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怪異子葬  作者: エマ
20/44

File.19 戦場カウンセラー歩

亜人面白い(今さら見てる)


 

 いつからか私は椅子に座ってる。

 そしてぼんやり、映像を見ていた。


 映像の中の私はずっと勉強をしている。


(なんでこんなに勉強してたんだっけ? )


 あぁそうだ。

 私、お医者さんになりたかったんだ。


 なんでだっけ?

 やりたい事がなかったんだ。


 みんなが興味を持ってたお化粧も。

 カードゲームもボール遊び。

 怪異を宿すことについても。

 興味がなかった。

 それをする価値が分からなかった。

 だからずっと教室の隅で、文字と仲良くなっていた。


 小学校、中学校。

 ずっと勉強してた。

 楽しい思い出なんて無かった。

 でも辛くもなかった。

 別に、やりたい事もなかったから。


「お姉ちゃんはお医者さんになるみたいよ 」


「えーなんで〜? 」


 食卓。

 お母さんと妹が居た。

 私と違って、たくさん自分を着飾る妹と。

 誰にでも優しいお母さんが。


「理由……なんと、なく? あとお給料が高いから 」


「えー、そんな人生つまらないよ〜 」


「まぁまぁ。でもお母さん安心したわ 」


「なんで? 」


「そりゃ〜……えっと、娘がいい所に就職できるんですもの。親としては嬉しいでしょ? 」


「……そうね 」


 他愛のない話をして、ご飯食べて、勉強をして、寝た。

 それを三年続けて、15歳になったから医療試験を受けようとした。

 この国は15歳から医者になれる。

 

「ん? 」


 電話が鳴った。

 お母さんからだ。


「なに? 今から試験だけど 」


「あっ……ごめんね。少し心配で 」


「そう。で、何か用事? 」


「……頑張ってね 」


「ん 」


 電話を切った。

 試験を受けた。

 会場から出たのは夕方だった。

 で、帰ると……誰も居なかった。


「んっ? 」


 電話のバイブ音。

 出る。

 妹からだった。


「ねぇお姉ちゃん!! 今どこ!? 」


「家よ? 今試験終わりだし 」


「お母さんが死んだの!! 」


「……そう 」


 意外だった。

 でもそれ以上は何も思わなかった。


「そうって…… 」


「で? どこの病院に居るの? それとも事故ったの? 」


「ねぇ! お母さんはあんたの事を大事に思ってたんだよ!? 頭の悪いより私よりも!! 死ぬまでずっとあんたの名前を呼んでたのよ!!? 」


「落ち着きなさい。で、どこの病院? 」


「あんたねぇ…………っ、身近な人の病気が分からないヤツが!! 医者なんかになれる訳ないでしょ!!! 」


 電源を切られた。

 この時なにを思ったんだっけ?

 あぁそうだ。

 こう思いながらため息を吐いたんだ。


(そんなこと言われてもなぁ )



 そこからは速かった。

 葬式して書類かいて納骨して。

 あとは色々。


 意外だったのはお母さんの保険代だ。

 お母さんは自分が病気だって分かってたらしい。

 それを隠してたらしい。

 言われてみたら、試験当日の電話は変だった。

 まぁ今考えても仕方がない。



 で、私は医者になった。

 内科の。

 それで偶然、心臓の手術をする患者が居て、手術室に入れた日……怪異の襲撃か何かだっけ?

 テロリストがなんかだっけ?


 頭を打ったからよく覚えてない。

 明確に覚えてるのは、映像に映し出されたのは……欠けた自分の両手と、瓦礫に挟まる同期だけだった。


「助け……て 」


「外科じゃないからムリよ 」


 そもそもこの両手だから、医療の知識があっても助けられない。


「ねぇ私……頑張ったんだよ? 親にたくさん言われてさ……やりたい事も諦めてさ……なのにこんな終わり方……酷いと思わない? 」


(そんなこと言われてもなぁ )


「とりあえず息をしてなさい。運が良ければ助かるから 」


 投げやりな言葉を吐いて、目を閉じて、息をした。

 しばらくして助けは来たけど、結局生き残ったのは私だけだった。


「医者……できなくなったわね 」


 右の小指と薬指。

 残ったそれだけを見て、家でボーってしていた。


 こんなボーっとするなんて、何年ぶりか分からない。

 ずっと勉強してたから、何もしないのが落ち着かない。

 暇だったからコーヒーでも入れようとする。

 でも利き手じゃないから上手く扱えない。


「なんでこんなに……生きづらいんだっけ? 」


 少し首を捻った。


(今の状況って、私のせいだっけ? そもそも……これからどう生きたら良いんだろ? )


 医者になる以外の道なんて、考えたことも無かった。

 

(……今の私に、普通の生活もできない私に、価値なんてあるのかな? )


 カシャンって、コップが落ちた。

 左手を伸ばしたけど、指がなかったから取れなかった。


「アレ? 私に生きてる価値って、ないじゃん 」



 

「接木 咲です。それでお話の方は」


「あぁ。君の代わりに別の人が入ったからムリだね。まぁ君も若いんだからさ、別の道が」


 ダラダラ長い話が続いた。

 要約するとこうだった。

 価値のない人間はいらない。


 まぁそうだよね。

 指がある医者と指のない医者。

 どちらを取るかなんて分かりきってる。

 私でも指がある方を取る。


「……… 」


 ガムテープでペンを固定して、勉強しようとした。

 肘でページをめくって。

 ペンで文字をなぞって。

 でもなんだか虚しくなってきた。


 そもそもこのテープ、どうやって外すつもりだったんだろう?

