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16、高校一年生 二度あることは三度ある。いや、もう腹いっぱいなんで遠慮し… 中




「りこちゃん、今日も楽しそうだったね~」

「いやぁ、お花ちゃん、そうなんだよ。初めて呼び出されたからちょっと興奮しちゃって」

「あんまり花を汚染しないでね利根田さん」

「聖くん、りこちゃんにそんなこと言っちゃだめ~」


 めっと怒られた聖也くんはお花ちゃんのお叱りに顔面蒼白になった。へぼい、ちょろ過ぎるぞ聖也くん。エリスちゃんの豪奢な金髪とはまた違う透ける様な金髪はそのままに、貴公子然として大神と同じ位背が伸びているのに、見た目に反してメンタルがお花ちゃん限定でスライム以下である。いつかのペケモンのナゾナハナでもまだ防御力が高かろう。


 窓から空を見上げてぶつぶつ呟く聖也くんの自己回復が終わるまで放置することを決めつつ、お花ちゃんのおでこに私はそっと手を当てた。

 お花ちゃんは不思議そうに見上げてくるが、じっと観察すると普段よりやっぱり頬が熱いし何だか汗も掻いている。


「お花ちゃん、もしかして熱じゃない?」

「そうかな~。分かんなかった~」

「花! 帰るよ! 休まなきゃ!」

「聖くんうるさいから黙って~」


 慌てて案じたのに、ぐふっっと胸を押さえてノックアウトされる聖也くん。きゅうしょに当たって一撃でひんしだ。哀れである。うーむ、普段ならこんなに内臓を抉る様な言葉は使わないので、やっぱりお花ちゃんらしくない。


 ふっくらしたほっぺたに手を当てると、潤んだ眼差しが返って来たので、そのひだまりの妖精みたいな笑顔に私も笑い返した。

 

「季節の変わり目だし疲れてるんだよ。一緒に保健室いこ」

「うん~。りこちゃん好き~」

「は、花、ぼくは……」


 その綺麗な顔を思わず引き攣らせて恐る恐る問いかけた聖也くんだったが、対する今日のお花ちゃんは強かった。ゴブリンキラーならぬ聖也くんキラーと言えよう。こうかは ばつぐんだ。


 お花ちゃんがふふ~とゆっくり振り返ったので、聖也くんの顔にも光が差し込む。これがかの有名な絵画を発見した時のぺトラッシュ達の顔かと納得する。


「りこちゃんにすぐ謝らなかったからダメ」

「ごふっっ」


 ああ無念、ぺトラッシュは天に召されてしまったようである。アーメン


 哀れ南無南無と西洋入り混じって合掌していたら、ふらりとお花ちゃんがよろめいた。咄嗟にその体を支える。すると先ほどよりもお花ちゃんの体温と香りが強く感じられる。

 相変わらずのコントに周囲の面々も慣れたもので、観劇の様に眺められていると近くに見知った気配が立った。


「手を貸すか?」

「珍しい。まぁ、聖也くんに頼むよ」

「それがいいだろうな」


 普段女神級のお花ちゃんが断ったので、珍しく大神が見るに見かねて来てくれたようである。とはいえ此処で手を借りたら後ほど聖也くんの嫉妬が凄いので大人しく断っておく。普段は二人の絡みや嫉妬を見て萌えー!!と叫ぶのだが、この八つ当たり嫉妬モードだと絡みが鬱陶しいので避けたい。大神も分かったもので肩を竦めるだけだ。


 エリスちゃんからの可愛らしいビームも感じつつ、一瞬なら大丈夫だろうとふらふらと足元が覚束ないお花ちゃんを大神に任せた。床に五体投地する聖也くんへと、さっさと起きてくれと声を掛けようとして―――――不意に、大神が高らかに警戒するような威嚇音を喉から上げた。


 ざわりと一斉に場にどよめきと緊張が走る。一瞬にして視線と静寂を一心に集めた大神は、眉間に皺を寄せ戦闘前の様に犬歯を見せながら鋭く睨み付け叫んだ。


「りこ! 薬だ! はや―――」

「え……? なに―――」

 

