダメ」
何となく申し訳ない気がするけど、とりあえずマリーサを引き剥がした。
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本作と構成が似た男女バディもの……まあキャラ構成はだいぶ違いますが。
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