救出なのか?
頑張れヒナちゃん!
ゆっくりと目を開けると薄暗い部屋に居た。
数人の女性と獣人の子供。
私の横にフォルアンダさんが横たわっている。
捕まったんだな~。
漠然とそう思った。
数人の女性はしくしく泣いているし、獣人の子供は彼女達から離れた場所で抱き合うようにうずくまっている。
「君達、ここが何処だか解る?」
獣人の子供に声をかけると兎耳の5~6歳ぐらいの女の子と10歳ぐらいの兎耳の男の子が私の方を見た。
「僕達に言ってるの?」
「そうよ、君達兎の獣人でしょ?耳が良いんじゃない?」
「………お姉さんは僕達が怖くないの?」
「………怖いわけ無いじゃない‼抱っこしてぎゅーってしたい‼」
思わず心の声が出てしまった。
すると、兎耳の女の子が私の所まで走ってきて抱き付いた。
可愛すぎる~‼
癒される~‼
私もぎゅーっと兎耳の女の子を抱き締めた。
「ラフ!」
「ラズ兄ちゃま!お姉さん優しいの。」
私はお兄ちゃんに手招きした。
お兄ちゃんは少し警戒していたがゆっくり私のもとに来てくれた。
私はお兄ちゃんの手を握ると言った。
「一人で妹を守るなんてさすが獣人ね。偉かったね。お兄ちゃんもぎゅーってして良い?」
お兄ちゃんは目をウルウルさせて私にぎゅーとしがみついた。
可愛い~‼
私は二人をぎゅーと抱き締めた。
「………オッサンの声……5人いる。外に若い声が10人ぐらいかな?」
「私達はお金になるんだって。」
二人は長い耳をピクピクさせて部屋の外の音を聞いてくれた。
「オッサンの一人がこっちに来る。」
妹ちゃんがぎゅっと私にしがみついた手に力を入れた。
「起きたみたいだな。」
オッサンと言われた人物が来ると私は思った。
オッサンだ。
しかもチビデブでうすらハゲ………探偵事務所の所長に似ている。
髪、むしりたい。
「ぐふぐふ、お前良い女だな。ちょっと味見させろ。」
「よるなうすらハゲ!」
「お前、自分の立場が解って無いみたいだな‼」
「………チビデブうすらハゲだったわね!間違っちゃってご免なさい!」
私の挑発にオッサンはイライラした顔で胸のポケットから棒を出した。
「魔法。」
兎耳のお兄ちゃんが呟いた。
私は二人を自分から遠ざけるために突き飛ばした。
二人が自分から離れるのと、自分の体ににスタンガンを当てられたような痺れがはしった。
オッサンは私のもとに来ると髪の毛を掴んだ。
身体中が痛い。
「「お姉さん!」」
オッサンはニヤニヤしながら私の口に錠剤の様な物を押し込んで来た。
これは飲み込んでは駄目なやつだ。
私は口から出そうと抵抗した。
髪の毛を引っ張られ動きを制限される。
「お前の髪はさわり心地が良いな。」
背筋に虫がはったような寒気がした。
私はオッサンの腰に剣があるのに気がつき、それを一気に引き抜くとオッサンが掴んでいる髪の毛を切り去った。
驚いているオッサンの腹に蹴りを入れると、口に入った薬をペッと吐き捨て私はオッサンに妖艶な笑顔をむけた。
「気に入ったならその髪の毛、差し上げるわ。」
その時だった。
外が騒がしくなり、オッサンの後ろにあるドアが乱暴に破壊された。
現れたのは獣人だった。
昔、映画で見た狼男に似ていた。
顔が白銀の毛並みに金色の瞳の狼。
綺麗だ。
「貴様~‼」
低い声が響いた。
部屋に居た女の人達が悲鳴をあげる。
オッサンは狼男の迫力に顔色が真っ青だ。
怯えた兎耳の兄妹が私にしがみついた。
白銀の毛がキラキラして見える………多少誰のだか解らない血が付いているが綺麗だ。
ついつい見とれてしまう。
狼男はオッサンの頭を掴むと言った。
「黒幕はお前か?」
オッサンは狼男の言葉に失神した。
オッサンが意識を手放すと、部屋に残った女性と子供達に恐怖の色が浮かんだ。
狼男は私を見るとゆっくりと近づいて短くなってしまった髪の毛に優しく触れた。
「髪が………」
ああ、私はこの人を知っている。
私は髪の毛に触れる狼男の手を掴むとその手に頬擦りをした。
「勝手に髪の毛切ってごめんね………副団長。」
頬擦りをしている手があからさまにビクッとした。
「なぜ?」
「解るよ!私の髪の毛の心配するなんて副団長ぐらいでしょ?」
副団長は私から視線をそらすと言った。
「怖いだろ?あまり見ないでくれ。」
「怖いわけ無いじゃない‼綺麗だよ。」
「………変な女。」
私はゆっくり微笑んだ。
………そんなことより、さっきから体が熱い気がする。
風邪?
………まさか、さっきの薬?
呼吸が乱れる。
「どうしたヒナ?」
「………さっき………変な薬……口……入れられて………体……熱いの!」
副団長の気配が慌てたのが解った。
狼男がオロオロする姿は可愛い。
暫くオロオロしているうちに二番隊の皆が駆けつけてくれた。
「ウルガルド‼ああ、本格的に変化してんじゃねえかよ。しかも、オヒナ!髪………」
団長を見ると副団長はハッとしてから私をお姫様抱っこした。
「ヒナが一服盛られた‼先に戻る‼後はまかせた!」
「お、おう!大丈夫かオヒナ!」
心配する団長に苦笑いを浮かべて私は言った。
「大…丈夫!熱い…だ……け…」
「妙に色っぽいな。」
「………早く解毒してもらわないと別の被害が出そうだ。」
「そうだな。じゃあ、早いとこ頼む。」
「ああ。」
副団長はそれだけ言って走り出した。
狼男の副団長は滅茶苦茶足が早くて、私は副団長のモコモコの首にしがみついて何だか解らない感覚に声が出ないようにつとめた。
「ヒナ、助けるのが遅くなって本当にすまん。」
「だい……あっ……ふくだ……んっ」
「………喋るな。舌を噛む。」
私は舌を噛まないように、さらに副団長の首にしがみついた。
「あああああ、クソ!」
なぜか副団長が小さく毒づいていたが私は気にせずぎゅーっと副団長にしがみついたのだった。
が、頑張れ副団長~‼