 瞬間、金属と木で出来た机が五つ程吹っ飛び、凄まじい音と共にその奥に大神が倒れたのが分かった。破片と埃が舞う。巻き込まれた生徒から悲鳴と混乱の叫びが広がる。


 息を呑んで茫然と先ほどまで大神が居た場所を見れば、まるで宝物を守る様に腕を絡めてお花ちゃんを抱き締める聖也くんの姿がある。


「聖也くん、なにして」

「……」


 思わず中途半端に上げた声と右手が止まった。お花ちゃんを抱き締めていた聖也くんは、こちらの声にただ惰性で反応して顔をあげただけだと分かる程、とろんとした目をしている。ぼんやりとしながらスンと鼻を鳴らし、お花ちゃんの匂いを吸い込む様子に、ようやく大神の言葉に理解がいった。



 

 やばい、超弩級お花ちゃんの突発ヒートイベント来た




 お花ちゃんが苦しむ様に呻いた瞬間、私は教室の後ろ側へと一気に身を翻す。


 やばいやばいやばい、お花ちゃんは小学生の時からオメガの潜在魅力値の片鱗を垂れ流してたのである。今は意識あるけど、お花ちゃんまで意識を失い始めたらマジでやばいやばい。路地裏の悲劇どころじゃないってこれッ


 最初、私たちは教室で言う窓際の教壇に近い位置に居た。現在中央に居るお花ちゃん達の横をどうしても通らねばならぬが、むしろこの束の間のぼんやりタイムで乗り切るしかチャンスはない。


 ええい、みんな机の横に荷物引っかけ過ぎなんだよ!今度から通りやすくするがよい!!!

 一応高校生になったしとオメガのヒート瞬間抑制剤改良バージョン頼んでたからちゃんと持って来てたけど!!

 持って来てたのはよかったけどもっと人少ない時とかタイミングいい時が良かったよおおおお!


 全力でノロマな足を動かしながら、頭をテンパらせつつ後ろの自分の棚に入れたカバンを目指す。

 ちらりと横目で見れば、ピクリともしない大神が少し心配だ。


 スローモーションの様な時間の中、お花ちゃんの横を通り過ぎようとした私とお花ちゃんの目が合った。


「りこちゃんん……」

「お花ちゃん待ってて、絶対助けるから!」

「……うん…」


 熱で喘ぎながら名前を呼ばれる。縋る様な声に思わず反射で答えた瞬間、先ほどまでぼんやりしていた聖也くんの眼差しに力が籠った。


「……だめ、……駄目だ」


 その眼差しは明らかに嫉妬と憤怒に燃えている。完全に戦闘モードとなった聖也くんが、剣呑でらしくない威嚇音を出した。敵意は全て射貫く様に私へと向けられている。


 ……訂正しておこう。普段やらない人がやると本気で怖い地響きの様な威嚇音だ。普段怒らない人ほど怒ると怖いよね! お似合いの威嚇音だね!


「ひい、お花ちゃんを取り合ってはいたけどまさかの命が取られそうな展開! 驚き過ぎてドキがムネムネ!」

「あなた、意外と余裕ですわね」


 何処からか聞き覚えのある呆れ声のツッコミが聞こえた瞬間、足元から呻き声がした。というか、聞いて欲しい。いきなり人がドサドサと床に倒れ出したのである。その数クラスメイトの約半分。


 私は思わず顔の引き攣りを通り越して笑いが出そうになった。すぐに足元から荒い息を吐いた半数達が立ち上がる。その目は完全にイっている。そりゃそうだ、この中に耐性を持つものなど居なかろう。しかもあのお花ちゃんクラス相手にである。


 私は目の前でふらふらとゾンビの様に揺れる我がクラスメイトに声を掛けた。ビビりつつである。というか私だって声を掛けたくなかったけど、カバンまでの進行上に居るのである。


 誰だこんなトラップ置きやがった奴は。鬼か! 悪魔か! ゾンビトラップとか考えた奴はド腐れ根性の持ち主に違いない!


「は、はろー…。わたーし、あなたーの、うしろとおりたー」

「ヴううう!」

「あ、ブーですかー! 駄目ですよねー! ですよねー! これが俗に言う無理ゲーねー! わかるうううう」


 最初から無理だと思っていたので、乱暴に振られた裏拳を何とか一歩下がって避けられた。鼻先を空気が掠める。


 うう、あれ当たったら絶対鼻血は出てたッ。意識飛ばしてても、もう少し女性を大事にしないとモテねえからな! くっそう!!

