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ドS?

鼻がムズムズする。

騎士団の中でも一番厳しいのは副団長だと思う。

必要以上のお喋りは苦手そうに見えるし、訓練と言えば手加減はしない。

はっきり言ってべらぼうに強い。

私だって腕に覚えのある人間だと思うけど、多分………副団長には勝てないと思う。


「お前らもうバテたのか?」


副団長が練習場に倒れている団員に向かってそう言うと呻くような声が響いた。


「「鬼。」」

「「化け物。」」


副団長は大きなため息をつくと言った。


「殺されたいようだな。」

「「「「ごめんなさい‼」」」」


私はそんな光景を見ながらクスクス笑ってしまう。

誰にも気がつかれては居ないから控え目にだが。


「もうすぐ昼だし練習はひとまず終わりだ。昼飯一緒に来るか?」


副団長の言葉に皆は嫌そうな顔をして首を横にふった。


「全員一緒に来ないんだな‼解った、後で文句言うなよ‼」


副団長は練習場から隠れて皆を見ていた私の方に視線を向けて言った。


「ヒナ!メシ行くか?」


私は思わず笑いながら言った。


「行く~!」


他の団員達がギョッとしたのが解った。

私はゆっくりと副団長に近寄って行きながら言った。


「この前連れていってもらったお肉のお店が良いです!」

「解った。」


副団長が同意してくれたので、私は嬉しくて副団長の腕にしがみつく。

回りがざわっとした。


「副団長ずるい‼」

「腕なんて組んだらヒナ姐さんのおっぱいが腕に~!」


私と副団長は密着している腕を見た。

勿論、私の胸は副団長の腕に押し付けてしまっている。


「………私、もしかして痴漢行為をしてます?」

「痴漢は俺がヒナの体に触るなどの行為で発生する言葉じゃないのか?」

「いやいや、痴女って言葉はこの辺には無いんですか?」

「ああ、あるな!お目にかかった事は無いが………だが、ヒナはわざとしてるわけじゃ無いだろ?」

「それは勿論‼じゃなかったら腕にしがみついた時点でハーハーしてますよ‼」


その間も私は副団長の腕にしがみついたままだった。


「副団長、不快なら止めます。」

「モアもよくくっついて来るから俺はなれてるし、好きにしろ。」

「そうですか?じゃあ、遠慮なく。」


私達は腕を組むことを了承しあった。


「副団長ずるい‼変わってくれよ~‼」


私はゆっくりと微笑み言った。


「下心しか無いやつと腕なんか組まないよ‼」

「肉体的にボロボロの奴らを精神的にもボロボロにするとは、ヒナはドSだな。」


肉体をボロボロにしたやつに言われたくないと思ったが黙っておいた。


「メシ行くか。」

「肉~。」

「はいはい。」


副団長の反応に私は思った。


「副団長はお兄ちゃんじゃなくてお母さんみたい。」

「やめろ。」


私はまた、クスクスと笑った。





副団長はお母さんだと思う。

まず、面倒見がよくて美味しい店を知っていてフラりとよったら洋服屋さんでは私に似合う服をチョイス!

しかも、私の好みにドストライク!

センス半端ない。


「副団長って何者?」

「なにがだ?」

「いろんなセンスが半端ない‼」

「………うちの家族のせいかもな?母親も父親も人様に似合う服を選ばせたら右に出るものは居ないし、モアも王宮のメイドの中でセンスを磨かれているから………口うるさいお節介ばかりが俺の家族だからな。」


私は何となく納得してしまった。


「そう言えば、副団長のお父さんには会えなかった。どんな人なんですか?」

「穏やかな人だ。腕も立つお袋の事が大好きな普通のおじさんだ。」

「今度会ってみたいな~。」

「多分………すげー喜ぶと思う。」


私は苦笑いを浮かべた。


「まだ、副団長の彼女だと思ってるんですか?」

「俺の家族はヒナを気に入ってしまったから、彼女に仕立てあげようとしてるに違いない。」


副団長の苦々しげな言い方にまた笑みが浮かんでしまう。

副団長は私に色々な話をしてくれるようになった。

普段無口な人が私にはいっぱい喋ってくれる事が嬉しくてニマニマしてしまうのは秘密だ。


「ヒナ、あそこのブラウニーは絶品だぞ。」

「食べる~!勿論副団長の奢りで‼」

「はいはい。」

「お母さ~ん!」

「やめろ‼」


副団長とのやりとりは楽しい‼


「ヒナちゃんにウルさん~!」


そんな時声をかけられ振り返ると、そこに居たのはミッちゃんとライガイヤだった。


「ミッちゃん!婚約者とデート?」

「違うよ‼先生はお財布‼」

「ミッちゃん………」


私の妹は何時からこんなことを言う子になってしまったのだろう。

哀れみをこめた眼差しでライガイヤを見ると、何故だか物凄く嬉しそうに笑っていて怖い。


「ライガイヤ、ミッちゃんにこんなこと言わせてて良いの?」

「お財布なら、一生必要とされるって事だから嬉しいよ‼」

「え~………ちょっと変態臭い。」


その場に居た全員が黙った。


「え?なに?」

「………ヒナちゃん………言いづらいけど………先生は変態だよ。」

「………………ミッちゃんって本当に変態ホイホイだよね。」

「ヒナちゃんに言われたくないよ‼」


私達の会話にライガイヤが首をかしげた。


「変態ホイホイ?」

「ミッちゃんは下半身露出した変態によく追いかけられたり、電車で痴漢にあったり変態が好む可愛さを持ってるみたいなの。」

「ヒナちゃんだって真っ赤なヒールで踏んで欲しいとか、鞭で叩いてくれって真っ裸なオッサンに追いかけられたり、定番の下半身露出したおじさんが出てきた時に『一時間ここで、そのままで居れたら良いことしてあげる!』ってエッチく言っておいて通報して捕まえさせるとか酷いあつかいして変態ホイホイじゃん!」


副団長がドン引きしているが、知るか!


「社会的制裁を加えるなら物理攻撃より捕まえてもらった方が効果的。」

「解るけど…………そんなことよりヒナちゃんとウルさんはデート?」


私は副団長に視線をうつした。

副団長は否定も公定もしなかった。

そればかりか、顔色すら変えていない。


「そんな風に見える?」

「見えるから聞いたんだけど?」

「デートっぽいけど、お昼ご飯食べに来ただけ。」


ミッちゃんは副団長の方を見つめた。


「……………ウルさんはヒナちゃんに滅茶苦茶信用されているんですね‼ヒナちゃんは基本、一人でじゃないと自分の買い物しない人なんで!」


私は暫く考えてから言った。


「副団長はセンスが半端ないから!」

「解る!ウルさんの家族皆ハイセンス!」

「「ね~!」」


私とミッちゃんはニコニコと笑いあった。


「道君。そろそろ行こうか?」

「あ、は~い!じゃあ、ヒナちゃんお仕事頑張ってね‼」

「ありがとう‼でも、ほとんど終わってる。」


副団長は軽く頭を下げながら言った。


「滅茶苦茶助かっている。」

「そう言ってもらえると嬉しい!」


私がニコッと笑うと副団長も柔らかい笑顔を向けてくれた。

何だかこの日は得した気分を沢山味わえる1日だった。

騎士団に戻ると団員皆に泣かれたのはウザかったけど………


息子の声がガラガラです……(ぐすん)

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