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遺志と第二ラウンド

 シリアスの難しさに打ちのめされた俺氏。おかしな所だらけかもしれませんがもう笑ってやってください。

 その光は十秒もしないうちに消えた。しかしレーザーを放った方向の土がほとんど消し飛んでいる事から、その威力が分かるだろう。


 キメラはそれを一瞥すると満足そうな笑みを浮かべる。そしてさすがのキメラも先程の戦闘で疲労したのか、その場で体力を回復させようと座りこもうとして――気配を感じた。


 キメラはすぐに気配を感じた方向に振り向こうとするがその視界に映ったのは綺麗な弧を描いていく蛇――自分の尻尾であった。




―――誠一SIDE――



 俺は木刀を振り抜くとすぐに下がる。まさか奥の手を一気に二つも使わされることになるとはな、これ以上はもう後が無い。


 俺の左腕は真っ黒に煤けて全体的に火傷している上に手首から先が少しえぐれている。徐々に【再生】で回復しているとは言え痛い物は痛い。


 そしてサイクロプスはもっとひどかった。


 先程のレーザーに打たれて体の下半身が……そして上半身も8割くらいしか残っていない。残りは全て消し飛んでしまった。これでは助からないだろう。



 ――俺はレーザー砲に打たれる直前、ある魔法を発動させていた。


 それは闇魔法の『影縫い』という魔法で、影の中に入り移動する魔法だ。


 この魔法の凄い所は一度自分の陰に入れば、近くにある他の影を通ってかなりの速度で移動する事が出来る。更に影となって動く事も可能なのでキメラの後ろに回り込み、尻尾を切り落としてやったということだ。


 が、この魔法の欠点はアホみたいに魔力消費が多い事、そして持続時間が数秒程しか持たない事だ。

 おかげで俺の魔力は枯渇寸前。魔石はすべて使い果たした上に自分の魔力も100ほどしか残っていないだろう。


 そしてこの魔法は今の俺では普通詠唱破棄でとなえられるような代物ではない。おそらく詠唱している間に死んでいただろう。


 そこを【思考分割】をフル回転させることで力ずくでイメージを補填し、無理やり詠唱破棄で発動させたのだ。


 しかし数えるほどしか使った事のないこの魔法は、発動するまでにラグが大きい、そこでもう一つの秘策を使った。


 それがこのマント、リッチロードが身につけていたものだ。


 このマントにはある効果が付与されている。それは「闇魔法に対する補助」だ。要するにこのマントを身につけていると闇魔法に限り、魔法の杖と同じような効果が発揮される。

 これによってラグの隙間を埋めなんとかレーザーが直撃するまでに魔法を発動させる事が出来たのだ。今は燃えてしまい半分ほどしか持っていないが。


 そしてこの影縫いは自分の従魔も一緒に影の中に入れる事が出来るのだが、サイクロプスの5mもある体を影の中に沈めるのと、2mに満たない俺を影の中に沈めるのでは、かかる時間が違う。


 そのせいでサイクロプスは体が全て隠れる事が出来ずレーザーをもろに食らった。


 【金剛化】を持つ俺でさえ掠っただけで左腕が使い物にならなくなるほどの攻撃だ。いくら【火炎耐性】が俺より高いからといって防ぐことは不可能だった。


 その結果が死にかけのサイクロプスだ。

 残念ながら俺の魔法では四肢を戻すくらいの事は出来ても、体の半分以上を再生させる事は出来ない。


 今すぐサイクロプスの心配をしてやりたいがキメラから目をそらすわけにもいかずサイクロプスの事を気にかけてやる余裕が無い。


 俺がどうしたものかと思考を巡らせていると、死にかけのサイクロプスがゆっくりと俺に向かって手を伸ばしてきた。


「……ん?」


 俺が不思議に思っているとサイクロプスの腕が俺と触れる。すると同時に不思議な感覚に襲われた。


 温かい物が流れてくる感じ、妖岩からスキルを奪った時の感覚に似ているがそれよりも温かくて優しい、何とも言えない不思議な感覚。


 俺は一瞬だけサイクロプスに意識を向け【鑑定】を発動させる。


[レッドサイクロプス lv200 (使役)

生命力 5/30,000

魔力 400/15,000


 ◆スキル

[火魔法 lv6]

[遠見 lv3]

[剛腕 lv5]

[夜目 lv4]


 ◆固有スキル

[火耐性 lv6]


◆称号

[絶対の忠誠]

]


[絶対の忠誠] 使役されている魔物が主に対して死の直前まで強い忠誠を誓っている場合に手に入る。自身の命と引き換えに自分の力をささげる事が出来る。


「なんだこれ……」


 俺が説明文を見ながら警戒も忘れて呆然としていると、先程まで失っていた左腕の感覚が戻っている事に気付く。


 その感覚にハッとしてキメラの正面に木刀を構えながらも左腕を確認すると、左腕が見る見るうちに再生していく。

 それだけでなく全身の小さい傷まで治っていく。


「これがさっきの称号の効果……なのか?」


 俺が疑問に思っていると、不意に温かい感覚が流れてこなくなり同時にアナウンスが流れる。


“レベルがアップしました”

“【強欲の芽レベル2】を持った状態でレべル20になりました”

“条件を満たしたためスキルが発現されます”

“【高速思考】スキルを獲得しました”


 突然のレベルアップに戸惑う俺。先程ので経験値まで移行されたのだろうか。


「…………ググッ」


 そして全てを渡し切ったサイクロプスは満足したかのように光の粒子となっていく。


 俺はもうキメラの存在など完全に忘れて光の粒子となっていくサイクロプスのもとで膝をつく。


「おい! おい! 死ぬな! くそ、『ハイヒール』『ハイヒール』!」


 今まで三日も付き合いが無いが、乗り物になってくれたり一緒にトレントの森を焼き払ったりして絆を深めていった。


 何一つ文句を言わなかったサイクロプス。だがこんなにも慕われているとは思ってもみなかった。


 あまりに唐突すぎる別れに混乱し、回復魔法を闇雲に掛ける。しかし一度粒子になっていった者はそれこそ無限級のような特別な魔法を使わなければ生き返す事は出来ない。

 そのままサイクロプスは光の粒子になって消えていった。


 暫く呆然と立っていた気もするが、しびれを切らしたのかキメラがこちらに向かって吠えてきた。その声にハッとなって今が戦闘中であることを思い出す。


「ガアアアアアアアアアアアアッ!」


 その声はどことなく嘲笑うような気持がこめられているような気がした。

 ……全く以て不愉快な声だ


「……うるせえよ」


 サイクロプスの事を弔ってやりたいが、何よりこいつを倒さなくてはならない。


 別にあいつは俺の中でまだ生きているなんて、熱血主人公みたいな事は言わないし俺には言えない。


 だがそれでも。

 あいつは俺に力を託してくれた。こいつを倒すための力、あいつはそれを命を掛けてまで俺に託した。


 ならばここで負けたらそれはあのサイクロプスを裏切ることになる。あいつの尊厳を踏みにじる行為だ。


 だから俺は剣を持つ。そしてキメラと対峙する。


「さてと、待たせたな」


 俺はキメラに向かって宣言する。もちろんあいつが人間の言葉を分かっているわけではないだろうが、俺の【威圧】を受けて戦う気があるのだと気付いたキメラは口を醜く歪ませて臨戦態勢に入る。


「それじゃあ第二ラウンド目……始めようか!」


 あの短期間で随分とサイクロプスに懐かれたご様子の誠一くんでした。


 なんだかんだ言って味方が死ぬのは初の描写かもしれない。

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