 

 ふらふらと机を乱暴にどかしたり避けながら中央のお花ちゃん達に近付いて行く挑戦者(ゾンビ)たち。もとい、クラスメイトの男子諸君。完全にお花ちゃんのフェロモンにあてられている。これでまだヒートが始まったばかりなのだから目も当てられない。


 女子生徒は完全にびびって窓際に寄ったり、何人かが腰を抜かしつつも先生を呼びに行ってくれたのが見えた。だが、大丈夫な先生たちが来るまで時間は掛かろう。恐らくこんな時の為にかこの教室だけ他クラスより離れているし、下手な独身先生だと呼んでも敵が増えるだけである。でも女性の先生だけでは厳しいし……


「ちかづくな! 花はわたさないッ」

「ヴうッ!!」


 お花ちゃんを守ろうと、聖也くんが周囲のクラスメイトを千切っては投げ、千切っては投げで蹴散らして行く。机ごと吹き飛ばされ、今では教室の中央がコロッセオみたいに空白になっている有様だ。


 てか、ガチで人間を黒板へと投げて一瞬貼り付けに出来るとか、一体どこのSFバトル漫画だ。思わず割れた窓ガラスで切った頬を引き攣らせまくる。後で頬が筋肉痛になるに違いない


 正直、ベータが理性を飛ばしたところで同じく理性を飛ばしたアルファには敵わない。現に既に半分の男子生徒は意識を刈り取られて床でおねんねしている。中央はまるで暴虐の暴風雨だ。


 だが、と私は無理矢理にやりと笑った。お陰様で聖也くんの注意は逸れたし、男子生徒も減って万々歳である。


 だっっと全力で後ろのロッカーまで行き、乱暴に自分のカバンを引っ張り出す。


「どこだどこだどこに入れたっけええ」

「んっ……聖く…っ、やめ…っ」

「花は渡さない。……居た」


 あったあああ!!と内心で思わずガッツポーズしながら目当ての薬袋を引っ掴んだ所で、私の左側のドアが横開く。


 思わずしゃがんでいた目線を上げると、たまたま近くを歩いていたのだろうか、先生が怒った顔で顔を覗かした。鍛えられたゴリマッチョ、我らが体育の先生である。ただし牛みたいな顔のせいで全くモテない。


 やばい、この先生までゾンビ化したらマジで洒落にならんっと慌てて制止しようとした瞬間、後ろで机が蹴られる音がした。


「お前たち、もうすぐ授業が始まるんだから騒ぎ過ぎるのもいい加減ひでぶ!!」

「邪魔」

「聖也くん若気の至りとはいえ顔面ドロップキックはやめたげてええ!?」


 顔を覗かして至極全うな注意をしに来てくれたのに、一発KOで伸してしまった。鬼か。いや、魔王か。


 ストンといつかの大神の様に軽やかに着地した聖也くんが私を振り向く。その距離、およそ前方三歩。完全敵認定の無表情な眼光に、流石の私も冷や汗が止まらない。恐らく内に踏み込むのは一秒も掛からないだろう。先生の様に吹っ飛ばされるのだろうか


 私の顔面、整形しなきゃなんないかもしんない


 思わず彼方に意識が飛びそうになるが、まだ意識を飛ばすのは早いとなんとか耐える。ありがとう社会人のクソ根性。さようなら我が顔面。整形費用は聖也くんからもぎ取ろう。


 聖也くんの一挙手一投足を命が掛かってるので全力で観察しながら、何とか立ち上がってじりじりと後退する。クマとこんにちはしたら目を離しちゃいけません。


 聖也くんは余裕なのか分からないが、何故かぼんやりとして動かない。避けられる気は微塵もしないが、これだけは守りたいと無意識に手の中の薬を握った。


「花のライバルは……」

「た、たしかに、私たちはお花ちゃんが大好きであり普段からライバルの様な関係でありましたが私はお二方を陰に日向に応援しておりそれは聖也殿もご存知のところで、しかるに、ゆえに、えーっと同志! 仲間みたいなもんでし」

「潰す」

「ミンチはいやああ」


 ガチの殺気に、涙目で悲鳴が上がる。目の前でクマが立ち上がってみろ、腰を抜かすから誰でも!!


