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15、高校一年生 二度あることは三度ある。いや、もう腹いっぱいなんで遠慮し… 上

 

 


 

「利根田さん! 聞いておりますの! いいですか。あなたが大神様に付き纏っているのは分かっているのですよ! あなたみたいな平凡な方がうろちょろと―――」


 やあ、諸君おはよう。私だ、利根田(とねだ) 理子(りこ)だ。高校一年生になったぞ。この桜田高等学校は近隣からアクセスなどがそれなりに程よい近さにある為か、それなりに人数のいるそれなりに大きな学校なのである。お嬢様タイプもいれば、庶民タイプもいるし、がり勉タイプもいる、まぁよくあるそれなりの高校といえばそれなりの高校だな。


 ん? 今の状況か?


 あっはっは、私もちょっとドキがムネムネしているぞ。え? 古い? うっさい! いやあ、私もまさかこんなテンプレ展開に巻き込まれるなんてと驚きを通り越してちょっと感動して……


「ちょっと! 聞いておりますの!」

「あ、はい。勿論でございます」

「そう! まずあなたと来たら大神様が優しいのをいいことに同じ小学校からの同級生というだけでお隣に居座って―――」


 いやあ、よくノンブレスで喋るなぁと感動する。あと、凄いんだぜ、ちゃんとリーダーは縦巻きロール肩までバージョンの金髪ちゃんなんだぜ。どうしよ、ツンッとしたヤキモチが可愛過ぎてぷるぷる震えてしまう。


 ちゃんと取り巻きちゃん達二人も適度にそうよそうよ!と相槌を打ってくれるので、まさにテンプレプロの鏡の様な集団なのである。場所まで校舎裏という、これに感動せずしていつ感動するのか…! 今しかないこのシチュエーション満喫感…!


「ふふ、怯えておりますわね。これに懲りたらもう大神様に近付いてはいけなくってよ」

「あー、ごめんそれは無理」

「なんですってえ!」


 だってあいつからも勝手に近付いて来るし…とか言ったら怒りに火を注ぎそうなので飲み込む。良ければ察して欲しいが無理であろうか。考えてもみて欲しい。野生の狼になんか言っても聞く筈ナッシングである。むしろ耳の後ろ掻いて欠伸でもしてそうなあいつの手綱を誰か握ってくれないか。


 まぁそんなどうでもいいことは置いといて、サファイアみたいな綺麗な青色の瞳が怒りで吊り上がる前に、はい!!と顔の前で手を上げた。

 息巻いて縦ロールが荒ぶろうとした時だったので、出鼻をくじかれた綺麗な顔立ちがきょとんとする。そうすると、まるでフランス人形みたいな秀麗な顔立ちに幼さが出て、益々可愛く見えた。 


「ところで!!」

「……はい?」

「お嬢ちゃんはアルファですか?」

「え、ええ。ふん! 同じクラスなのにわたくしのことを知らないなんてとんだ無知なお猿さんですこと! 私は先祖代々アルファの家柄で由緒正しいアーロン家の娘、エリスなんですからね! それが良く分かったら跪きなさい」

「「そうよそうよ!」」


 つーんと金毛のペルシャ猫の様に顎を反らすエリスちゃん。かわいい、撫で撫でしたい、かわいい。お猿なんて言われたらそれは健太の専売特許だよ!と普段ならツッコミを入れるけど、可愛いから許す。断然許す。


 由緒正しいアルファの家柄なのにこの学校に来ちゃってるところとか、いろいろおバ可愛いあたり、もう親御さん目線になれる。色々かわいい。


 とはいえ、顔立ちや雰囲気からもしやと思っていたが、アルファと分かったので私のテンションは天元を突破した。聖也くんや大神以外の初めての同級生でのアルファである。しかも女性!