 口で?

 残った指で?


 我ながら馬鹿なことをしたなぁ。


「ホコリ……溜まってきたなぁ 」


 ベットの上でボーっとする。

 掃除する気力も手もない。


 妹は……出ていった。

 元々仲は良くなかったし、あんな電話をしたら当然だ。


「今の私に、価値はあるのかな? 」


 独り。

 考える時間が増えた。

 そしたら後悔も増えた。


 なんでお母さんの事を、もっと見なかったんだろう?

 なんで同期の事を、もっと大切に思わなかったんだろう?

 なんで妹の事を、もっと気にかけなかったんだろう?


 そう考えてたら、涙が出てきた。


(あぁ……私ってクズだ )


 後悔して泣いてるんじゃない。

 自分が何も出来なくなって、自分が傷付いたから、今さら泣いてるだけだ。

 どこまでも自分しか見えてない。


『医者なんかになれる訳ないでしょ!!! 』


 幻聴が聞こえた。

 でも今思えば、その通りだなって思う。



 無為に過ごした。

 無価値に過ごした。

 ベットの上で、何もせず、ただぼんやりと。

 死んだように生きた。


 髪がガサツいても、肌が荒れても、脇から腐臭がし始めても、首が痒くなるほど垢が溜まっても。

 生きる気力がなくて、ただぼんやりと死んでいた。


「……ん? 」


 ガチャって、急に玄関が開いた。

 足音が近付いてくる。

 リビングの扉が開いた。



「縺雁ァ峨■繧?s 」


 そこには異様に頭のデカい人形が立っていた。

 はち切れそうなほどの頭部。

 下の体は綺麗なドレス。

 すぐ分かった。

 これが怪異だって。


「ねぇ…… 」


 でも逃げる気は湧かなかった。


「あんたに殺されたらさ、私……無価値な人間じゃないのかしら? 」


「…… 谿コ縺励※ 」






 目が覚めたら、私は病院だった。

 眩しい蛍光灯に手を伸ばす。

 その手には……指が付いていた。


「えっ? 」


「目が覚めた? 」


 隣には、綺麗な女の子が居た。

 透明な髪……心配するように揺れる赤い瞳。

 その子は自分のことを……哀花って名乗った。




「っ!? 」


「グモーニング! お姫様!! 」


 今のは……夢?

 違う怪異の攻撃だ。


「今……どういう状況? 」


「俺が先に目覚めた。お前お姫様抱っこ!! そのまま逃走中!!! 」


「じゃなくて! ……敵は? 」


 心無しか、歩の速度が上がった。


「無理無理無理無理!! 逃げ一択!!! だってアイツ」


 揺れ。

 一瞬。

 今通った通路が、上から叩き潰された。


「怪異化しやがったからな!! 」


 通路。

 を埋め尽くす黒。

 その中央には、白い羽根で顔を覆い、三口のクチバシを逆さに構える、人型の異形が居た。


「ミツ」「ケ」「タ 」

 

「うぉ!? 」


 黒から羽ばたいたカラスは高速で通路を駆け抜け、歩の左腕を切り裂いた。

 けれどその翼は一瞬で砕け散った。


「いま治す!! 」


「傷に触れんなよ咲!? 俺の傷は怪異を消失させる!! 」


「はぁ!? そんな能力聞いた事な」


 一瞬。

 空中に浮いたような感覚。

 違う、歩の足が消し飛んだだけだ。


「うぐっ!? と見せかけて喰らえ!! 」


 歩が何かを投げる。

 それは爆発した。

 でも追ってくる怪異は無傷だ。


「コノ」「テイ」「ドデ 」


「そこ空洞音したから気をつけろ!! 」


 中指を立てた歩。

 と同時に、通路は崩壊。

 怪異はそのまま落ちていった。


「治せ咲!! 」


「っ!! 」


 足を治す。

 そして歩は走り出す。


「いいか!? あいつは全力出せてねぇ!! 地下で暴れまくれば味方ごと生き埋めにするからな!! 逃げるなら今」


「歩 」


「おっ!? やっと名前で読んで」


「聞いて 」


 歩の顔を抑え、その瞳を見つめる。

 瞳に映る私が見えるほど。


「思い出したの。私は……価値のない人間だって。誰かを治さないと、救わないと、価値がないの。だから……私はアイツと」




「うるせぇ!!!!!!!!!!!!! 」





 急に怒鳴られた。

 そのせいでムカつきと一緒に涙が溢れてしまう。


「うるさいってあんた……」


「お前頭良いだろ!? だから会話したくねぇんだよ!! どうせ理屈こねくり回して! 自己中な解釈して!! 結局自分を否定するだろうからな!!! 」


「っ……あんたに何が」


「分かるわけねぇだろ!!? 俺はエスパーじゃねぇんだから人の心なんか分からねぇよ!! つーかお前とろくに会話したことねぇわカスゥ!!! それなのに新人新人って厨二病か!!? ぁぁぁ!! めんどくせぇぇー!!!! 」


