表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード3~4 ユニーク職業〈聖女〉クエスト
97/175

40 強くなった私たち

 ケントがブルームでの素材の買い取りに行ったあとは、タルトがせっせと〈製薬〉している間にスキルのためにレベル上げをすることにした。

 ……タルトにだけ任せちゃう形で申し訳ないけど……!!


 私たちが狩場に選んだのは、〈咆哮ポーション〉の素材をゲットできる〈ドラゴンの寝床〉だ。

 ケントを前衛に、私、ティティア、リロイ、ココアが参加している。ブリッツとミモザはほかの〈聖堂騎士〉たちとの連絡のため、今回は来ていない。


 一度狩りを経験しているので、ケントたちもだいぶ慣れたようだ。


「〈挑発〉! からの、〈竜巻旋風(トルネードラッシュ)〉!!」

「いくよ~! 〈空から落ちた瞳は、鋭さを増し敵を撃つ♪〉」


 ケントがドラゴンを釣ってココアが歌ってスキルを使うと、頭上に集まった水が剣の形になってドラゴンを貫いた。右手に杖、左手に魔導書を装備して戦う姿は、とても格好良い。そしてその強さは、〈言霊使い〉のときとは比べものにならない。

 私も負けてられないね!


「いい感じ! 〈女神の守護〉〈女神の使徒〉!」

「――〈闇落ち女神の祝福〉〈女神の鉄槌〉!!」


 私が支援をし、そのあとにリロイが攻撃スキルを使う。私が一人で支援を回せるので、リロイが攻撃枠になれるのだ。


 それからしばらく狩りをして、一休みすることにした。


「そういえば、前に倒した〈黒竜〉って……もう復活しないのか?」


 水を飲んだケントが、疑問を私に投げかけた。

 ボスによって多少の違いはあるけれど、ゲームのときはだいたい一時間から三時間おきに復活する設定だった。〈黒竜〉の復活時間は一時間だ。


「ダンジョンにいるボスは、ほかのモンスターより時間はかかるけど復活すると思う。〈黒竜〉の場合は……私も確認したことがあるわけじゃないから、絶対ではないんだけど、早ければ一時間くらいで復活するんじゃないかなぁ……?」

「一時間……!? すご……」


 予想外に早い復活だったらしく、ケントは絶句している。

 〈黒竜〉の復活サイクルが一時間と早いのは、誰でも初回討伐時に〈ドラゴンの笛〉をもらえるからだ。なので、〈黒竜〉は大人気ボスでいつもフルボッコにされていた。


「……倒したい?」

「いやいやいやいや、あの戦いを今から!? 大変だろ! タルトもブリッツもミモザもいないのに!!」


 もしかしたらと思って聞いてみたけれど、まったくそんなことはなかったらしい。


「あはは……。って、ケントの卵が光ってるよ」

「うおっ!?」


 ケントがずっと腰のあたりに縛りつけていたドラゴンの卵が、淡く光り出している。いよいよ孵化するときなのだろう。


「ドラゴンが産まれるんですか!?」

「こ、こんなところで孵化して大丈夫なの!?」

「いや、わかんないけど……あ、卵にヒビが入った!」


 ティティア、ココア、ケントが慌てふためいているうちに、ひびの入った卵が割れて、中からドラゴンの赤ちゃんが出てきた。


『キュイー!』


 ケントの相棒として誕生したドラゴンは、黒色の防御力重視のどっしりとした個体だった。水色の瞳に、鋼のような鱗。愛嬌があって可愛いけれど、成長するにしたがって勇ましさが増えていくだろう。


 〈竜騎士〉の相棒になるドラゴンは、ケントが手に入れた防御力重視の黒い竜、攻撃力重視の赤い竜、回復など支援重視の青い竜の三種類からランダムで誕生する。前衛として盾もするケントには、相性のいい子だ。

 ちなみに、私の兄は赤いドラゴンが相棒。


「うおおおぉ、俺の相棒か……!!」

「やったね、ケント! おめでとう! これで一人前の〈竜騎士〉だよ!」

「おめでとう!」

「「おめでとうございます」」


 ココア、私、ティーにリロイがお祝いを口にすると、ケントは「ああ!」と言ってはにかんだ。


「名前をつけてやらないとな! ん~~~~、よし! 綺麗な水色の目だから、お前は今日からソラだ! 一緒に空を飛んで冒険しような! よろしくな!!」

『キュイキュイ~!』


 空の色から名前をソラにしたのが、なんだかケントらしくてほっこりしてしまった。


「よろしくね、ソラ」

『キュイ!』


 私の呼びかけにも嬉しそうに応えてくれて、現実になった〈竜騎士〉めっちゃいいな……などと思ってしまうのであった――。



 ***



「ポーションは持ったですにゃ? 足りないものがあれば、すぐに教えてくださいにゃ!」

「タルトが一生懸命作ってくれたからな、ばっちりだぜ!」


 タルトが消耗品の配布をし、それぞれ使い方を確認してしまう。

 今回、ココアがお土産にと買ってきてくれた〈水のキノコ〉で〈水羽衣のポーション〉を作ることができた。これは防御力を上げる効果があるので、戦闘中はできる限り使いたいアイテムだ。


