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第28話 美獣は獰猛に笑う

この回で二十万文字突破となります!


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これからも頑張って更新しますのでよろしくお願いします!!!

 「……はあ、やっと山を抜けたな。俺の記憶が確かならこのすぐ近くに村があるはずだ」


 俺とローザはやっとの思いでブレンダ山を抜け、歩いて1時間程度の場所にあるはずの村を目指す。


 確か村の名前は〈イスト〉とかいったか、取り立てて何もない村だったような……


 「大丈夫か?朝からここまでぶっ通しで歩ているんだ、少し休憩するか?」

 「いえ、全然大丈夫です。ヤクモさんの仲間も探さなければいけないし、早く先へ進みましょう」


 ローザは次元魔法が使える以外は普通の少女と何ら変わらない。

 その少女が長距離を歩きっ放しだ。

 しかも、途中では幾度となく魔物の襲撃を受けている。

 肉体的にも精神的にも疲労しているだろうに、ローザは笑顔を浮かべながら気丈に振舞う。


 「ああ……わかった、無理はするなよな」


 ローザが頑張ってるんだ。

 俺に出来ることはその頑張りを見守りつつ、サポートすることだけだろう。


 ローザはバルバロッサに両親を幽閉されていると言っていた。

 

 いつかは、その両親も助け出しバルバロッサの呪縛から逃がしてやりたい。

 そんなことも考えながら〈イスト〉の村へ向かう。



 ……しばらく進むと遠くに小さな村が見えてきた。


 『NHО』の記憶の通りの景色が見える。


 ……素朴でのどかな風景、……ああ確か村の中央には大きな風車があったな。


 ……そして村の入り口に構えられた鳥居。


 「……鳥居?」


 そんなもんあったっけ?

 

 〈イスト〉の村の入り口には、神社とかでよく見かけるような立派な朱色の鳥居が鎮座しているのだ。


 確かそんなものは無かったはずだ……

 いや、記憶違いか?

 思い返せば〈イスト〉の村は『NHО』の中でもそれほど重要な場所ではなく、特にイベントも起こらない。


 〈ブレンダ山〉へ向かう際に何度か立ち寄ったことはあるのだが、正直そこまで気に掛けたことなど無かった。


 『NHО』の世界には確かに神社やお寺は存在する。

 だが、それは九大英雄の〈極忍〉ジンオウが治める【東都・カムイ】での話だ。


 「……いや、ああ思い出せない!」


 結論から言えば自分の中でも確信を得ることは出来なかった。


 とりあえず、ローザと共に〈イスト〉の村へ向かう。

 

 鳥居に関しては、一応警戒対象として頭に入れておく。

 もちろんローザの方にも共有済みだ。


 〈イスト〉の村の入り口に到着した。


 「いや、近くで見れば見るほど怪しいな……」


 近付いてみて改めて確信する。

 こんなものは『NHO』の〈イスト〉の村には存在しなかった。


 「何か凄いアンバランスな感じですね……」

 「やっぱりローザもわかるか、この鳥居はいったに何なんだ?」

 「これは鳥居っていうんですか?一体何が目的で……」


 鳥居という存在を知らないローザでさえ怪しんでいる。


 何というか、洋風ののどかな田舎の村の入り口にドカンと和風の朱色の造形物という光景に、違和感しか感じられないのだ。


 「鳥居は俺のいた国ではたまに見ることがあるもので、神様が奉ってある場所の入り口にあってな。神様と人間の住む世界を区切る結界のような意味合いがある神聖なものなんだ」

 「へえ……そんな意味があるものなんですね」


 ちなみに村人たちは普通に鳥居を潜り抜けて村に出入りしている。

 見る限りは全く村人たちに影響を与えていないようだ。

 村人たちも鳥居に対して違和感などは特に感じてはいないようで、普段の暮らしに溶け込んでしまっているように見える。


 「シオン……この鳥居はどう見る?」

 『さあ?お隣の次元魔法得意少女さんに聞けば良いんじゃないですか?』

 「……また拗ねてる?」


 シオンはどうやら拗ねているようだ。

 というのも、最近ローザのせいで露骨に出番が減っていることに気が付いてしまったらしく、現在はわかりやすくへそを曲げてしまっている。


 「はあ……ローザは何か感じるか?」

 「いいえ、今のところは全く何の気配も感じません」


 やはり思い過ごしなのか?

