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第36話 黒雷剣の秘密

 魔王ヤクモと狂戦士ジョルジュが戦闘を開始した頃、ベルンハイム城では玉座に腰掛けたバルバロッサが第一騎士団長ハーディスと会話をしていた。


 「こ、〈黒雷剣・ヴァラク〉を持ち出させたというのですか!?」

 「ああ、インヴェルノへ向かったジョルジュへ持たせてある」

 「そうですか……それではインヴェルノは確実に滅亡するでしょう」

 「ローザのやつが我に対して憎しみを持っているのはわかっておる、今回神の転移によって飛ばされてしまった時点で確実に処分しなければならない」

 「……それがインヴェルノごと、でもですか?」

 「ああ、その通りだ。神に繋がる可能性があるものは確実に処分しなければならない。どんな犠牲を払ってでもだ」


 バルバロッサの強い意志を垣間見たハーディスは、こうなったら誰がどう言おうが止められないことを理解している。

 溜息を一つついた後に、バルバロッサに対して平伏しながらこう言った。


 「バルバロッサ様の神に対する強固な意志は理解しております。それでは後始末は我が第一騎士団にお任せ頂けますでしょうか。ことを成した後の〈黒雷剣・ヴァラク〉の処理、インヴェルノの生き残りの救済、万が一仕損じることもあるやもしれません。やれることはたくさんございますので……」

 「……ふん、勝手にするがよいわ、貴様が今述べたように万が一仕損じることだけはあるまい、そのためにももう一手保険で仕込んであるからな」

 「……一体それはどんな一手なんでしょうか?」

 「わからぬか?何故狂戦士と化したジョルジュがピンポイントでインヴェルノにいるローザを追撃できていると思う?」

 「……そう言われてみれば変ですね…………まさか!?」

 「そのまさかだ。ローザには〈邪神の因子〉を仕込んだものを持たせてある」

 「〈邪神の因子〉ですと!?そうか、だから〈黒雷剣・ヴァラク〉を……」

 「ああ、元々〈黒雷剣・ヴァラク〉は古代の時代の遺物、〈邪神〉を葬るために作られた兵器だ。所有者は〈邪神〉を滅さなければならないという激しい衝動が起こる」

 「そこで、目標であるローザに〈邪神の因子〉を持たせ、狂戦士たるジョルジュに〈黒雷剣・ヴァラク〉を持たせれば……」

 「常にローザを突け狙うだけの狂戦士の出来上がりというわけだな」


 バルバロッサはそう言いながらニヤリと笑みを浮かべた。

 しかし、ハーディスはその正反対に顔面蒼白の表情を浮かべている。


 「しかし、〈邪神の因子〉が覚醒してしまえば……よ、依代は!?依代はどうされたんですか?」

 「依代はアランドラのスタンピードの時にちょうど良い個体が入手できたのでそれを当てがった。瀕死の魔族をな、これで〈黒雷剣・ヴァラク〉が失敗したとしても、〈邪神の因子〉が発動し、どちらにせよインヴェルノは滅ぶという算段だ」

 「そうなったらこの国自体に危機が及ぶのでは!?」

 「その場合は我が直々に出向いて全てを滅ぼしてしまうまでよ」


 あくまで強気のバルバロッサと、すっかりと意気消沈してしまったハーディス。

 確かにバルバロッサであれば、どんな災厄が国を襲ったとしても恐らく退けてしまうだろう。

 だが、そこには国民たちの多大な犠牲が付きまとう。

 たった今バルバロッサが述べたような事態が起こればそれこそ取り返しがつかない程の甚大な被害が発生するだろう。


 (……一体、どうすればよいのだ)


 ハーディスの心に重く暗い感情が圧し掛かる。


 (いっそのこと、神の力で全てを鎮圧できれば……)


 ベルンハイム第一騎士団長としてはあってはならないことまで考えてしまう。

 それほど、バルバロッサが仕込んだ一手は常軌を逸しているということだった。




 ◆◆◆◆




 その頃、【狐今亭】大座敷では……



 玉藻のピンチに寸でのところで駆けつけた俺は、黒い剣を持つ謎の剣士と相対している。

 ……ていうか、こいつって確かアランドラで遭遇したベルンハイムの騎士だよな?


 確か第二騎士団長のジョルジュだったか?

 あの時は凛とした感じの頼りがいのありそうな騎士だったが、今のこいつは様子が違い過ぎる。

 虚ろな表情からは全く覇気を感じられず、まるで別人のような印象を受ける。


 地下牢にいた俺たちのところへ息を切らせながらローザが助けを求めにきたのがついさっきだ。

 大至急で牢を破り駆けつけてみれば、玉藻がやられる寸前だった。


 未来の仲間候補を助けられたのは良いが、状況が不明瞭過ぎる。

 何でこんなところにベルンハイムの騎士団長がいるのか、またこの変わりようはどういうことなのか……


 「シオン、一体どういうことだと思う?」

 『うーん、ちょっと心当たりがあるんですけど、一回〈鑑定〉してもらえませんか?』


 シオンの提案でジョルジュに向かって〈鑑定〉を使用する。


 名称  : ジョルジュ〈狂化〉〈黒雷剣・ヴァラク〉

 クラス : 狂戦士

 ランク : B

 Lv  : 46

 HP  : 2421/2421

 MP  : 1236/1236

 攻撃力 : 3268

 防御力 : 2609

 魔法力 : 1030

 素早さ : 2436

 スキル : 剣術〈Lv8〉

       黒雷

       憤怒


 ジョルジュのステータスを見て驚きのあまり言葉を失った。

 まず、ステータスが異様に高い、はっきり言って俺やラセツと互角といっても差し支えないだろう。

 進化をしていない玉藻では叶わないはずだ。

 それに、名称欄に書かれている〈狂化〉と〈黒雷剣・ヴァラク〉の文字。

 〈黒雷剣・ヴァラク〉の方は手に持っている黒い剣のことか、確か以前はあんな剣持っていなかったはずだ。

 〈黒雷剣・ヴァラク〉の名前を俺は知っている。

 『NHO』の時から有名な伝説の武器の一つだ。

 まさかこんなところでお目にかかれるなんてな。


 あの変わりようは〈狂化〉を付与されているからに違いない。

 スキル欄に〈狂化〉が無いということは、状態異常扱いということだ。

 これは誰かに〈狂化〉状態にされたということだろう。まあ粗方バルバロッサの仕業だろうが。



 それより、俺が一番驚いたのは、所有スキル欄の一番下である。


 そこには、あるはずの無いスキルが表示されていた。


 ゴブリンキングが神から与えられ、恐ろしい効果を発揮したスキル〈暴食〉。

 恐らくそのスキルと同系統と思われる特殊スキル。



 〈憤怒〉のスキルを目の前のジョルジュが所有しているという事実に、俺は愕然とした。


 

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