 高校生になっても性を吹聴したり聞きまわる者は少ないので、中々アルファやオメガさん(確定)と出会う機会がなかったのだ。まぁ新生活でナイーブな問題をすぐに洩らす人は少ないしね。


 そんな中、私は常々思っていたのだ。本やネット情報の言うことをそのまま鵜呑みにするだけでいいのかと。しかし大神母へと突進する勇気は流石にない。なんか食われそうなのである。物理か何かは言わないという賢明な判断をしておく。

 というわけで、確かめたいのに確かめられなかったことが今目の前にある。

 

 これは行くっきゃないと私は目を爛々と輝かせて、一歩エリスちゃんへと近づいた。

 一歩後ろへよろけたエリスちゃんが校舎裏の壁に背中を当てる。その顔の横に手を置いた。取り巻き二人はきゃーきゃー言いつつ若干興奮してる。お主ら、結構分かっておるな。

 エリスちゃんから子猫みたいなうるうると怖がった視線が返ってきた。


「エリスちゃん、ひとつ聞きたいんだけど」

「な、なんですの…。わ、私を脅そうとしたらアーロン家が…」


 恐々と睨み付けつつ桜貝みたいな色の唇をきゅっと噛んでいたので、しーっと内緒話をするように人指し指をその唇に近付けた。唇がぷるぷるだからすぐ血が出そうでハラハラするし。


 またきょとりと瞬いたお顔の前で私も満面の笑みを浮かべる。 いざ! 


「エリスちゃんって息子持ってない? 娘でも伝わるならいいんだけど」

「……はい?」

「あ、伝わんないか。えーっと、エリスちゃんのエリスちゃん持ってない? ちょっと確かめたい大事なことでさぁ。これでも分かんなかったらエリスちゃんの分身――」


 益々きょとんとするエリスちゃんを前に、色々と身振り手振りで説明しようとしたら、後ろからすんごい勢いで頭を叩かれた。低い声と共にスパコーンと子気味のいい音が校舎裏に響く。


「変態行為はやめろ」

「いったー!!! もう少し手加減してよ馬鹿力大神!」

「お前にはこれで十分だ」


 痛い、果てしなく痛い。馬鹿力で躊躇なくいきやがったこいつ。

 思わず恨みがましい目を向けると、すんごい蔑みと呆れ混じりの冷たい光線が返って来た。酷い、女性のアルファには本当に息子がいないのかという世界の真理に迫る重要な検証であるのに。


「大神様…! あの、これは違って…」

「次の授業始まるぞ」

「あの、大神様っ」


 エリスちゃんとその取り巻き二人ちゃんがおろおろする中、ガン無視で首襟を掴んで私をドナドナしようとする大神。ずるずる引き摺るなんて、運搬方法さえ雑いというか、酷い対応である。


 仕方なしにひらひらとエリスちゃん達へ手を振ったら、きぃっとハンカチを噛み締めて睨み付けられた。どこまでもプロの鏡である。感動がヤバイ。


「覚えてなさい! 絶対に大神様から引き離して大神様を解放してみせますわ!」

「あはは、がんばって~」


 姪っ子が「わたちあのぬいぐるみがほちいのー!」と駄々をこねていた時を思い出して微笑ましく引き摺られながら眺めていたのだが、何故かピタリと大神が足を止めた。

 どうしたと見上げて、思わず顔が引きつる。


「お前さ」

「は、はい! 何でしょう大神様…!」


 大神から初めて声を掛けられたからだろうか、エリスちゃんはさっと頬を赤らめて、恋する女の子特有のきらきらした桃色のオーラを出した。可愛らしい甘さが声に滲む。

 だが、大神は冷めた視線と無表情で一刀両断した。


「誰。勝手に口出すな」

「っ」


 瞬間、エリスちゃんが泣きそうになったのが分かった。幾らモテ野郎といえど、大人げないにもほどがある対応である。


 その頭の良さを攻撃方面に回すんじゃない。お前の迫力顔と声は威力満載なんだぞ。それを理解していて敢えて使うとか、それも恋する乙女になんたる言いようだ。同じクラスなんだから絶対名前くらい覚えてる癖に。


 思わず襟首を掴む手を外して、大神のおでこをぺしっと叩く。今では170近いほど背が伸びて高くなりやがったから、私は少し背伸びしないと届かない。これでまだ成長期で節々が痛いと言ってるんだから嫌になる。


