20 ティティアと再会
「シャロン~~!」
「ティー、久しぶり!」
私を見るやいなや飛びつきそうな勢いで走ってきたティティアを、手を振って迎えようとしたのだけど――そのまま抱きつかれてしまった。
「ティー?」
「シャロンは〈聖女〉なので、本当はシャロンこそこの大聖堂に相応しいのに……」
「いやいやいやいや、正気に戻ってティー。私は冒険したいから、こういう管理が大変そうな建物はちょっと……」
ときおり遊びに来させてもらって素晴らしさを堪能するくらいがちょうどいいのです。そんなことを言ったら、リロイに「なんて不敬な……」と睨まれてしまった。ティティアも予想外の返事だったようで、ガーンという顔をしている。
ティティアの分のお茶も用意してもらい、近況報告などをしつつ雑談タイムだ。
「シャロンたちは今、ファーブルムにいるんですね」
「そうです。ああ、ティティアがファーブルムに和平の申し入れをしてくれたこと、ヴィルヘルム陛下から伺いました」
「はい。わたしたちは争いたいわけではないので、よいお返事をいただけて嬉しいです」
ほわりと微笑んだティティアは、今回のことが上手く進みそうで、本当に嬉しそうだ。
私は目を閉じて、ティティアがしてくれた、してくれようとしていることを考える。
自国のことだけではなく、他国の平和も考えるティティアは本当にすごい。名称だけでいいならば、私よりよっぽど聖女らしいと思う。
目を開けてティティアを見れば、「よかったです」と笑みを浮かべるばかり。それにつられて、私の口角も上がる。
「ティー……いいえ、〈教皇〉ティティア様。〈ファーブルム王国〉の公爵家の娘として、この度のティティア様の英断に感謝いたします」
「――! わたしは、この世界が平和であればそれでいいのです。シャロンにもたくさん世話になりました。ありがとう」
二人で礼を言い合い、私たちは顔を見合わせて笑う。
「ティーに会えてよかった」
「わたしだって、シャロンに会えてよかったですよ! そもそも、シャロンがいなかったら、わたしもリロイも今頃生きていなかったでしょう。シャロンはわたしたちの恩人です。だからわたしは、シャロンの頼みはなんでも叶えたいと思ってしまいます」
「それは出血大サービスですね」
ティティアの言葉に私がニヤリとしてみせると、すかさずリロイから「真に受けないように」と注意が飛んできた。
……リロイのことも助けてあげたのに、ちぇ。
お茶を飲んで喉を潤すと、ティティアが「それで……」と話を続けてきた。
「ダンジョンに挑戦するのはいつですか? 今からですか?」
「さすがに今からじゃないですよ」
「シャロンなので、今からの可能性もあるかと思って……!」
ティティアの中で、私はかなりの無茶ぶりマンになっているようだ。
「今、〈勇者〉のフレイのパーティメンバーが覚醒職の転職クエスト中なんです。それが終わって戻ってきて、新しい職業に慣れるまで狩りをして……その後ですかね」
なので、そこまで早急ではない。IDも別に時間制限があるわけではないので、それならば準備万端で臨むのがいいだろう。
私の説明を聞いたティティアが、あからさまにホッと胸を撫で下ろした。
「よかったです。連携の確認などもしてからダンジョンに挑戦できるんですね。わたしはあまり機敏な動きができないので、頑張らなければ」
「ティーのスキルはとっても頼りになるので、いてくれるだけで嬉しいですよ。だけど、そうやって向上心を持っているティーはすごいと思います」
「ありがとうございます」
タルトもそうだけれど、私の周りの子たちはみんな頑張り屋さんなのだ。
しかし、今回のID攻略で読めないことはもちろんある。それは出てくるモンスターの強さや、ダンジョンの規模――攻略時間だ。
……ゲームのときのクリア時間は参考にしない方がいいよね。
ゲーム時代にもいろいろなIDがあったけれど、早ければ数十分で攻略、長くとも五時間もあれば攻略が可能だった。しかし現実となるとそうはいかない。食事はもちろん、睡眠などの休憩も必要になってくるだろう。幸い〈鞄〉と〈簡易倉庫〉があるのでアイテムや食料はどうとでもなるけれど、疲れだけは基本的に休むしかない。
……ティティアって、どれくらいツィレを離れても大丈夫なんだろう?
攻略メンバーでの練習とかは、ゲートがあるから日帰りすることもできる。しかしIDの中に入ってしまえば、途中で家に帰ることはできないのだ。
私がむむむと悩んでいると、リロイが「早く喋ってしまってください」なんて言ってくる。
「このダンジョンの規模の予想が難しいんです。……というか、実質不可能に近いというか。さすがに三日かかることはないと思いますけど、最悪、ダンジョンの中で一泊するつもりでいた方がいいですね」
「最奥にいるのが〈女神フローディア〉であれば、それも当然でしょう」
「仕方ありませんね」
白状したつもりだったのだけれど、ティティアとリロイはすんなり受け入れてくれた。
「でも、仕事の調整とか……大丈夫ですか?」
「構いませんよ。どのみち、ティティア様とは一度ファーブルムに行こうと話していましたからね」「あ、和平の件で……」
「はい」
時期だけ考えるならば、今回のことはタイミングがよかったみたいだ。そのことにホッとしつつ、私はファーブルムに滞在中はうちに泊まればいいことを二人に告げる。
「王城で来賓として部屋は用意してくれると思いますけど、ぜひうちに来てください。美味しい桃でおもてなししますよ」
「「桃?」」
私の言葉に二人ともきょとんとしたので、〈桃源郷〉で美味しい桃をゲットした話をしておいた。リロイは「〈桃源郷〉の情報まで持っていたんですか!?」と驚き口元を引きつらせ、ティティアは「わたしも行きたいです!」と手を挙げた。
「今回のダンジョンをクリアしたら、みんなで〈桃源郷〉に遊びに行くのもいいかもですね」
「それはいいですね!」
私の提案に、ティティアはぱあっと笑顔を見せた。