 物理でハンバーグにされるううと半泣きで思いっきり腰を抜かした瞬間、私の胸辺りの高さを聖也くんの蹴りが横切る。風圧で髪が何本か切れた音がしたが、数本であの一撃の身代わりになってくれるなら、私は禿げるまで何度でも捧げよう。


 ガチで鬼畜なほど躊躇いの無い蹴りで、当たらなかったのに風圧だけで机が吹っ飛ぶ。硬直して目を開きながら床に座る私の前で、その場で左からの回し蹴りをした威力のまま、くるりと舞う様に回転する聖也くん。最後は足を垂直に上げている。


 回し蹴りからの踵落とし、流れるようなコンボ技である。こんな時に格闘ゲームの知識を披露しないで欲しい。


 ここまで終ぞぼんやりバーサーカーモード聖也くんは、視線が合っても、理性のない野性の敵意しか感じられなかった。


「……」

「せめて最後に何かセリフが欲しかった!」

「あなた、やっぱり意外と余裕ですわね」


 瞬間、突如聖也くんが横から吹き飛ばされ、後ろの棚達に叩き付けられる。私と聖也くんの間に立った女の子は、金髪の縦ロールをこれまた華麗に踊らせて呆れた風に私を振り返った。


「エリスちゃん!」

「エリス様と言いなさい。猿頭ね」


 つーん!と顎を傲然とそらしつつも、何と気丈にも私と聖也くんとの間に入ってくれる。女の子とはいえアルファ。先ほどの動きとか全然分からなかった。傲然とその場に立つミニ女王様に、思わずエリス様と呼ばせてくださいエリス様!と感謝で拝んでおく。


「ふん、何か方法があるんでしょう。(わたくし)、五月蠅いのは嫌いなの。大神様が頼んだのだから早く終わらせなさい」

「エリス様ありがとうっ。後で必ずお礼するからッッ」

「最初からそう言えばいいのよ。私、大神様を蹴ったこの方を少し躾けてあげるから」


 どこぞのバトルものの様な展開に、はて、私は何処に迷い込んだんだっけ?と思わず思ったが、慌ててお花ちゃんの方を向く。見ればあの時の路地裏の様に、苦し気に心臓辺りを押さえて藻掻いている。


 私まで泣きそうになって、後ろを振り向かずに一気に駆け出した。


 正直、助けはとても有難いがピンチは減ってない。同じアルファの土俵ならやはり雄の方が強いし、それに素人とはいえ相手は潜在能力がこれまた高そうで、しかも理性がお散歩中の聖也くんである。エリスちゃんも格闘技を習ってる訳でもなさそうだし、現実を言うと真っ向勝負で勝ち目はない。


 それでも助けに来てくれたのだ。束の間の時間稼ぎを無駄にするわけにはいかない。


「お花ちゃん!」

「りこ、ちゃん…。ごめん……、聖くんが……。みんなも……、教室も……」

「大丈夫! よくあるじゃれ合いの範疇だよ! 多分いける! だから、大丈夫!」


 泣きそうな声で苦しみながら、こんな時まで自分より周りを心配するお花ちゃん。多分と付ければ何でもいけると誰かが言ってた! 誰かは知らん! 何がいけるのか自分でも分からんけど多分いける! だから大丈夫なんだと何の根拠も無く自信満々に頷けば、玉の様な汗を額に浮かべながらも、お花ちゃんは安心した様にへにゃりと相好を崩した。


 ひしひしと感じる信頼は重い。けど、あの時の路地裏の様に自分が苦しくても誰かを優先出来る友達を、今辛そうな人を助ける手段があるのに見捨てる選択肢を、この場で取れる訳がない。


 お花ちゃんに触れ、薬を袋から取り出した瞬間、頭が割れそうな程の凄まじい耳鳴りがした。


 というか、背中を強かに教壇に叩き付けられて、後から衝撃が襲ってくる。肺から空気が全て出たのに息が吸えない。じくじくとした痛みが脇腹に走り、嗚咽を堪える間もなく思いっきり吐瀉した。


 お昼を食べた後でこの仕打ちは酷い話である。びちゃびちゃと制服を汚しながら、思わず脇腹を押さえて獣の様な声を上げて蹲った。


 蹴り飛ばされたと、吐いて酸っぱい息を吸ってからようやく理解する。


 片手を地に付いてふらふらと顔を上げれば、女子たちが小さな悲鳴を上げながら体を寄せ合って壁際に集まっていた。みんな幽霊を見たかの様な顔面蒼白具合だが、普段なら笑えるその顔も、笑えないのは私の方が具合が悪そうなことか。それとも幽霊が私だからか。

 

 すえた臭気に、痛みと混じって生理的な涙が零れる。


「げっほ、ごほ…ッ。あー、むり、しねそう」

「お猿! 動かなくていいわ!」


 霞む目で見れば、エリスちゃんが痛みを耐える様に右腕を押さえ、焦ったように叫んでいる。でも、座り込むお花ちゃんを抱き締めたままこちらを睨む聖也くんが、動かないからといって見逃してくれるかは分からない。

 

 正直、ここまで自分がする必要があるのかと弱気になる気持ちもある。大人に任せればいいだろう、とか。


 でも、その大人って誰だ?