 特にケントが大絶賛だ。防御力が上がるのは、前衛のケントにはかなりありがたいポーションだからね。タルトもケントは常時使えるようにと、多めに配ってくれている。


「にしても、〈咆哮ポーション〉もあるし……〈錬金術師〉ってすごいんだな。〈火炎瓶〉を使うスキルも強いし、尊敬する……!」

「えへへですにゃ。道具が必要なのと、素材集めが大変ですけど、楽しいですにゃ」


 こうして準備をする私たちを見て、天使は「人間は大変ですね」と肩をすくめた。


「天使ちゃん……」

「大聖堂はフローディア様にとっても大切な場所ですから、頑張ってくださいね」

「あ、はい」


 私が条件反射で頷くと、天使ちゃんはそれはそれは可愛らしく微笑んだ。




 ゆっくり深呼吸を繰り返して、私は目の前のクリスタルの大聖堂を見上げた。今、ここにロドニーと〈ルルイエ〉がいる。そしてもう一人の要注意人物は、修道院にいた〈暗黒騎士〉だ。

 ……今はこっちのレベルの方が上だと思いたいけど、油断はしない方がいいね。


 私が振り返ると、仲間たちが並んでいる。

 タルト、ティティア、リロイ、ケント、ココア、ブリッツ、ミモザ――そして連絡を取り合っていた〈聖騎士〉と〈聖堂騎士〉がざっと二〇人ほど。

 最初は一人で国を出たのに、気づけばこんなにも仲間ができるとは……悪役令嬢だったときには思いもしなかったね。


「さあ、時は満ちた! いざロドニーを倒すとき!!」


 私が高らかに宣言すると、全員が自身の武器をぐっと握り込む。その表情は真剣そのもので、この戦いの重要度がピリッとした空気からも伝わってくる。呑気なのは、私たちを傍観している天使くらいだろう。


 今回の目的は、ロドニーの捕獲、〈ルルイエ〉の討伐だ。〈暗黒騎士〉は捕獲、討伐、どちらでも構わない。〈聖堂騎士〉たちは一度牢に捕えることになっている。


 クリスタル大聖堂に最初に突入したのは、〈聖堂騎士〉たちだ。その後に私たちが続く。ティティアを守る形でリロイ、ブリッツ、ミモザがつき、私やタルトたちはそれをサポートしつつ臨機応変に動く。

 主に〈暗黒騎士〉の相手を私たちがして、ティティアたちにはロドニーを追い詰めてもらう。



 私がクリスタル大聖堂に入ると、すでに戦いが始まっていた。が、ロドニー側の〈聖堂騎士〉には多少戸惑いが見えている。こちらの〈聖堂騎士〉を指揮しているブリッツが、ものすごい強さで敵を薙ぎ払っているからだろう。

 ……みんなレベル100越えになってるからね!


 この場はブリッツたちに任せ、私たちはロドニーの元へ走った。目的地は、ティティアの部屋だ。


「あと少し――ッ!」


 ケントが声を上げた瞬間、スキルで攻撃された。それをケントがどうにか大剣で防ぐと――そこにいたのは、修道院で見た〈暗黒騎士〉だ。

 ……やっぱりいるか。

 私はありったけの支援をかけなおし、閉まったままの扉を見る。〈暗黒騎士〉はティティアの部屋の扉の前に立っているので、護衛をしていたのだろう。


「ケント、そのまま引き付けてて! ――〈大地に焦がれた私は生命の芽吹きに祈りを捧ぐ♪〉」


 ココアが歌った、『リアズ』のテーマソングをもじった歌のスキルは、床から植物を生やして〈暗黒騎士〉を拘束した。


「ぐっ、なんだこの魔法は……!!」


 〈暗黒騎士〉はどうにか抜け出そうともがいているが、びくともしない。ふふっ、〈歌魔法師〉おそるべしだね。


「……なんともあっけないものですね」


 リロイがため息とともにそう告げると、〈暗黒騎士〉は「ふざけるな!!」と声を荒らげた。どうにかして植物をちぎろうとしているらしいが、無理のようだ。

 これならロドニーの拘束もとんとん拍子にいけるかもしれない。私がそんなことを考えていると、ティティアの部屋の扉が開いた。


「「「――っ!?」」」


 騒ぎは部屋の中にも届いただろうに、ロドニーが出てくるなんて――そう思ったが、そうではなかった。

 扉から出てきたのは、ロドニーではなく〈ルルイエ〉だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『回復職の悪役令嬢』特設サイト
小説2巻、コミック1巻が発売中です!

1u8qibq571hdgz5nl2ripwxcc60_1d7h_ta_15o_51cm.jpg
― 新着の感想 ―
ロドニーの『捕獲』… (´꒪⌓꒪)はて もしかしてゲームボーイかなんかの2Dドット系RPGだったのでしょうか…?
[一言] 更新お疲れ様です。 聖騎士は教皇を守り従う騎士で、教皇を裏切る事はない騎士だけど、聖堂騎士は聖堂を護る騎士で、聖騎士の様に教皇に対して絶対服従という縛りはないんでしたっけ。ややこしいですけ…
[一言] クーデターを起こしたロドニーが責められるのは道理だがゲーム感覚で勝手に改宗した点だけは主人公も一緒だからな ルルイエさんは文句を言っていい 特に美少女(しかも聖女候補)とむさいジジイのトレー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