番
息子の風邪がうつったかも……
私の誘拐事件から数日がたったころ、兎の兄妹がお兄さんだと言う人と会いに来てくれた。
「この度は自分の弟と妹を守っていただいてありがとうございました。」
「大丈夫ですよ!これでも二番隊員のはしくれですから………バイトですけどね。」
兎の兄妹のお兄さんは眼鏡をかけた黒い瞳に白い髪の毛のイケメンだった。
「お姉ちゃま、ありがとうございました。」
兎の妹ちゃんが可愛く頭を下げてくれたから私は妹ちゃんをギュッと抱き締めた。
「ラフずるいぞ!お姉さんありがとうな。」
私は兎のお兄ちゃんの方にも手招きをした。
お兄ちゃんは躊躇うことなく私に抱きついてくれた。
可愛い‼癒される~‼
「お姉さん好きだ!俺と番になろ?」
兎のお兄ちゃんにプロポーズされてしまった。
「ごめんね!たぶん私みたいなおばちゃんより若くて可愛い番が居るはずだからね。」
お兄ちゃんは口を尖らせて拗ねた顔をした。
可愛い‼
「なら、自分ならどうでしょうか?」
「へ?」
突然兄妹のお兄さんがそんな事を言った。
「自分は魔法局に務めているので収入も安定しています。悪い話ではないと思うのですが?」
兎のお兄さんは眼鏡をぐいっと押し上げて言った。
「ごめんなさい!貴方と番になるのは貴方にとって良い話じゃないと思うわ。」
「なぜ?」
「私の妹、ライガイヤの奥さんになるの。」
「!」
「面倒臭いでしょ?職場が魔法局ならとくにね!だから、ありがとうございます!遠慮します。」
兎のお兄さんは苦笑いを浮かべて頭をかいた。
暫く兄兄妹と話をしているとノックの音がして副団長が顔を出した。
「ヒナ、客か?」
「はい!」
「なら俺から言って来るか?」
「何を?」
「どうしても、ナラハ達がお前に昼飯奢りたいんだと。だから、接客中だって言って来る。」
副団長が部屋のドアを閉めようとすると兎の妹のラフちゃんが副団長の腕にジャンプしてしがみついた。
目はうるうるしているし、若干怯えたようにぷるぷるしていたが頑張ったように言った。
「た、助けてくれて……ありがとう!狼さん。」
副団長は優しく笑うと言った。
「俺が怖いだろうに、頑張ってくれてありがとうな。」
あんな優しい顔見たことない………
「狼さん優しい………」
副団長は優しくラフちゃんの頭を撫でてあげていた。
う、羨ましい。
「副団長、ロリコン。」
「ヒナ、聞こえてるぞ。」
「あぅ!いや、つい…うっかり……」
副団長はラフちゃんを抱え直すと私にラフちゃんを抱っこさせ、私の頭を乱暴に撫でた。
「ぎゃー‼髪の毛グシャる!」
「後で直してやる。」
「副団長の馬鹿‼」
副団長はクスクス笑って部屋を出ていった。
クッソー!
「お姉さんは狼さんと仲良し?」
「………そうだね。仲良しかな?」
ラフちゃんはにっこり笑って言った。
「じゃあ、狼さんの番がお姉ちゃまなんだね‼」
「つ、番が私?」
そうなら………良いな~。
副団長が助けに来てくれた時、この人はなんて綺麗で格好良い人なんだって思った。
副団長の番はきっと幸せだ。
ただ、それが私だとは何だか思えない。
「あの人は格好良いからモテるんだよ。」
兎のお兄さんがクスクス笑って私の方に来た。
ゆっくり私の髪の毛を手櫛で直す。
私は一気に鳥肌が立ったのが解った。
「ウルガルド副団長は女性とあんなに親しく話をなさるタイプではありませんよ。」
「へ?」
「女性に人気なのは認めます。ですが、それは獣人であることが世に知られて居ないからだけですよ。獣化したウルガルド副団長を見て恐怖しない女性など存在しないと、獣人の中でも有名な方ですから。」
そ、そうなの?
「あんなに綺麗なのに?」
「!?貴女はウルガルド副団長の獣化を見た事があるのですか?」
「ええ。」
「………ならば、ウルガルド副団長の番は本当に貴女かも知れませんね。」
何だろ、この人良い人。
私はニコッと笑うと言った。
「じゃあ、頑張ってみます。」
「………応援させていただきます。」
私達はニコニコと笑いあった。
鼻たれ、頭痛………風邪薬偉大!
もう少しで終わるかも?