 エリスちゃんと並ぶと美男美女の綺麗な焔色の目がじっとりと歪む。ぐるぐると不満そうな唸り声がするが、さすがにこの程度だと慣れたものなのでふんっと鼻を鳴らした。


「言い方悪すぎ」

「お前こそ、応援してんじゃねぇよ」

「なにさ、そんなんで拗ねてんの」


 呆れて言えば、ふんと鼻を鳴らされる。こいつ、懐に入れるまでは俺に触んなと遠隔針飛ばしまでしたり、一定距離を取って逃げ回るすんごいハリネズミ野郎なのに、一度懐に入れたら大神なりにかなーり大事にするのである。そのせいで裏切るというか、私がこんな風に敵を応援したと思ったら、内側からチクチクとダメージがあるのかすぐ不本意そうな声を上げるのだ。


 ハリネズミのお腹でももう少し硬さをもっておろう。仲間からだけ傷付きやすいやわメンタルとか、その見た目でギャップ萌え属性まで欲張るんじゃない、まったく。


 エリスちゃんを見ると取り巻き二人の子が心配そうに慰めている。慕われているのは本当のようだ。ハードルの高さは違えど、エリスちゃんも見たところ大神と似た様な気質っぽい。仲間意識とか独占欲とか、群れの長らしいアルファの(さが)なんかねぇと目を眇めながら、仕方ないとため息を吐いた。


「別に、応援はしても大神から離れようと思うかは別だしいいんじゃない。……って、授業! やっば! エリスちゃんもお二方も早く行かないと! あ、あとでまた息子さん教え……もごごっっ」

「もうお前は黙ってろ」


 私が授業を思い出すまでに深ーーい呆れた風なため息を吐いた後、ドナドナの上位版の米俵担ぎで連れて行かれる。本当に扱いが雑いと思う。もう少し労わってやって欲しい。懐に入れたら大事にするといったが、あれは扱いに遠慮が無くなるに訂正すべきであろうか。いや、訂正する。扱いがひでぇ


 そんなこんなで不本意ながら米俵担ぎで運ばれた私だったので、その場に残されたエリスちゃんが悔しそうに呟いていたことには気付けなかった。


「あれが通称女堕とし”変態淑女”の力なのね。私、負けなくてよ…!」

「「多分そうよそうよ!」」


 魔王(りこちゃん)に負けて(おおがみ)を取られた勇者の様な悔し気な表情である。誰が魔王で姫なのかは実物との違いに疑問符が生じるが、エリス勇者は気にしない。

 取り巻き二人は顔を見合わせたあと色々と飲み込んで、いつも通りおバ可愛……、可愛い幼馴染のエリスをおだてるのだった。 

 










 


 

 

 というわけであと二度りこちゃん的驚き案件が登場します☆(ぇ

 ヤッタネ!高校一年生ひとつぶで三度おいしい!(おい


 ちなみにエリスちゃん的には一目惚れなのもありますが、お家再興!を目指して優秀な遺伝子を!という思いもあります~。(オメガは数が少ないので、必ずしもアルファとオメガで結ばれるというわけではなく、普通に彼らも恋はします~)

 

 エリスちゃんのお家再興!ですが、由緒正しい家柄ですがご両親とものほーんとしてますし、庶民生活の節約術って結構楽しいわね~おほほ~という感じのお母さまなので、別段お家再興とか誰も気にしてません(ぇ (なので婚約者とかもいない


 でもご両親とも滑車でひたすら電力供給の志を胸に全力疾走するハムスターを見てる気持ちなので、微笑ましく頑張るなら応援するわよ~と見守ってます(笑)ハムスターが疲れたらすかさずヒマワリの種や水をあげてもぐもぐしてる様を見て癒されてるので、家族仲は良好です

 色々よかったね!


 次は(中)挟まず(下)に飛ぶかもでさ~☆ではではトネリコ


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 気になってアルファさんで読んじゃったけど、たしかこの回なぜか中学1年…(´⊙ω⊙`) 高校1年て書いてある……?? でもエリスちゃんがいない……_(:3」z)_ [一言] この作品好き…
2020/06/11 22:15 コメント初心者
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