おまけ 病気?
今まで読んでくださった皆さまありがとうございました‼
今日何故か副団長がお休みしている。
昨日は『また明日な。』って言っていたのに……
心配だよ。
自分の仕事を終えて執務室を出るとナラハに会った。
「ああ、ヒナ様!副団長が休みなんて珍しすぎですよね?お見舞いに行ったらどうですか?」
「そ、そうだよね………行って来ようかな~。」
私は副団長のお見舞いの品を探しに街に出た。
暫く街を歩き回ったが何が良いのか解らない。
私は休憩がてら公園のベンチに腰を下ろした。
考えてみれば副団長がどんな症状なのかも解らないのに何を買えば良いのかなんて決まらないよね。
「あの、2番隊の方でしょうか?」
その時声をかけてきたのは白髪の紳士だった。
紳士って言葉がよくに合う人だった。
「は、はい。」
「ああ、やっぱり。2番隊の団服にそんなスカートがあったとは知りませんでした。」
「これですか?これは私がズボンを切り開いてリメイクしたものだから………」
「そうだったんですね‼私は服屋をしているので気になってしまいました。この形のスカートは初めて見ました。」
「マーメイドラインって言うんですよ。」
「へー。」
紳士は興味深そうに私のスカートを見てから言った。
「貴女が聞いた通りの人物で安心しましたよヒナさん。」
「へ?私の事を知っているんですか?」
「ストラーダ様がいつも話してくださいますから。素敵なお姉様だと。」
ミッちゃんの知り合い?
「ストラーダ様のお洋服は全て任されているんですよ。」
「いつも、ミッちゃんがお世話になってます。」
「いえいえ、私も息子が貴女にお世話になっていますから。」
「息子?」
「はい。私の息子も2番隊勤務なんですよ。」
え?誰のお父さんだろ?
私が少し悩んでいるとクスクスと紳士が笑った。
「ウルガルドがいつもお世話になっています。」
「ふ、副団長!」
「はい。ウルガルドが獣人なのはご存じですか?」
「は、はい。」
「私のせいで息子には苦労をさせています。嫌わないでやって下さい。」
「へ?」
副団長のお父さんは苦笑いを浮かべて言った。
「私も獣人なのです。私の血を強く受け継いだためにウルガルドは狼に近い形で獣化してしまうんです。」
「私は平気ですよ?むしろ獣化してる副団長好きなんで。」
「………不思議な方ですね。」
「そうですか?」
「………そうだ、今から家に来ませんか?アンナ、妻も喜ぶと思うので。」
「アンナさん!会いたいです!」
私は副団長のお父さんについて、副団長の実家に向かった。
「お帰りなさいダーリン!あれ?ヒナちゃん?」
副団長の実家につくと、アンナさんが出迎えてくれた。
「良いところに来たわ‼ヒナちゃんこっち来て!ダーリン、ヒナちゃんつれて来てくれてありがとう‼愛してる‼」
「私も愛してるよアンナ。」
ら、ラブラブ‼
アンナさんと紳士は軽いキスをかわして笑い合っている。
素敵夫婦だ!
「こっち来て!」
「あ、はい。」
私はアンナさんに連れられて、奥の部屋に向かった。
「ここ、ウルの部屋。」
へ?副団長の?
まさか、副団長居るの?
私が驚いているとアンナさんは躊躇わずに副団長の部屋を開けた。
「じゃじゃ~ん!」
副団長の部屋を見て、私は驚いた。
そこにあったのは純白のドレス。
ウエディングドレスだ。
「………へ?」
「ヒナちゃんのサイズにリメイクしたのよ!私のお古で悪いんだけどね‼」
「え?あ、あの……」
「ごめんね、付き合ってないって解っててもヒナちゃんにお嫁に来て欲しいのよ。ウルが帰ってきた時にプレッシャーになるようにこの部屋に置いてるの。」
私は呆然としながらドレスに見いってしまった。
「ウルはきっとヒナちゃんを好きになるわ!だから、ウルのこと嫌わないであげて。」
「嫌いになんてなりません!」
「あの子、獣人だし獣化すると怖いのよ!」
そこに現れたのは副団長のお父さんだ。
「ヒナさんはウルガルドの獣化した姿が好きらしいよ。」
「へ?ヒナちゃん解ってる?」
「はい。あと………」
「「?」」
アンナさん夫婦が首をかしげた。
シンクロしてる。
可愛い夫婦だ。
「あと、なに?」
「………私、副団長と付き合うことになりました。」
「「!」」
アンナさん夫婦が顔を見合せ、その後アンナさんが副団長のお父さんに抱きついて喜んだ。
「やったやった‼ウルのくせに頑張った‼」
「良かったねアンナ。」
ああ、素敵な夫婦だな~。
私も副団長とこんな夫婦になれるかな?
