表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

14.ユニーク魔術


「まあ、あなたはとても変わった魔力を持っているのね。質は……、そうね、これなら魔術を使えるでしょう」

 バベット先生の言葉に、わたしは安堵のあまりその場に座り込みそうになった。


 よ、よかった。わたし、魔力があった……。それに、魔術も使えるんだ。よかった!


「変わった魔力?」

 なぜかガブリエル様がバベット先生に質問している。

「ええ、五属性のどれにも属さない魔力だわ。……ひょっとしたら、あなたユニーク魔術を使えるんじゃないかしら?」

 ワッと前にも増して教室がうるさくなった。「ユニーク魔術だって!?」「ミレー家やユニーク魔術の使い手までいたんじゃ、魔術師の塔に入るのはもう無理だな……」等々。

 いや、まだわたしがユニーク魔術を使えると決まったわけじゃないんですけど。


 でも、もしバベット先生の言うとおりならすごい事だ。ユニーク魔術の使い手なら、間違いなく魔術師の塔に入れるだろう。

 ユニーク魔術とは、その名のとおり、唯一の魔術だ。使用者本人にしか使えない、世界にたった一つの魔術を指す。


 この世に魔術が編み出されて数千年。大陸、王国ごとに魔術は独自の発展を遂げてきた。魔術師年鑑に載っているだけでも魔術師の数は数万を下らないが、その中でユニーク魔術を使える魔術師となると、十人もいない。


 わたしが、そのユニーク魔術の使い手!?

 保有魔力量だって多分それほどでもないし、家系的に見ても先祖に大した魔術師はいない。

 とすると……、やはりわたしが転生者だからだろうか。だからマティルドの魔力が変質したんだろうか。


「マティルド嬢!」

 いきなりガブリエル様の顔が間近に迫り、わたしは仰け反った。

「な、なんですのガブリエル様」

「君はユニーク魔術の使い手だったのか!? どんな魔術を使えるんだ!? 教えてくれ……、いや、見せてくれないか! 頼む!」


 そういえばガブリエル様は魔術オタクだった。すごい食いつきっぷりに思わず後ずさる。

「さあ、皆さんも早く前に出て! 拒否するなら、この授業を受けることは認めませんよ!」

 バベット先生の言葉に、皆しぶしぶ前に出て並びはじめた。


「マティルド嬢、いったいどんな魔術を……」

「いや、だから何の魔術も使えないんです。自分の魔力属性を見ていただいたのも、これが初めてですし」

「そうなのか!」

 なぜかガブリエル様はより一層興奮した様子だ。


「まだ本人も知らないユニーク魔術……。それを目にすることができるなんて! 学院に入ってよかった!」

 だから、まだわたしがユニーク魔術を使えると決まったわけでは……。ガブリエル様の期待に満ちた瞳に、わたしはちょっと不安になった。やっぱりユニーク魔術は使えませんでした! なんてことになったら、わたしよりガブリエル様のほうがガッカリしそう。


「初めて魔術を使うというなら、そうだな……、僕が簡単な魔術を使ってみせるから、それを参考にしてみてくれ」

 いや、魔術の使い方ならバベット先生に教わります。と言いたかったが、ガブリエル様がわたしの横にぴったり付いて離れない。

「足を肩幅に開いて立って。背筋を伸ばして、力を抜いて」

「はあ……」

「うん、いいぞ。体内の魔力を練り上げて、使いたい魔術をイメージするんだ。例えば……『炎』!」

 簡単な詠唱と同時に、ガブリエル様の手の平にポッと小さな炎が浮かんだ。


「まあ」

 すごい。一瞬で炎を生み出し、しかも難なくそれをコントロールしている。やっぱりガブリエル様って魔術の天才なんだな。

「君もやってみろ」

 無理です。


 でもまあ、うん……、魔力を練り上げる、か。マンガでもそんなシーンがあったな。体内を巡る魔力を感じ、その流れを掴んで一か所にあつめて……。こんな感じかな。


「何でもいいから使いたい魔術をイメージするんだ。それを言語化し、魔力を乗せる。マティルド嬢は何をしたい? 竜を呼ぶなんてどうだ? いや、一角獣でもいいかも……」

 何も呼びたくなんてないよ。ていうか、それは魔術ではなく『召喚』というスキルじゃなきゃできないんでは。


 気づけば、魔力鑑定を受け終わった生徒たちがこっちをじっと見ている。あああ、もうここから逃げ出したい。

「創造系の魔術もいいんじゃないか? いっそダンジョンを創ってみるとか……」

 無茶言うな!


 ガブリエル様はぐいぐい来るし、クラスの皆の視線は痛いしで、わたしはもう半泣き状態だった。

 しかも、中途半端に練り上げた魔力が、体の中で出口を探して暴れているようで気持ちが悪い。

 魔術を使えば、この気持ち悪さはなくなるんだろうか。しかし、そもそも魔術についてろくな知識も持っていないのに、いきなりユニーク魔術を使えと言われても、何をどうすればいいのか。


 ガブリエル様の『炎』。あれは声に魔力が乗っていた。あんな風にすれば、魔術を発動させられるんだろうか。使いたい魔術を言語化し、魔力を乗せて……。


 ああ、なんだか頭もお腹も痛くなってきた。もう嫌だ、逃げたい。ここから逃げ出したい!


「『逃走』!」


 訳もわからず、わたしは叫んだ。

 その瞬間、魔力が凄まじい勢いで体内を駆け巡り、パン! と音を立てて弾けた。ぐらりと視界が揺れる。


「マティルド嬢!?」

「まあ、大変」

 ちっとも大変でなさそうな、どこか面白がっているようなバベット先生の声を最後に、わたしは気を失ってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