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副団長

短めです。

二番隊に戻ってくると、私は執務室に一人でいる副団長にB5の封筒を持って言った。


「何だこれ?」

「ロンシャス様からです。」

「また、あれか。」


また?………

ロンシャス様、学習して~。

私は苦笑いを浮かべた。


「中味が何か知ってるのか?」

「あ、はい。聞くんじゃなかったって思ってます!」

「これを渡した後のモアの眉間のシワが凄いんだ………美容に悪いから持って来るなと言われてる。」


私はロンシャス様の事を思い、御愁傷様と心の中で呟いた。


「とりあえず預かっておく。」

「はい。」


副団長はゆっくりと溜め息をついた。

私はイスに座ったままの副団長の頭を撫でてあげた。

驚いた顔の副団長に、自分の行動が失敗だったと後悔する。


「あ………つい!ごめんなさい。」

「いや、ヒナは不思議な女だな。」

「へ?」

「面倒臭く見えるのに、こうやって俺のストレスを簡単にどうでも良い事の様に思わせる。」

「………役にたってるって事ですか?」

「そうだ。」

「なら、良かった。」


私が笑うと副団長はイスから立ち上がり、逆に私の頭を乱暴に撫でた。

髪の毛がグチャグチャだが、何だか嬉しい気がしてしまうのは何故だろう。


「副団長、髪の毛が酷いことになった!」

「………悪い。」


副団長が申し訳なさそうに私の頭を手櫛で直してくれた。

副団長の長い指が髪の毛をすくのが何だかくすぐったいような気持ち良いような変な感触でゾクゾクした。


「直ったぞ。」

「………どうも。」

「?どうした?」

「何でも………」


髪の毛とかされて、ゾクゾクしたとか言えるわけない。


「………ヒナの髪の毛はさわり心地が良いな。」

「………どうも。」

「ちょっといじらせろ。」


副団長は私の返事も聞かずに私の髪の毛を編み始めた。



副団長は物凄く器用に私の髪の毛を結い上げた。

はっきり言って可愛い。

右側の髪の毛を少しだけ取ると左に向かって編み込んでいって綺麗にまとめあげられている。


「可愛い。」

「ヒナぐらい髪が長いと楽しいな。」

「スッゴク満足そう。」

「楽しい。モアの髪の毛は飽きた。」


副団長は髪の毛に触るのが好きみたいだ。

私は可愛い髪形が出来て嬉しかった。

自分だけでは確実に出来ない髪形だし、髪の毛をいじるのが苦手な私は副団長にお礼を言うことに決めた。


「副団長、ありがとうございます‼滅茶苦茶可愛い‼」

「………ヒナ。」

「はい?」

「たまにで良いから、髪の毛をいじらせてもらって良いか?」


こんな可愛い髪形をまたやってくれるの?

むしろお願いしたい。


「喜んで!」


私が笑顔で答えると副団長は嬉しそうに笑ってくれた。

副団長の無防備な笑顔は滅茶苦茶幼く見える可愛い物だった。

ヤバイ‼

ちょっとキュンとした。

あんまりキュン、とかしないのに‼

普段と違う笑顔とか止めてほしい‼

心臓に悪い。


「どうしたヒナ?」

「副団長が貴族女性にモテモテなのはそのキラースマイルのせいですか?」

「俺は基本嬉しい時と楽しい時しか笑わない。貴族女性と居て楽しい時なんて出会った事がないぞ。」

「何で?」

「………男で髪結いしたがるやつなんて居ないだろ?だから、モアにしかやった事がなかったし、貴族女性は化粧が臭いのに距離が近い。息を止めたらバレてしまうから俺は貴族女性が苦手だ。」


ああ、貴族女性様達は可愛く見られたくてしていた事のせいで嫌われていますよ~。

私は思わず吹き出してしまった。


「髪結いが好きなのがそんなに可笑しいか?」


副団長が不満そうな顔をした。


「私が住んでいた所では男性で髪結いをする人は沢山居ましたよ!だから副団長を変だとは思いません。ただ、副団長のためのお洒落が嫌われる原因なんて可笑しいと思って。」

「望んでない。」

「確かに化粧は濃かった。」

「その点、ヒナは薄化粧だよな。」


マジマジと副団長に顔をのぞかれた。

止めてくれ‼

副団長の整った顔が近い。


「副団長のお顔も美しいです!」

「止めろ‼気色悪い。」


副団長は私の顔をのぞくのを止めた。

無駄に綺麗な顔を近づけないでほしい。

たぶんあの近い距離にも普通の女子はドキドキするに違いない。

私は、化粧が崩れていたら怖いから寄らないでほしいぐらいだ。

女として終わっている感が否めないが仕方がない。

私はこう言う女だ。


「ヒナはやっぱり面白いな。」

「それって誉め言葉ですか?」

「ああ、勿論。」


副団長はクスクス笑いながら書類整理を再開し始めた。

副団長の表情は私の前ではコロコロ変わるようになったと思う。

こんなに親しみやすい人居ないんじゃ無いのか?

私は何故か、副団長が表情を変えるのは私の前だけだと良いと思ってしまった。

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