23 久しぶりのパーティ
ブンブンブンとものすごい勢いで首を振られ、オークの討伐依頼を拒否されてしまった。まあ、確かに私たちのレベルから考えるとそこそこの格上相手だ。プレイヤーがオークの相手をするなら、パーティでレベル25、ソロならレベル30程度で安定して狩りができる。
……でも、〈火炎瓶〉を作るために〈オークのぼろ布〉がほしいんだよね。
私が悩んでいると、タルトが「賛成ですにゃ」と手を挙げた。
「「えっ!?」」
声をあげたのは、ケントとココアだ。自分たちより小さなタルトがオークに挑もうとしていることに、ものすごく驚いたようだ。
「ええと、そもそも二人のレベルを聞いてなかったな。俺とココアは25になったけど、二人は?」
「私は変わらず17」
「18ですにゃ」
「オークは無謀じゃないか……?」
しばらく会っていなかった間に、私がオークと戦えるくらい強くなっていたのかもと、ケントは考えたようだった。残念ながら、現実はそんなに甘くないのです。ゲームじゃないからね。
――レベル上がってないの、SETUNAI☆
「というわけで、ガンガンレベル上げて行こう!! 大丈夫、依頼は〈オーク〉の討伐一〇体だから。まずはそれをこなしていこう」
「え、あ、お、おう……」
私の迫力に気おされたからか、ケントはあっさり頷いてくれた。
***
私たちがやってきたのは、〈オーク〉が生息する〈木漏れ日の森〉というフィールド。〈エルンゴアの楽園〉があるフィールドのすぐ東隣に位置している。〈オーク〉の生息地に似合わないような名前で、とても美しい森だ。木々の隙間から漏れる光は暖かく、ハイキングをしたら楽しいだろうなと思う。開けた場所もいくつかあるので、比較的戦いやすい立地と言っていい。
ここには〈オーク〉を頂点に、〈スネイル〉という蛇のモンスターと〈スパイル〉という蜘蛛のモンスターの三種類が生息している。あとは〈薬草〉とか、採取できるものがいくつかある程度。
「ひええぇぇぇ……」
「にゃあああぁあぁ」
ココアとタルトが涙目になったのを見て、私は苦笑する。〈オーク〉はまだしも、蛇と蜘蛛は地味に辛いものがあるよね。わかる。私も最初に来たときは、ゲームだとわかっていても悲鳴をあげてビクビクしながら狩りをした。今? もう慣れました。
「女って蛇とかそういうの、嫌いだよなー」
「ケントは大丈夫なの?」
「俺は平気。家の中に虫が出たら、普通に倒してたし」
虫モンスターとただの虫を一緒のカテゴリーにしていいのか? と思いつつ、私はよかった~と安堵する。後衛のタルトとココアならいいが、前衛のケントに虫が駄目と言われていたら狩りにならなかったからね。
「シャロンは平気なのか?」
「うん。さすがに慣れてるから、大丈夫」
「慣れて……? まあ、大丈夫ならいいんだけど」
不思議そうにするケントに、私はアハハと笑いながら「作戦をおさらいしよう」と告げる。レベル17の私が簡単に慣れてるなんて言ったら、怪しさ大爆発だったね。
――さて。気を取り直して、私たちは狩りの仕方を再確認していく。
「メインの火力は、タルトの〈火炎瓶〉で攻撃する〈ポーション投げ〉。蛇と蜘蛛は一撃で倒せると思うけど、〈オーク〉を一撃で倒すのは無理。今のレベルと装備だと、たぶん二本ちょっと……ってところ。だから、ココアは〈オーク〉に魔法攻撃を一発お願い。タルトの〈火炎瓶〉二本と、ココアの一発で倒せると思うから。よろしくね!」
「はいですにゃ!」
「頑張ります……!」
私の言葉に、タルトとココアが大きく頷く。
〈ポーション投げ〉で与えられるダメージは、使用するポーションの攻撃力や性能と、〈ポーション投げ〉のスキルレベルだけではなく、使用者本人のレベルや装備によっても変わってくる。一応計算式はあるけれど、別にそこまで細かい計算をする必要はないので割愛。
「俺は前衛として、モンスターをひとまとめにする役だな」
「うん。〈オーク〉は一体ずつ、蛇と蜘蛛は数体でも大丈夫だよ。〈オーク〉を一匹見つけたら、攻撃しよう。でも、蛇と蜘蛛が多くなっちゃった場合も攻撃はするね」
「ああ!」
全員で頷きあい、「いくぞ!」と声を張り上げて気合をいれた。
森の中を歩くと、とても見晴らしがいいということがすぐわかる。かなり先まで見えるし、何より太い幹の木が少ない。〈オーク〉の方が木より体格がいいので、不意を突かれにくいというのはかなりの利点だろう。逆にこちらは隠れやすく、見つけやすいのだ。
「先手必勝で頑張らないとね。全員に〈身体強化〉と〈女神の守護〉。ケントには〈リジェネレーション〉、私とタルトとココアは〈マナレーション〉っと!」
今の私にできる限りの支援をかける。〈女神の守護〉は臨機応変にかけ直すけれど、〈身体強化〉と〈マナレーション〉の二つは絶対に切らさないよう気を付ける。
ケントが「そんなにスキル使えたっけ……?」と小さく呟いて私を見ているが、それは気にしたら負けというものだ。
「あ、いた! 〈オーク〉だ! その手前に、蛇も一匹いる」
「よろしく、ケント。余裕があるときはタルトに〈女神の一撃〉をかけるからね」
「わかった」
そう言って、私はタルトに〈女神の一撃〉をかける。これで、〈火炎瓶〉を投げたときの攻撃力が二倍になる。チート感はんぱない。
私の言葉に頷いたケントは、まずは蛇に剣で一撃を与え、そのまま〈オーク〉の元へ走っていってスキルを使った。
「いくぜ、〈挑発〉!」
「おお、ヘイトスキル持ってるんだ!」
私は思わず心の中で拍手する。以前一緒に狩りをしたときは使ってなかったから、レベルアップで覚えた新スキルかもしれない。
〈挑発〉はモンスターの敵意を自身に向けるスキルなので、壁役で前衛をするには必須のスキルだ。上手く立ち回ると、モンスターが後衛に攻撃しないので、狩りがずいぶん楽になる。
ケントが蛇一匹と〈オーク〉一体を近くにまとめ、大きく横にジャンプした。
「二人とも、今だよ!」
「はいですにゃ! 〈ポーション投げ〉!!」
「いきます! 〈ファイアーアロー〉!!」
二人が同じタイミングで攻撃を仕掛ける。タルトの〈火炎瓶〉は弾着点から半径三メートル以内に爆発を起こす。そのため、ケントにはモンスターを可能な限り近くにまとめてもらい、すぐに離れてもらった。ココアも無事〈オーク〉に一撃をいれることができたみたいだ。〈オーク〉と蛇は光の粒子になって消え、ドロップアイテムが残った。
「うおおおお、すげぇ! こんな簡単に〈オーク〉を倒しちまった!!」
ケントが感動して目を輝かせ、ドロップアイテムを拾っている。何度も「すげぇ」と口にしているので、よっぽど嬉しかったみたいだ。
「よし、この調子で依頼分の討伐をしちゃおう!」
「はいですにゃ!」
「「おおー!」」
ちょっと投稿遅れちゃいました。
いつも感想や誤字脱字ありがとうございます。(助かっております…!)
お返事できませんが、全部読ませていただいております~




