特別 ウルガルド目線
娘が爆睡です‼
私の布団にヨダレをたらしながら………
「ウルさんはヒナちゃんが好きですか?」
「………ああ。」
モアにライガイヤ殿の執務室によばれストラにソファーに座るように言われ座ると、モアが紅茶を俺の前に置いた。
そして、俺が紅茶を飲み始めるとストラがさっきのセリフを吐いた。
「それは、彼女にしたいって言う好きなんですよね?」
「………」
彼女に………したいのか?
ヒナが俺の彼女?
何故だかヒナは誰のものにもならない気がする。
「とくに、彼女にしたいと思った事がない。」
口に出して言った言葉が自分の中でモヤモヤとうずまく。
「じゃあ、彼女にしたいと思ってみて下さい。」
「なんだそれ………」
ヒナが俺の彼女………
この感情を俺は認めて良いのだろうか?
ヒナは最初から他の女とは違って見えた。
俺が特別な感情を持ったらヒナは俺から離れていくんじゃ無いのか?
「彼女にしたいと思ったらヒナは俺の側にはよってこないと思うぞ。」
「!………そうかも………」
やっぱりそうなのか………
モヤモヤが増す。
「ヒナちゃんが自分から寄って行く男の人なんて草太君だけだと思ってたのにウルさんにはくっついて行くからウルさんがヒナちゃんを幸せにしてくれる人だと思ってるのに~!」
ソウタって誰だ?
モヤモヤがさらに増す。
「ソウタって人って誰?」
モアが不安そうにストラに聞いた。
「草太君はヒナちゃんの双子のお兄ちゃんだよ。草太君とヒナちゃんは本当に仲良しだったから………昔は草太君がヒナちゃんを守ってる騎士様って感じで『雛菊は俺が守ってやんなきゃ駄目なんだ‼』が口癖だったよ。………今は違うんだけどね………」
ストラの言葉に俺はキョトンとしてしまった。
「ヒナは、ヒナギクって名前なのか?」
「ヒナちゃんに言っちゃ駄目だよ!ヒナちゃん雛菊って呼ばれるの嫌がるから。」
「名前呼ばれるのが嫌いなのか?」
「違うよ。"雛菊"はヒナちゃんの特別なの。大事な人が出来た時に呼んでもらうために他の人には"ヒナ"って呼んでもらってるんだよ。」
ヒナの特別………
「だから、特別になる前のウルさんは言っちゃ駄目ですよ。」
「………ああ。」
もし、ヒナの特別な名前を俺以外のやつが呼んでいたら………
俺は………
感情に嘘がつけなくなっていく………
このまま、ここに居ては駄目だ。
俺は少し冷めた紅茶を飲みほすと立ち上がった。
「帰る。」
「待って下さい‼ウルさんにはヒナちゃんを幸せにしてほしいんです‼」
俺は苦笑いを浮かべ、ストラの頭を撫でた。
「ヒナちゃんは変態に好かれるから、下半身露出した人とか滅茶苦茶沢山出会してて………男の人が苦手なんだよ。その中でもウルさんは特別なんだよ。だから、ヒナちゃんを好きになってくれるなら幸せにしてほしいです。」
ストラの必死さが伝わる。
………ヒナは別にそんなの望んで居なそうなんだが………
俺はゆっくり言った。
「ヒナは好きだ。幸せにしたい。だから、俺のペースでやるからお前らは余計な事をするな。とくにモア!」
「私!」
「ヒナはあからさまな態度に出たらダッシュで逃げると思うぞ。」
「ぐっ。」
ヒナを手にいれたい。
こんな感情を持たれてもヒナには迷惑かも知れない。
けど、ヒナを知れば知るほど惹かれてしまう。
ならば、俺の側が一番居心地の良い場所にしてやれば良い。
離れられなくなるぐらい、ヒナの居心地の良い場所に………
自分の気持ちに正直になれば、ストンと納得出来た気がした。
ヒナにはバレないように、ヒナが離れていかないように………
「お前らは余計な事をしない!解ったか?」
「「は、はい。」」
二人にそれだけ了承させ、俺はその場を後にしようとした。
だが、扉の前でライガイヤ殿と出くわした。
「ウルガルド、もう帰るの?さっきヒナちゃんが団員数人と面白いことしてたよ!」
「面白いこと?」
「ヒナちゃんを赤面させられたら一回デート出来るんだって!」
俺は思わず溜め息を吐いた。
「俺も取り合えずまざって、耳元で『雛菊』って言ったら思いっきり蹴られた。」
また………
モヤモヤが………
俺はライガイヤ殿の肩をポンポンと叩くと、肩を掴んでライガイヤ殿だけに聞こえる声で囁いた。
「ライガイヤ殿、ヒナの名前を軽々しく言わないで下さい。次に言ったら、嫉妬で貴方を噛み殺してしまいそうだ。」
ライガイヤ殿は楽しそうに声を出して笑うと言った。
「解った‼ウルガルドがそう言うなら俺は言うこときくよ!」
ライガイヤ殿は俺の背中をバシバシ叩いて笑った。
なんでこの人は嬉しそうなのかが解らない。
俺はライガイヤ殿から逃げるようにその場を後にした。
娘よ!
抱っこしようとしたら「うぅん(キレぎみ)」は酷いよ!
私の寝る場所返して………
ヨダレ止めて………




