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密着と火竜

 お待たせしました。できれば一時間後にもう一話……

 まずはデリックと魔法使いが押さえこんでいる魔物、特に魔法による防御に専念してもらいたいのでワイバーンを中心に攻撃を加える。


 【索敵】でもう一度姿を確認。スピードと角度からして20秒程でここに突っ込んでくるだろう。しかも莫大な魔力を持っていて、生半可な魔法で受け止められるとも思わない。


「まず『(アース)(ウォール)』や『マジックシールド』じゃなんの役にも立たないな。『神聖結界(サンクチュアリ)』なら……駄目だな、出力が大きすぎる」


 必死に考えるがどうしてもあの巨体を受け止めるビジョンが見えない。『屈折(リフレクション)』も『拒絶(ブロック)結界(フィールド)』も今からやってくる脅威にとってはせいぜい障子を突き破る程度で終わってしまうだろう。


「なら止めなければいいだけの話だ。 聖なる大地よ 穢れし魂に救いを 『土葬(べリアル)』!」


 俺が魔法を唱えると冒険者たちのいた所が沈んでいく。一瞬冒険者たちに動揺が走るが、俺の魔法だと気付いた隊長が冒険者を落ち着かせていた。


「落ち着け! 味方の魔法だ、足元が安定したら衝撃に備えて防御姿勢を取れ!」


 冒険者を纏めている隊長も、『フェンリル』の人たちには及ばずともなかなかの実力者のようだ。瞬時に状況を判断し、こちらの意図を理解してくれる。


 今使ったのは本来なら魔物を生き埋めにする中級魔法。しかし、それを応用すれば、ちょっと隠れる程度の穴を用意できる。俺の回復して来た魔力量でなんとか全員を穴の中に押し込む事ができた。もうちょっと余裕があれば『落とし穴(ピットホール)』でも良かったのだが、あれだと突然足場が消えて落ちてしまう。それと比べてこの魔法は比較的ゆっくりと地面が下がっていくので味方にも使いやすい。


「――『マジックシールド』、そろそろ激突します、私たちも逃げましょう!」


 Sランクの魔法使いが地上のフレイムボアを足止めしつつ叫んだ。確かに激突まであと8秒程しかない、急がなければ。


 とは言ってもすでに後ろの穴は冒険者たちが崩落して生き埋めにならないように結界で屋根を形成している。それなら……


「新しい穴を作りますよ、『落とし穴(ピットホール)』!」


 近くにもう一つ、半径3mほどの小さい穴を作り、その中に四人で飛び込む。穴はかなり狭いので『フェンリル』の僧侶のお姉さん――ではなく、魔法使いのお兄さんと密着してしまった。別に俺は野郎のぬくもりなぞ欲しくない。


「今ので魔力を使い果たしたんで、後はなんとかお願いしますね? ええと、――」

「私はアルベルトです。私たちの下敷きになっている重戦士がデリック、私の頭を踏みつけている僧侶がフィリアと言います」


 こんな状況だと言うのにユーモアを交えて自己紹介をするアルベルトさん。その頭上からはフィリアさんの抗議の声が聞こえてくるが、ここから見えそうで見えないその領域はわざとやっていらっしゃるんでしょうか?


 その直後、激しい揺れと物が地面に勢いよくぶつかる音がした。想像以上の衝撃に思わずアルベルトさんの方に体を一層寄せてしまった。


 そんな事を思っているのも束の間、今度は鼓膜が破れるのではないかと言うほどの激しい咆哮が聞こえる。多分、これを正面から食らったら思わず硬直してしまうだろう。


「っ!? ……何よこれ、何でこんな化け物がこんなところに!?」


 その咆哮に当てられたのか、フィリアさんが動揺したように叫ぶ。それに、体から漏れ出てくる魔力だけで周囲を威圧する力。これってもしかして……


「とにかく、一度地上に上がらない事にはどうしようもありませんね。大地よ『リフト』!」


 アルベルトさんがゆっくり慎重に地面を上昇させる。そして、地面に上がった俺たちは信じられない物を目にすることになった。


 上に上がって最初に視界に入ってきたのは赤く、ごつごつとした何か。それが何なのかと疑問に思うが、その正体は一瞬で分かることになる。


 それは魔物の尻尾。少し視線をずらすと鱗におおわれた太い足、巨大な胴体と羽、そして頭が見える。大きさは……【鑑定眼】によると、150mという途方もない大きさ。


 その理不尽ともいえる強さのために、長年討伐さえ諦められていたその魔物。


「これは……」


 すぐ近くで三人が絶句しているのがわかる。そりゃそうだ、俺だってまさかこんなバケモンだなんて思わなかったし。


「……火竜」


 デリックの絞り出すような声が聞こえる。そしてそれに呼応するように、そいつの首がこちらに向いた。


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