第12話 魔王ヤクモ VS 魔導神官 ザルガデウス
すいません、少し更新遅れました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
ラセツとアシュタリテ、オボロとディクルーゼが戦闘に入った、ちょうどその頃――
俺は、ザルガデウスと対峙していた。
「お前がこの騒動の黒幕だな?他の二人とは違ってただの魔人じゃないんだろう?一体何者だ?」
「ほお、人間の分際でよくわかったな。確かに私はアシュタリテともディクルーゼとも違う、私こそは、偉大なる魔王様直属の四天王の一人、魔導神官 ザルガデウス様よ!」
……魔王直属の四天王だと?
俺で言う、ラセツやコダマたちと同じような立場ってことか。
なるほど、それなら話は早いな、こいつをさくっと倒してこいつらの魔王って奴に関して、色々と教えてもらおう。
「なるほどな、じゃあお前からは魔王の情報がたっぷり搾り取れるってことだな。この騒動のツケと合わせてたっぷりと落とし前をつけさせてもらおうか」
「ふん!貴様ら人間如きに何ができるか!さっさと貴様を倒して、アランドラの街の人間共を皆殺しにしてくれるわ!」
ザルガデウスは杖を構えて何かの呪文の詠唱を始める。
杖の先端に何からの魔力が集中し始めた。
「さてと……〈聖魔合一〉〈魔王の盾〉〈魔王剣〉!」
俺はスキルを使用し、ザルガデウスの攻撃に対する準備を整える。
「……くらえ! 〈暗黒恒星弾〉!」
ザルガデウスの杖より黒い球体が無数に発生し、高速でこちらに飛来してくる。
俺は〈魔王の盾〉を構え、黒い球体を防ぐ。
凄まじい速度で突っ込んで来る黒い球体を何とか〈魔王の盾〉で防御するが、多数の球体が続けざまに飛んでくるため、全く動きが取れなくなってしまった。
(……このままじゃジリ貧だな。状況を打開するにはどうすればいいのか?)
俺は、考えた末に一つのスキルを使用する。
「……よし! 〈魔影鎖縛〉」
盾を構えたまま、〈魔影鎖縛〉を発動する。
影の中から漆黒の鎖が飛び出し、ザルガデウスへ向かう。
「ふん!甘いわぁ!」
ザルガデウスが杖を掲げると、周囲に障壁が形成された。
この障壁で〈魔影鎖縛〉が防がれてしまった。
……しかし同時に〈暗黒恒星弾〉の弾幕が止み、大きな隙ができる。
「計算通りだなぁ! 〈ダークフレイム〉」
そのまま〈ダークフレイム〉を放つと同時に、ザルガデウスへ向かって全力でダッシュする。
〈ダークフレイム〉は引き続き、展開されている障壁を取り巻き、更に強く燃え上がるが、障壁を突破することはできなかった。
「ふははは! 〈ダークフレイム〉如きで私の障壁を突破することはできんぞ!」
ザルガデウスが高笑いを上げるが……
「そんなことは……知ってるんだよぉ!!!」
そこへ、俺が急接近し、〈魔王剣〉を使用したまま剣を振りかぶる。
燃え盛る〈ダークフレイム〉の漆黒の炎が目隠しとなり、俺の接近に気付かなかったザルガデウスは驚嘆の表情を浮かべている。
「くらえええ! 〈魔王剣〉!!!」
そのまま、〈魔王剣〉を目の前の障壁に全力で叩きつける。
「ぐぬうう!!!負けるものかぁ!!!」
ザルガデウスは障壁を強化しようと、杖を掲げ魔力を集中させるが――
障壁はパリンと音をたてながら無残にも、跡形も無く割れてしまった。
「ま、まさか!私の障壁がぁ!」
「意外ともろかったよなぁ! 〈ダークアロー〉!」
その隙を逃さないように、直ぐに〈ダークアロー〉を放つ。
俺の狙い通りに的確にザルガデウスの右肩を撃ち抜いた。
「うぐ……貴様ぁ! 〈ダークスフィア〉!」
「負けるかよぉ! 〈ダークスフィア〉!」
怒りに任せて〈ダークスフィア〉を放とうと集中するザルガデウスを見て、俺もすかさず〈ダークスフィア〉で返す。
二人からほぼ同時に放たれた二つの漆黒の球体は、お互いにぶつかった瞬間、大爆発を起こす。
