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付き合ってません

お腹がすいています。

副団長は手があくと私の髪の毛をいじる。

イライラした後も髪の毛を触りに来る様になった。


「今日は何があったんですか?」

「マックとマークとマックスの三人が~」


副団長のグチを聞きながら髪形が変わっていくのをドキドキしながら待つのは楽しい。

団の皆には私がお願いしてやってもらっている事にしている。

モアさんがたまに副団長に髪の毛を整えるお願いをしに来るらしく皆、『副団長は手先がきようだからな~!』っと納得している。

心置きなく私の髪の毛をいじった後、副団長の雰囲気が柔らかくなるのは私以外気がついていないと思う。


「………出来たぞ。」

「ありがとうございます‼」


私が笑顔を向けると副団長は柔らかい笑顔をくれる。

この人無駄に格好良いんだけど………無駄に!


「無駄!」

「なにがだ?」

「………いや、こっちの話です。」


ヤバイヤバイ、この人私を惚れさせようとしてるのか?

そう簡単に惚れてたまるか!


「ヒナ、さっき外回りの時に偶然お前が食いたいって言ってたシュークリームが売ってたから買っといたぞ。」

「副団長、好き!」

「そうかそうか。シュークリーム5個入りだからストラの所でお茶でもしてきたらどうだ?」

「良いの?」

「仕事終わってるんだろ?行ってきて良いぞ。」

「マジで副団長良い男!愛してる!」


私は副団長に手をふってシュークリームのもとに急いだ。





「ヒナちゃん………」

「?」

「簡単に『好き』だの『愛してる』だの言うのは正解なの?」

「………解んない!けど、副団長も嫌がってないからセーフじゃん?」

「嫌がって無かったらセーフ……なの?」


紅茶を淹れてくれていたモアさんは嬉しそうにクスクス笑った。


「ウルガルドは幸せ者ね。彼女が『好き』も『愛してる』も言ってくれるんだから。」

「彼女なんだよね?」

「彼女じゃないよ!」

「「まだ、付き合ってないの?」」

「なんで付き合う前提なの?」


モアさんもミッちゃんも深い溜め息をついた。

私は気にせずモアさんの淹れてくれた紅茶を一口飲んだ。


「付き合いたく無いの?」


ミッちゃんの言葉にもう一口紅茶を飲むと私は言った。


「別に?」

「「何で!」」

「今のままで十分楽しい。」


モアさんが物凄く大きな溜め息をついた。


「ウルさんが他の女の人と仲良くしてたらどうするの?」

「?………仲良くなれそうなら紹介してもらう。」

「何で?」 

「副団長と仲良くしていたいからかな?」

「自分が彼女になるんじゃだめなの?」


私は暫く考えながらシュークリームを食べてから言った。


「彼女になるって事はさ、抱き締めあったりキスしたりそれ以上のあれやこれやをするって事でしょ?………なんか、無理。」

「「無理なの!」」


さっきから、モアさんとミッちゃんのシンクロ率が半端ない。


「無理。」

「「何で!」」

「だってさ~………変態にいろいろ求められたり触られたり見させられたりしてきたからなんか無理。」


二人は暫く黙ると言った。


「ヒナちゃんは男の人が苦手?」

「………そうかも?」


二人は顔を見合わせてから紅茶を飲み始めた。


「でも、普通の男に比べたら副団長は嫌じゃないよ。」


二人は一緒にシュークリームを食べ始めた。


「なんか駄目な事言った?」

「「作戦会議してから出直す‼」」

「何の作戦会議?私もまぜてよ!」

「「駄目!」」


仲間外れ?さびしい‼

私はシュンとして3個目のシュークリームを頬張った。

このシュークリーム滅茶苦茶旨い!

副団長好き。

また買ってもらおう。

今度は私一人で食べよう。

副団長にお返ししないとな~。


「モアさん、副団長って何が食べ物だと好き?」

「ウルガルド?………何だろ?」

「ヒナちゃんが作るんだったら、角煮が良いよ‼ってかヒナちゃんの角煮が食べたい。」

「醤油なんて無いでしょ?」

「あるよ‼先生にこの前買ってきてもらったの………味噌もあるよ!いっぱいあるから分けてあげるよ。」

「ありがとう!角煮ね。」


こうして私はミッちゃんに味噌と醤油を授けられた。





角煮を煮ていると私の部屋にノックの音が響いた。


「は~い。」


ドアを開けると副団長が立っていた。


「スゲー良い匂いがする。」

「ああ、角煮を煮てるので………味見します?」

「良いのか?」

「ぜひ………どうぞ、入ってください。」


私がドアを開けて入るように促すと副団長はフリーズした。


「どうしたんですか?」

「未婚の女性の部屋に一人で入るのは………」

「副団長が私を襲うんですか?想像がつきません。」

「襲ったりしない。」

「知ってます。早く入ってください。」


私はそのまま副団長の背中を押して中に入ってもらった。




「………旨い。」

「良かった。」


私は副団長に角煮と煮たまごを一個すつお皿にのせて渡し、食べてもらっていた。


「ストラも料理が上手かったが、ヒナも上手いな。」

「ミッちゃんに料理を教えたのは私だからね!私達が居た孤児院は皆料理上手よ。」


副団長は角煮が気に入ったようだ。


「おかわり。」

「味見って言ったでしょ?」

「足りない。」

「駄目!これはミッちゃんに食べてもらう用に作ったんだから。」

「後、1つだけ。」


いつもキリリとした副団長が子供の様で可愛い。

私は副団長の可愛さに負けて角煮をもう1つ皿にのせてあげた。


「ありがとうな。」

「これで終わりですよ。」

「………」

「終わり!」

「………解った。」


もう、何なのこの人可愛いとか困る。


「今度は俺のために作ってくれるか?」

「良いですよ。」

「楽しみだ。」


副団長は本当に幸せそうに笑った。

私はそんな副団長から視線をそらしたのだった。

角煮が食べたい………

自分じゃあ上手に作れない………

旦那様作ってくれないかな~


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