あ、恥ずかしいことを考えてしまった。
私はその後、アンナさん達と暫くお話をしてその場を後にした。
結局副団長のお見舞いの品を何にするか決まらず、仕方がないから風邪のお見舞いのようにリンゴと風邪薬に栄養ドリンクの様な効果のあるポーションを持って副団長の部屋に向かった。
副団長の部屋は他の団員の宿舎の近くに家を借りているみたいで、普通のアパートみたいな家だ。
前に一回お邪魔したことがある。
いや、お茶して帰ったよ。
副団長はもう少し居て欲しそうだったけど、身の危険を感じて帰った。
そんなことを思い出しながら副団長の部屋のドアをノックした。
暫く待つとドアの向こうから声がした。
「誰だ?」
「ヒナだよ。」
「帰れ。」
「は?なんで?」
「………」
副団長はドアすら開けてくれない。
「とりあえずドア開けてよ。」
「駄目だ。」
「なんで?」
「………」
「ウルド?」
「ヒナと顔をあわせる訳にはいかない。」
「は?」
「ヒナはきっと後悔する事になる。」
なに?蕁麻疹とかってこと?
「大丈夫だよ!看病に来たんだよ?何もしないで帰れるわけないじゃん!」
「看病は駄目だ。」
なんなの?
意地でも部屋に入ってやる‼
「じゃあ、お見舞いのリンゴとかだけでも受け取ってよ!」
小さくドアが開いて手が出てきた。
ここにのせろってこと?
私は悪徳セールスマンさながらにドアの隙間に足を突っ込んでドアをこじ開けると副団長の部屋に滑り込んだ。
やってやったぜ私!
見れば慌てた様子の副団長。
通常の人の姿だが、狼の耳に尻尾がはえている。
よく見る獣人スタイルの副団長だ。
「その姿は初めて見るね。」
「馬鹿!早く出てけ!」
「なんで?他に女連れ込んでんじゃ無いよね?ベッドチェック!」
「こら!まて!駄目だ。」
なんなの?怪しすぎるんだけど?
若干の殺意を覚えながら副団長の寝室のドアを開けたが誰も居ない。
じゃあなんで?
私が寝室に1歩入った瞬間後ろからドンっと背中を押されてハッとした。
後ろでドアの閉まる音が聞こえた。
恐る恐る振り返ると、副団長がゆっくりと言った。
「俺は警告したぞ、入ったら後悔するってな。」
「えっと………」
副団長が後ろ手にドアのカギをかける音が響いた。
「あの、副団長!」
「ウルドだろ?」
艶のある声にゾクッとする。
「う、ウルド?なんか、その、私、帰ろっかな~。」
「悪いが逃がす気はない。」
「えっと、体調悪いんだよね?長居しない方が良いよね?」
「大丈夫だ。ただの発情期だからな。」
「発…!」
「好きな女が居ないうちは我慢も出来るが、好きな女が出来れば別だ、その女が欲しくてたまらなくなる。だから今日休みをもらって落ち着こうとしてるってのにそっちからノコノコやって来るとはな。」
副団長は私の肩を押すとベッドに倒した。
「寝室まで来たのはヒナギクだ。」
パニックの私にのしかかり、軽いキスをしてくる副団長の尻尾がブンブン音がしそうなほど振られている。
「う、ウルド、待て!」
「無理に決まってるだろ?こっちは発情期なんだからな。」
「あう、待った、心の準備が‼」
「………」
副団長は尻尾をシュンとさせ、苦しそうな顔をすると私からどいてくれた。
「早く行け!理性がもたん。」
不謹慎だが、副団長のその姿はかなり可愛い。
私は何だかそれだけでキュンキュンで全部が受け入れられる気がした。
思わずウルドに抱きついてしまったのは許してほしい。
「ヒナギク!」
「良いよ。怯えてごめんね。」
「!」
「怖いのはウルドにじゃないし、ウルドとなら怖くないって思えたから良いよ。」
ウルドの驚いた顔とピンとした尻尾が可愛い。
私はとりあえずベッドにのると言った。
「優しくしてね。」
ウルドはゆっくりと私のもとに来ると私を抱き締めて言った。
「悪い、優しくしてやる自信がない。」
「え?」
「悪い。」
「ちょ!まっ、あっ……やっ…んっ」
うん。
逃げなかった私は馬鹿なのかもしれない。
ウルガルドさんを気に入ったがために書き始めた作品でした。
今までお付き合いくださり幸せでした。
次の作品のイメージが微塵もありませんが、早めに書けたら良いと思ってます‼
書けたらまた読んでいただけたら嬉しいです‼