「がああ!なぜ私の至高の魔法があんな人間如きと互角なのだぁぁ!!!」
「知らねえよ! 〈魔王剣〉!!」
爆発によって引き起こされた粉塵をかき分けながら突っ込んでいき、抜群のタイミングで〈魔王剣〉を振り下ろし――
ザルガデウスの左腕が宙を舞った。
「ぐおおお! かくなるうえは! 〈召喚・ダークネスドラゴン〉!」
片腕を失った状態で、爆発的な魔力を発し出したザルガデウスの頭上に巨大な魔法陣が形成されていくった。
完成した魔法陣の中から、禍々しい姿をした巨大な黒龍が這い出てくる。
「これが、魔王様より授かりし、我が最終兵器だ! さあ行け! あいつを殺してしまえ!」
「グルルルァァァァ!!!!」
ザルガデウスに命令を受けた瞬間、こちらに殺意をたっぷり込めた咆哮を吐き出して来る。
「あいつ……あんなこともできたのか、さてと……シオン、そろそろ準備はいいか?」
『……はい! 何とかいけると思います! いつでもどーぞ!』
「よし、それじゃあ合図をしたら始めてくれ!」
シオンと作戦を打ち合わせしている最中に、ドラゴンが突っ込んでくる。
「……っとと〈魔王の盾〉!」
咄嗟に〈魔王の盾〉を出しドラゴンの攻撃を防ぐ。
続けざまに牙や爪で連続で攻撃してくるが、全て剣と盾で防げるレベルだった。
「……こいつ、見た目ほど強くはないな……これなら! 〈魔影鎖縛〉!」
影から鎖を出現させ、ドラゴンを拘束する。
「……今だ、シオン!」
『はいな! 〈接続用魔法陣〉発動!
その瞬間、俺の周囲に赤黒い光を放つ魔法陣が展開される。
「……ぬう!?なんだそれは!?」
「はん!何だと思う?もうこうなったら……俺の勝ちだよ!」
俺の勝利宣言と同時に魔法陣から凄まじい魔力が流れ込んでくる。
シオンの本体から流れ込んできているであろう、莫大な魔力を感じながら剣を頭上に構え精神を集中する。
『……魔王様!意識の同調、できました!詠唱いきます!』
「おう!いくぞシオン!」
「〈我は闇を束ねし魔王なり〉」
ゴブリンキング戦以来の詠唱を始めた瞬間、魔法陣からの魔力の供給量が更に増大する。
「〈我はその闇を使役し、大いなる災禍を齎らさん〉!」
「……何だその詠唱は!?今魔王様の名を名乗ったのか貴様は!?」
ザルガデウスが狂ったように喚き散らしている。
「〈闇よ、我の下へ集え〉!」
魔力が頭上の剣に収束してくるのがわかる。
「〈闇よ、禍々しく猛り狂え〉!」
「くそお! ダークネスドラゴンよ!いい加減動かんかぁぁ!」
「グオオオオオオオ!!!」
ドラゴンがザルガデウスの檄を受けて激しく抵抗している。
(……もう手遅れだよ、貴様らはゴブリンキングと比べても圧倒的に役不足だな)
「〈今こそ我が刃となりて、仇敵を滅ぼさん〉!」
「〈轟き……斬り裂け〉!!!」
俺は、ドラゴンとその後ろのザルガデウス、そして更にその後ろの魔物の軍勢を見据える。
(お前らではこの技を受けるのに役不足だな……出来る限り後ろの魔物達も巻き込んでやるか……)
獲物たちを一瞥し、完成した極大の必殺剣を放つ――
「〈魔王神滅煉獄剣〉!!!これで……終わりだぁぁぁ!!!」
「グオオオオオオオオオオオ!!!!」
放たれた極大の斬撃は、一瞬でダークネスドラゴンを消し飛ばし……
「ぬおおお!これは……魔王様のォォォ!!!」
その背後にいたザルガデウスも飲み込んで――
更にその背後にいた大多数の魔物達の方まで飛んでいき、大半を消し飛ばしてしまうほどの甚大な被害を与えた。
「……よし……これで粗方片付いたな……」
『はい!魔王様!』
久しぶりのシオンとの合体技を成功させ、疲労感溢れる体で魔物達の方を見ると……
視界の先に溢れ返っていた魔物達の姿が、見るも無残に激減していた。
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