 俺もローザもこの違和感バリバリの鳥居に関して、怪しさこそ感じるものの、その正体が一体何なのかまでは突き止めることが出来なかった。


 「かといって潜る気は起きないんだよなぁ……」


 今はローザと共に、鳥居の目の前まで来ている。

 鳥居の脇で佇んでいる俺たちを村人たちが横目で見ながら鳥居を潜って出入りしている。


 「はあ、どうしたもんかな」


 俺は鳥居の柱にぺたりと触れてみた……


 「……!?今、何らかの魔力の揺らぎを感じました!?」

 「何だって!?俺は全く感じなかったぞ!」


 ローザが一瞬、魔力を感知したらしい。


 やはり、何者かが目的を持って設置したものなのか?

 だとしたら一体誰が、何のためにこんなものを?


 怪しげな鳥居に不用意に触れてしまったがために、何らかの魔力を起動させてしまった。

 俺は周囲を警戒するが、現時点で何らかの問題が起きそうな気配はない。


 「くそっ、一体何なんだこれは?」


 目の前の鳥居の意味が全くわからず俺は焦燥感を隠すことが出来なかった。


 ◆◆◆◆


 場所は変わって、〈イスト〉から5キロ程離れた場所にとある宿場町がある。


 その名も〈インヴェルノ〉。


 のどかな〈イスト〉とは違い、常に賑やかで多くの観光客が訪れている。

 ベルンハイム王国の中でも一番の歓楽街と言われるこの街では、様々な人種、人間があらゆる悲喜こもごもを繰り広げ続けており、清濁併せのむ街として有名だ。


 その〈インヴェルノ〉の一角にある宿屋での出来事……


 そこでは〈インヴェルノ〉の中でも特に卑しいならず者たちが集まり、闇賭博が開催されていた。


 〈インヴェルノ〉にももちろんカジノなどは存在しているが、それはあくまで表の人間のために用意されているものだ。

 〈インヴェルノ〉の裏の部分、闇に生きる人種たちにはそういった場所は利用できない。


 そのため、この宿屋のような場所でそれらの人種を受け入れ、闇賭博を開いているのだ。


 今日もたくさんのならず者たちが集まり、様々な賭け事が開催されているため、大変な喧噪を繰り広げている。


 そして、それらが開催されている奥の控室では、闇賭博を仕切っている元締めが鎮座している。


 その元締めは女性だった。

 黒い長髪の女性は落ち着いた佇まいで闇賭博の様子を見ている。

 今日も特に問題は起こっていない。


 このまま行けばまた大儲け間違いなしだろう。

 このならず者たちは、この女性から見れば自らに利益をもたらす働き蜂にしか見えない。

 何故、普段から貧しい思いをしているものたちがこぞって、勝てもしないギャンブルに手を出すのか、自身は全く理解出来なかった。

 

 「まあええわ、うちは相変わらず大儲けや」


 女性は一人で呟きながらニッコリと微笑んでいたが、次の瞬間その表情は一変する。


 「……!?結界に反応が……」


 その瞬間、女性は何かを感知した。


 「これは〈イスト〉に仕掛けた結界やね……しかも、ものごっつい強力なやつが引っ掛かりおったわぁ」


 女性は商売柄、人一倍用心深かった。

 そのため、周辺の様子を探るために自らのスキルで感知用の結界を作成していた。


 〈イスト〉に存在していた鳥居はその女性のスキルによる結界の一つだったのだ。


 「はあ、嫌やわぁ……せっかく良い感じに商売できてたのに……」


 女性はもめ事を嫌う。

 自分の利益は第一に、自分の障害となりそうなものは徹底的に排除する。


 「まあ、こっちの邪魔になるんやったら……」


 女性は切れ長の目を更に細めながら獰猛に微笑む。

 その女性が着ている服装は、〈インヴェルノ〉には似付かわしくないような、和装の着物だった。

 艶やかな衣装を翻し、自らの部屋から出ていく女性。

 その女性の腰の辺りには、ふさふさとした尻尾がゆらゆらと揺れていた。



 「とことん、いてもうたろかいな」



 ヤクモとその女性と遭遇する日は近い……

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