討伐と昇格
最近エタるんじゃないかと言う恐怖を抱くようになってきた……前以上のスランプが来てる……
翌朝、目が覚めた俺は食堂まで降りて行く。俺が朝食を食べていると途中でジョズも下りてきた。
俺はパンを齧りながら今日の予定を考える。ジョズは今日もやる気満々なようで、一刻も早くランクを上げたいと言っていた。
正直なところ、俺はそこまで必死になってランクを上げる必要が無い。それでも金を稼ぐために依頼は受けないとな。少し高ランクの依頼を受けて金を稼いでおくのがいいかもしれない。確かランクはあくまで目安であり、依頼にランクの指定が無い場合はたとえSランクの依頼を受けようとも構わないのだ。もちろん、失敗すれば違約金を払わされることになるし、下手すれば命を落とす可能性さえあるが。
ジョズは新しい武器が出来た時に大怪我を負って振れないようじゃ困ると言って、簡単な依頼を中心に受けると言っていたな。その間にでかい仕事でも受けておくか?
その後もいろいろと考えながら、俺はジョズよりも一足先にギルドへ向かう。
取りあえず、魔物の強さなどは度外視して、ここから近い所で受けられ、且つ単価の高い依頼を下から探していく事にした。ランクが低かったり、制限があったりして受けられないものもあるだろうが、勉強としては充分だろう。
俺は掲示板のうち、Fランクの依頼が貼ってある所から順番に読み進めて行く。
テンプレのような犬の散歩、庭の草むしり、道路の掃除エトセトラ……ザ・雑用といった依頼ばかりだ。
その次にEランクの掲示板を見る。
この辺りからは街の外に出てくる依頼も混ざる。薬草の採集やスライムの退治などが主だ。
そしてDランク、ここからは-と+で少しずつ依頼の難易度が変わってくる。D-はコボルト、Dでゴブリンやグレイウルフ、D+になるとそいつらの群れや巣の殲滅、さらには魔石の回収依頼などが多くなる。ランクD付近の主な討伐依頼としてはそんなものだ。
Cランクに上がるとより大きな群れの殲滅やオーク、オーガの討伐が出てくる。中でも一番変わる部分はやはり護衛依頼が出てくるところだろうか。街から街へ、ただの討伐だけではなく対象を守るという行為は冒険者への壁の一つでもある。
Bランク以上は要人の護衛や強力な魔物の討伐がほとんどになる。ちなみにこのギルドにあった一番高い依頼はS-ランクで上位竜なるものの討伐だった。
これを受ければ一生遊んで暮らせる金が手に入るが、条件としてAランク以上しか受ける事が出来ないようだ。いや、受けないけどさ。
俺は無難にC-の依頼で、グレイウルフの群れの討伐を受ける。紙を職員さんの下へ持っていくと、どうやらここからかなり近い――昨日のゴブリンの巣よりも――場所にあるようで、群れが大きくなりすぎて街に被害が出ないうちに殲滅してほしいという、急ぎの依頼だったようだ。
「でもこれ、C-ランクの依頼ですよ? 大丈夫ですか?」
「問題ありません」
受ける際に職員さんに心配されてしまったがグレイウルフの100や200くらい、簡単に倒してみせる。
俺は証明書を受け取ってギルドを出て行く。途中ではジョズと会うことはなかったので受付の職員さんと話している間に入れ違ってしまったのだろう。
ウルフの群れはゴブリンの巣とは反対方向にで軽く走って5分……今の俺のステータスで5分なので、大体6km程の所にあった。
群れの数はざっと30体程、群れの中に一際大きい奴がいるのでおそらくそいつがボスなのだろう。
[ビッググレイウルフ lv23
【生命力】162/162
【魔力】15/15
]
面倒くさいので一気に片付けてしまおうと魔法を放つ。
「『水弾』」
俺が群れに近づきながら放った無数の魔法はとてつもない速さで飛んでいき、避ける暇もなくグレイウルフの体を貫通する。
それだけで半数のグレイウルフが倒れ、残りは15体ほど、こちらに気付いた群れはビッググレイウルフを中心に警戒態勢をとるがこの程度ならすぐに終わる。
俺は木刀を抜くと一気に加速して普通のウルフとビッググレイウルフを1体ずつ斬る。俺のステータスに物を言わせた加速に一匹たりとも反応できず、あっさりと絶命する。
親玉が光の粒子となって消えて行くのと同時に証明書が発光する。どうやら依頼完了のようだ。
自分達のリーダーが一瞬で殺される姿をみたウルフ達は全員が散り散りになって逃げて行く。本来は依頼が完了しているので――それって殲滅依頼って言うのか?――ここで逃がした所で問題はないのだが……
