第43話
◇陽輝side◇
ダンジョン地下20階のフィールドボスから戦略的撤退をしてから1週間、優斗と過ごしていたある日の午後。
忘れかけていたあの謎の声が響いた。
突然の事態に驚きつつもどんな異常事態が起こされるのか優斗と二人で情報を注視していた時だった。
外から女性の甲高い悲鳴が聞こえ、非常事態が起こったと思い駆けつけてみれば街中にモンスターがいた。
今まで街中にモンスターが現れたなど『大氾濫』以外では見たこともなければ聞いたこともない。だが俺の目の前にはモンスターがおり、今にも女性に襲い掛かろうとしている。
咄嗟に雷魔法の『ライトニングアロー』を放つ。
俺の放った魔法はなんなくモンスターに直撃して倒すことが出来た。
際どいタイミングではあったがなんとか間に合ったようで女性に怪我はなかった。
それにしてもどうして街中で襲われていたのか、女性に話を聞いてみれば歩いていたら急に黒い影が地面に集まり、瞬く間にモンスターとなったと語る。
それはダンジョン内でモンスターがポップする時の現象と酷似しており、俺を大いに困惑させた。
とにかく、このまま女性を放っておけないという優斗に賛同して送りとどけることになったが急にモンスターが街中に現れた現象が俺の中でモヤモヤして頭から離れない。
そんな帰り道、普段は閑散としている街が妙に騒がしいと優斗が言い出したので言われるがまま耳を傾けてみれば所々でサイレンが鳴り響いている。
何かが起きていると察した俺達は足早に優斗の家に帰り、つけっぱなしになっていたテレビから各地でモンスターが突如発生して暴れているというニュースを見て、今起こっている事態を理解する。
そう、セカンドフェイズではどういう訳かモンスターがダンジョン以外でも自然発生するようになった。
ファーストフェイズの時には街中にモンスターが発生することなどなかったのにセカンドフェイズになった途端にモンスターが街に溢れ始めるなんてどう考えてもセカンドフェイズの影響だろう。
そんな思考と共に一つの懸念が浮かび上がる。
かけがえのない大切な家族。
どこに現れるのかわからないモンスター達。当然、家族のもとにも現れるかもしれないと思ったら居ても立ってもおられず、優斗に一声かけると家から飛び出していた。
『大氾濫』以来、モンスターの脅威に怯えた人々がダンジョンから離れた地域へ疎開していったがそれでもまだこの地域には少なくない人々が暮らしている。
ニュースを見て慌ててビルの入り口に必死にバリケードを作っている人達、車に出来る限りの荷物を載せてどこかへ逃げようとしている人。
先程よりも街は確実に混乱に飲み込まれようとしている。
何も起こらないでくれと祈りながら家へと向かう足を速めた。
◇
俺の家族は父親に一つ年下の妹、そして俺の3人家族だ。
残念ながら母親は俺が中学生の時に病気で他界している。
辛いことも苦しいこともそれなりにはあったがそれでも今まで家族3人で力を合わせて明るく暮らしてきた。
俺がプロ探索者になったのも『大氾濫』のせいで取引先がなくなってしまい、父親が経営する会社を助ける為に少しでも助けになればと思い、契約金目当てでなったりもした。
結果は最悪だったが優斗と相棒になれたことを考えれば良かったのかもしれない。
今なら不動のランキング1位『剣聖』が相手だって負ける気がしないし、国が相手だって戦える自信がある。これは自惚れかもしれないが・・・。
とにかく、モンスターなんて俺が蹴散らしてやるから無事でいてくれと祈り、家へと着いた。
「・・なんだよ。これ・・・」
俺が見たものは家の玄関は壊され、壁には穴が空いており人の力を超えた何者かによって壊された家だった。
その光景を見るなり頭の中が真っ白になり、何も考えられないまま、家族の無事を確認するべく家の中に飛び込んでいった。




