第49話
今後の方針は決まったが細かい事はまだ何も決まっていないので話は続行中だ。
「それで明日以降の話になるんだけど」
俺の話に耳を傾ける二人の顔を見ながら勝手に進めていく。
「二人の安全を考えるならこのアパートでは色々と不都合があるし、不安なのでとりあえず、新しい拠点が出来るまで俺の家に移ってもらえますか?」
いきなり家に誘うなんてなんだか自分がいけない人のように感じてくる。
「そ、そうだよね。優斗さんにずっとここに居てもらう訳にはいかないし・・・」
「そ、そうね。何より優斗君の部屋がないから何かと不便よねっ?」
どうやら納得してもらえるようだ。
「それじゃあ、明日の朝から移動で良かったですかね?」
「うん」
「わかったわ」
「それと荷物は俺が全部まとめて持っていけるので大丈夫ですよ」
「「えっ!?全部?」」
何言ってるのみたいな顔をされたがまあそうなるよなと思いつつ、説明しながら夕食がまだだったのでアイテムボックスからお弁当を出す。
二人はファンタジー物のアニメやゲームには馴染みがないようでアイテムボックスに驚愕して言葉が出ないようだ。
お弁当も食べ終わり、アイテムボックスの存在を信じてくれた二人に念を押しておく。
「くれぐれもこのことは秘密にしてくださいね。もしバレたら二人の命にも関わるかもしれないので」
二人は無言で首を縦に降る。
出発は明日の朝でそれまではすることがないので外に光と音が漏れないように注意してテレビで状況を確認する。
隣にはお母さんが共にテレビを見ている。ちなみに沙耶ちゃんはお風呂タイムだ。
「優斗君」
「はい」
「さっきは沙耶の手前、言えなくて今さらこんな事を言うのもおかしいんだけど、沙耶はあなたの事をすごく信用しているみたいだけど、私も信用して大丈夫なのよね?」
娘を信じて俺に頼ることを決めたとはいえ、今日会ったばかりで初対面の相手を信じるには不安があって当然だ。
そう考えると沙耶ちゃんは少ない時間しか共に過ごしていないのに俺のことをある程度、信用している節があるので異常と言えるかもしれない。それか俺の強さに信頼を寄せているのかな。
何はともあれ、返事をしなければなるまい。
「大丈夫ですよ。必ず悪いようにはしませんから少しだけでも信用してくれるとありがたいです」
そういう俺を真剣な顔で覗き込んできて、俺の目を見つめる。
「わかったわ、信用する。改めてお願いしますね」
俺の目には説得力があるようだ。
その後、順番にお風呂に入って就寝となった。俺はダイニングで当然、ひとり寝だ。
◇
翌朝、モンスターによる脅威もラッキー的なスケベも何も起こることなく無事に朝を迎えた。
二人が朝の準備を整える中、俺は指示された家具や小物等をアイテムボックスに収納していく。
準備が終わった二人と殺風景になった部屋で朝食を摂る。
「ほんとに何でも収納、出来ちゃうのね」
「何でもかは試したことがないのでわからないですけど、大概の物は収納出来るんじゃないですかね」
「お母さんもアイテムボックス持ってたら部屋を散らかしてもすぐに片付けられるのにね」
「もう!沙耶ったら優斗君の前で余計なこと、言わないの!」
朝食も終わり、お母さんと沙耶ちゃんの私物を次々と収納していく。
すると当たり前だが部屋の中は何もない状態になった。後は出発するだけだが。
そんな何もない部屋を二人は静かに見つめる。
この家には二人だけが知る思い出があるはず、きっと感慨に浸っているのだろう。
今、声をかけては無粋になるので二人のタイミングに任せて静かに見守る。
「優斗さん、待っててくれて、ありがとうね」
「なんだったら出発する日、延ばす?」
「うんうん。それは大丈夫。もうお別れも済んだから」
健やかな笑顔で返してくるあたり、言葉通り気持ちの整理も済んだみたいなので出発することにしよう。
まず、目指すは陽輝の家だ。
なぜかって、今回の送迎の顛末について報告して、それと今後の方針も話し合いたいからね。
アパートを出ると俺を先頭にして進む。
混沌とする世界の2日目が始まった。