 もう休みたいと訴える怠けた首を叱咤して、ゆっくりと辺りを見回す。皆泣きそうになって私たちを見ている。


 実質まだ五分も経っていないのである。いま此処に居るのは怯える女の子たちと、苦しむお花ちゃんと、後で絶対後悔しちゃう聖也くんと、わざわざ怪我してまで私を助けてくれたエリスちゃん。子供しかいないのに、大人の私が尻尾巻いて逃げれる筈がない。


 それにこんな時に役に立てないなんて、生きてる意味がないじゃないか。


 というか、こんなイベントに巻き込まれてお陀仏るなら、いっそオメガバース愛の美少女戦士として本望と開き直るしかないしね。だろう? であろう? そうであろう?


 とはいえ死んだら絶対お花ちゃん達が悲しむバッドエンドルートしか見えないから、命大事にガンガンいこうぜ!作戦だが。

 

 私は無理矢理お気楽に考え、また唇を上げる。頬の傷が引き攣れてピリリと痛む。


 ビビりの裏返しは何でしょうか?


 アンサー、答えは挑発的な笑みだ。

 

 じくじくから鈍痛に変わった脇腹を片手で押さえ、口元を乱暴に拭う。ゲロって超不味いとか、味わいたくなかったのが本音である。


 そうしてふらふらと立ち上がるとそのまま数歩ドア口に近付いた。

 逃げると思ったのか、女の子たちが心配そうにドアまでの道を開けたのを見てゆるく首を振る。


 正直賭けだ。でも、毒をもって毒を制すなら雄アルファには雄アルファをぶつけるしかあるまい。



 なあに、何でだかこの賭け、勝てる気はするんだよね。



 私は未だに倒れた机へと寄り掛かっていた大神の前でしゃがんだ。



 いつまで寝てんの馬鹿大神、さっさと私を助けなさい。

 約束でしょ、二次元ヒーロー。



 私は寝坊助を起こす為に思いっきり頬っぺたをつねってやる。


 さて、匂いに狂うかどうか。吉か凶か。賭けの始まりだ。





 大神は、一つ呻き声をあげた後―――睫毛を震わせその目をゆっくりと開けて私を映した。








 


 

 



 

 伸びたので(中)挟む方向で分けました~。りこちゃんまだ衝撃案件2度目の半分だよ頑張って!(鬼


りこちゃんの心の雄たけび「突発ヒートが三度あったら私はサボタージュを此処に誓います!」

トネコメ「嫌よ嫌よも好きの内よ…」

りこ「理不尽ッッ」


 ちなみに、りこちゃん達の居る一組にだけアルファとオメガが集められてます~。位置もちょっと離れてるんですよ~。これは法律で決められてるパンデミック防止の為の対応ですね~。一応全国どこの学校もこの対応です~。担任の先生も突発ヒート講習を一応受講してるベテランが担当なんですよ~。といっても、AED講習みたいな一日だけのやつなので、実際対応できたかは不明。ちなみに今回お昼の時間後だったので不在だった追加不運。あと、例年ならオメガの子が意識を失って暴走しても、異性数人が気分が悪くなって意識失ったり乱暴になるレベルだったので学校もこの件は予想外級でした~。というか、路地裏やお花ちゃん級は宝くじの三等と一等クラスのレアなので、りこちゃん凄まじい引き運とも言える。(ヤッタネりこちゃん!←ぇ

 裏事情話すとこの学校には二年生だとアルファとオメガがいなくて、三年生にはアルファとオメガが一人ずつしかいないんですよね~。だから今年は十年に一度の大豊作年扱い。優秀な子たちはみんなもっと上の学校に行ってるので、珍しいのです~。上の学校は囲い込み目的の学校からのかなりの金銭援助もあるんで(笑)この一組に集約ってのはわざわざ学校が説明はしないので、気付いてるのはりこちゃんや大神、聖也くんとかかなぁ。アルファと吹聴してるのはエリスちゃんだけなので、他の子は分からないのです(笑)

 ちなみにもう一個内緒話で、先生を呼びに逃げた子の中にオメガの男子が一人いました~。この子も隠してるタイプですが、弱い方のオメガですね~。それにしてもこのクラスの担任は大変ですね☆(親指を立てる


 なるべく近いうちに(下)もいきますね~。りこちゃんがんばって!(鬼

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