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ミッちゃん。

雨がふってます。

項垂れるエリックを見詰めていると、突然大きな声が練習場に響いた。


「ヒナちゃん‼」


私はビクッと体を強張らせてゆっくりと声がした方を見た。

そこに居たのはミッちゃん。

何故!何故バレた!

私はゆっくりと副団長の後ろに隠れた。


「ウルさん!ヒナちゃん捕まえといて下さい!」

「ヒッ!副団長助けて!」


副団長は首をかしげて言った。


「ヒナはストラがそんなに怖いのか?」

「怖いです!説教長くて真面目に聞かないと私が嫌がる攻撃を繰り出して来るんです!」

「ヒナなら避けて返り討ちにできるだろ?」

「私、基本手加減出来ないんです!大好きなミッちゃんに怪我させちゃったら怖いから言うこと聞いた方がまし………ましですよね?」

「………そうだな。」


副団長にそんな話をしているうちにミッちゃんが目の前に来ていた。


「ヒ~ナ~ちゃ~ん!」

「ぎゃーっ」


私が可愛くない悲鳴をあげるとミッちゃんは爽やかな笑顔を私に向けた。


「聞いた所によると、一番隊の副団長に喧嘩売ったって?」

「ヒー!」


ミッちゃんは一気に眉間にシワを寄せて叫んだ。


「下半身露出した変態のおっさんの大事な部分本気で蹴り上げるとか、暗闇から突然現れて体触ってこようとする糞野郎は半殺しにしても許すけど!ムカついただけの人に喧嘩売るのは許さないって言ったよね?」

「ごめんなさい‼」

「しかも、本業で戦ってる騎士様に喧嘩売るとか怪我したらどうするの!」

「ごめんなさい‼」

「ヒナちゃんは女の子なんだからね!」

「………女の……子……は、ちょっと年齢的に厳しいかと……」

「ヒナちゃん‼」

「はい!ごめんなさい‼」


私が誤り続けていると、副団長が私とミッちゃんの間に立ってくれた。


「ストラ、そろそろ許してやれ。」

「ウルさん!ヒナちゃんを甘やかさないで下さい!」

「ヒナの事が心配なのは解るが、ちゃんと俺が見てるから大丈夫だ。危ない事や、やり過ぎな時は俺が止めるから安心しろ。」

「………」


ふ、副団長!超いい人!

私の中で副団長の株が大きくはね上がった。

副団長に迷惑かけないようにしよう!

私は思わず心に誓った。


「安心しろ。」


副団長はそう言うとミッちゃんの頭をポンポンと叩くように撫でた。


「お、お兄ちゃん‼」


ミッちゃんは感極まったように両手を広げて副団長に一歩近くとフリーズした。


「ミッちゃん?どうしたの?」

「あ、いや、思わず抱きつきたい衝動にかられたんだけど………先生嫉妬深いからウルさんに迷惑かけちゃうかな?って思った。」

「そうだな‼ライガイヤ殿は嫉妬深い‼代わりにヒナo………」


私はミッちゃんの代わりに副団長に抱きついた。


「………ヒナ、普通ストラが俺の代わりにヒナに抱きつくのが正解じゃないのか?」

「へ?………ミッちゃんの代わりに私が副団長に抱きつくんじゃ駄目?」

「………いや、駄目じゃないとは思うが………」


ミッちゃんの方を見るとミッちゃんは親指を立ててグッとしていた。

やっぱりこれが正解じゃ?


「ふ、副団長が抜け駆けしてる~‼」

「ウルガルド!羨ましいぞこの野郎~‼」


二番隊の団員と団長が一気に叫んだ‼

あっ、これは不正解だったと今気がついた。


「ごめん副団長。」

「いや、ラッキーだったと思う。」

「ああ、なんかすみません。」

「気にするな。」


副団長は私が離れると私の頭を乱暴に撫でた。

子供扱い‼

って思いながらも温かい気持ちが広がった気がした。


「おヒナ!俺の胸に飛び込んできて良いぞ‼」


団長が両手を広げて私にキラキラの笑顔を向けてきた。

私はボサボサになった髪の毛をかきあげてから、団長に向かって走りだした。

私は団長との距離が縮まった所で思いっきりドロップキックを繰り出した。

思ったより綺麗に決まって嬉しい‼


「ウルさん!」

「あれは団長が悪い!許す‼」

「不安だよ~‼」


後ろでミッちゃんの声が聞こえたが、私は聞こえないふりをしたのだった。

読んで下さってありがとうございます‼

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