「この辺に新しく巣を作られるのも問題だしな、『水刃(ウォーターカッタ―)』」
逃げようとしたグレイウルフ達は俺が魔法名を唱え終わるのとほぼ同時に体が真っ二つに割れる。レベルが上がったおかげか、魔神の加護の力なのかは知らんが、やたら魔法の威力が上がっているな。意識して手加減しないとセレナさんが真っ二つになっていた可能性もあったので気をつけなくては。
群れを殲滅した俺はドロップ品を拾ってギルドに帰ろうとするが、後ろの茂みから魔物が飛び出してくるのを【索敵】でとらえると、その魔物を木刀で受け止めた。
魔物を受け止めた俺は、思っていたよりも力が強い事に驚く。さすがにこのステータスを押し切られるほどではないが、感覚的にはグレイウルフよりも数段強い。
[ホワイトウルフ lv45
【生命力】302/302
【魔力】15/15
]
ホワイトウルフか。強さもこの森の魔物のレベルを考えると破格の強さだ。何でこんな所にいるんだか。
昔の俺だったらやばいだの死ぬだの言って戦っていたような気もするがこの程度なら簡単に倒せるようになった。
俺は木刀でホワイトウルフの首を綺麗に刎ねる。あっさりと絶命したホワイトウルフのドロップ品を回収してギルドに帰った。
俺はギルドに戻って受付の職員さん――かわいい女の子だった――に依頼書とギルドカードを渡す。
「はい、グレイウルフの群れの殲滅ですね……おや? これは……」
ギルドカードをよく見ると、ゴブリンの巣の時にはついていなかった謎のマークがついていた。
「失礼ですが、グレイウルフとビッググレイウルフ以外に、何かウルフ系統の魔物と戦闘をされましたか?」
「え? あ、はい。ホワイトウルフを倒しました」
俺がなんのけなしに言うと職員さんは顔色を変えて慌てた様子で話しかけてきた。
「ほ、本当ですか!? ホワイトウルフはB-の魔物ですよ!? ……っすみません、取り乱しました。少々お待ちください。上に報告してきます!」
職員さんはそう言うと全速力でおくに引っ込んでしまった。それでいいのか。
しばらくすると落ち着きのある壮年の男性がやってきた。
「お待たせしました。話によるとグレイウルフの群れの殲滅の依頼中、ホワイトウルフと交戦したということで間違いないですね?」
「はい」
壮年の質問に答える俺。その後もいくつか問答をして、どこで出会ったのか、それはいつごろか等を話した。最後にホワイトウルフの魔石を出してやると職員さんは興味津々に魔石を眺めていた。
「……失礼しました。ホワイトウルフの件については別に調査依頼を出しましょう。それで報酬の方ですが、群れの殲滅とホワイトウルフの討伐。更にホワイトウルフの魔石も買い取ってよろしいですか?」
「はい、構いません」
「それでは、群れとホワイトウルフの討伐で大銀貨3枚、さらにホワイトウルフの魔石が銀貨5枚、合わせて大銀貨3枚と銀貨5枚でよろしいですか?」
言いながら職員さんは8枚の硬貨を手渡してくる。俺はそれを確認すると頷いた。
「はい、それでグレイウルフから出た魔石はギルドで買い取ってもらえるのでしょうか?」
「はい、魔物の素材は此処からみて裏側にあるカウンターまで持っていけばギルドで決められた価格で買い取らせていただきます」
俺がついでに尋ねると職員さんは丁寧に教えてくれた。できる人だ。
俺は職員さんに礼を言って去ろうとすると最初に対応してくれた女の子が走ってきた。
「ちょ、ちょっと待ってください! まだギルドカードがお返しできてませんよ!」
女の子の職員さんが持っていたのは俺のギルドカード、完全に忘れていたな。
彼女は俺にギルドカードを渡しながら説明をする。
「今回の依頼で強さが適切だとのことで、上からの指示でランクがC-にまで昇格しました。C-からは冒険者用の金庫が使えるようになります。パーティーに所属しているのでご存じかとは思いますが、同じように個人の金庫を持つ事が出来ます」
おれは職員さんの説明を聞きながら少しだけ嬉しく思う。実はジョズに先を越された事を少しだけ気にしていたのだ。
これでジョズより上に立てたな、などと大人げない事を考えながら礼を言ってギルドカードを受け取る。
まあ一ヶ月後にはジョズもCランクになっているんだろうし、余りうかうかしていたらまたぬかされてしまうだろう。
俺は少しだけ子供っぽい事を考えながらギルドを後にした。
今日病院行こうとしたら予約がいっぱいで来週の金曜以降じゃないと無理と言われました。
予約制度が始まってから逆に気軽にふらっと行けなくなった気がします。