 うるさい。

 馬鹿みたいに騒いでる。

 でも……言ってることは正論だ。


「価値ってなんだよ!? ただ自分の生きてる意味が分かんなくなっただけだろ!!? 」


「それが問題なのよ! なに!? あんたは私に生きる意味くれるって言うの!? 」


「くれる以前にあんだろうが!! 」


「っ!? 」


 投げられ、容赦なく壁にぶつけられる。


「なんだ!? お前は無価値です生きてる意味がありませんって誰か言ったのか!!? 彩音は!? 真城は!? 哀花は!!? 」


「……誰も……言ってない 」


「なぁ 」


 胸ぐらを掴まれる。

 乱暴に。

 でも不思議と……恐怖はなかった。

 こんな状況でも、自分に対しての嫌悪でいっぱいだった。


「もう一度あいつらに会え。そして聞いてこい……自分に価値は無いのかって。怖いだろうな、不安だろうな。でも……どうせアイツらは笑ってくれる。そんな事はないってな 」


「そんな確証がないこと」


「バーカそれはお前目線の話だろ。もっと周りのことを見てみろよ 」


「でも…… 」


 怖い。

 怖い。

 分かってるのに、真城たちなら絶対言わないって分かってるのに……確認するのが怖い。

 だって私はいつも……間違うから。

 頭のいいフリをしてるだけのクズで、無価値な人間なんだから。


「……じゃあ言ってやる 」


 また正論が来る。

 あぁ結局今も、自分が傷つきたくないから泣いてるだけで私は


「俺を助けてくれて、ありがとう 」


「……えっ? 」


「お前のおかげで生きられた。哀花とデートできた。俺にとっちゃこの人生で一度あればスーパーラッキーなことを体験させて貰えた。だから感謝してる。お前に生きて欲しいと思ってる……恩人だからな 」


 急に優しい声で、優しい笑みで、そう言われた。

 そのせいで頭が、胸が、混乱でおかしくなりそうで……


「生きてる意味はある。お前に生きて欲しいって思う人間が、ここで、生きてるんだからな 」


 ニッて、歩は笑う。


 今度は優しさのせいで、泣いてしまった。


(あぁ……忘れてた )


 ほんとに、なんで忘れてたんだろ?

 私にそう言ってくれた人が居た。

 ずっとそばに居て、私と一緒に戦ってくれた人。

 手を取って、泣いて、一緒に生きようと言ってくれた人のことを。


『そんな悲しいこと言うなよ……独りは辛いじゃねぇか。自分をたくさん傷付けて、それでも自分を許せないなんて……苦しいだろ。だからたくさん信頼するよ。俺は……生きてくれなんて無責任なことは言いたくない。でも……咲には……少しでもいいから、笑って欲しいんだ。自分を許して、生きてて良かったって、少しでも思ってくれ 』


(真城…… )


「苦しみを自己完結させんな。そして話せ。哀花や彩音、真城とな 」


「……うん 」


「よぉしやっと頷いてくれた! はい論破!! 俺の勝ちィ!!! 」


「……急にうるさいわね 」


 なんだか歩がいつも通りの馬鹿さになって、笑ってしまった。

 その瞬間、後ろの通路が吹き飛んだ。

 そこには人のようなカラスが浮かんでいる。


「うげぇもう来た……とりあえずお前は逃げろ、囮になってやっから。さっさと真城たちに、仲間にあって話つけてこい 」


「……あんな偉そうなこと言って囮になるとか……あんたも大概ね 」


「アッ? 」


 舞う羽根が、歩の右腕と腹を貫通。

 その致命傷を受けた体に触れ、治す。


「やっぱり気が変わった。()()で、生きて、帰るわよ。歩!! 」


「おう急にワガママになったな根暗のお姫様 」


 隣に立ち、二人で、怪異を睨みつける。


「ヤルって 」「イウ 」「ノ? 」


「「イエス 」」

      「だ!! 」

      「よっ!! 」

 

 涙をぬぐい、前を見る。

 今はただ……真城たちと会いたい。

 そのために生き残るんだ。







ここまで思っても自分を仲間とは言わない歩くんスタイル

 正直、この世に怪異が無ければろくに生きれてないでしょうねこの人

 と思わせて、ワンチャンカウンセラーで働けます


 理解することはとても上手な人(逆に支え続けるのが苦手)なので、たぶんカウンセラーになったら人気になると思います

 野郎後回しで女性優先にすると思いますが


 それとストックは悪夢で死にました

 呪われた血晶石31.5が出ないのが悪い(地底人)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 咲さんの過去……冷めすぎてヤバいけど、こういう子いるんやろうなぁ。居場所ができて、再確認できてよかったね。 痛いくらい、想いが伝わってきて、ちょっと涙ぐんでしまいました。 歩くんのどスト…
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