【65話後感想返し】ヤシロ、造花を作る
ジネット「ヤシロさん、今度は何を作っているんですか?」
ヤシロ「造花だ」
ジネット「ぞう、か?」
ヤシロ「あぁ。こうやって、余った布を加工して……ほい、造花の完成だ」
ジネット「わぁ! 本物のお花みたいです!」
ヤシロ「造花なら世話もしなくていいし、枯れることがないから買い替える必要もない。どうだ、安上がりだろ?」
ジネット「えっと…………それは……」
ヤシロ「どうしたんだ?」
エステラ「世話の必要がなければ、レンガの花壇はいらなくなって、レンガ工房の収益が落ちるだろう? セロンとウェンディを破局させる気かい?」
ヤシロ「いや、違ぇよ! 花壇に造花を植えておくんだよ! 見栄えがいいだろ?」
ジネット「あの……わたし、生花ギルドに知り合いがいまして……出来れば、お花は定期的に買い換えてあげたいな、と…………」
ヤシロ「いや……でも…………コスパが……」
エステラ「ヤシロ。自分さえよければいいなんて考えじゃ、経済は回らないよ」
ヤシロ「く……何十年も四十二区の経済をないがしろにし続けてきたヤツに言われたくはねぇな」
エステラ「と、とにかく! そういうものはみだりに作らないことだね」
ヤシロ「そっか……」
ジネット「で、ですが! 折角こんなに綺麗なお花が出来たんですから、活用しないともったいないです! そうだっ、その一輪はわたしの部屋に飾らせてもらっていいですか?」
ヤシロ「そうだな……無理して部屋に飾るくらいなら…………ちょっと待ってろ」
ジネット「なんですか? え、え? 茎を切っちゃうんですか!?」
ヤシロ「これでよし。ジネット、ちょっとこっち来てみろ」
ジネット「はい、なんでしょうか?」
ヤシロ「ちょっと動くなよ…………これでよしっと。コサージュだ」
ジネット「わぁ、エプロンがとても素敵に様変わりしましたね!?」
ヤシロ「飾りっ気がなかったからな。さすがに、火を使う職場に生花は置けないしな」
ジネット「嬉しいです! ありがとうございます。ヤシロさん!」
ヤシロ「まぁ、無駄にするよりかは、な」
ジネット「大切にしますね」
エステラ「あのぉ…………」
ヤシロ「なんだ、エステラ?」
エステラ「出来れば、ボクも欲しいなぁ……みたいな?」
ヤシロ「でもな、エステラ。『みだりに作らない方がいい』んだって」
エステラ「もう! どうして君はいつも、そう底意地が悪いんだい!?」
ヤシロ「お前がいつも俺に噛みついてくるからだ。どうしも欲しかったら、甘えん坊みたいに可愛らしくおねだりでもしてみるんだな」
エステラ「むぅぅ…………っ!」
ヤシロ「まぁ、お前には甘えるなんて出来ないだろうが……」
エステラ「やしろぉ……おねがい。ぼくのも、つくって?」(首「こてん」瞳「うるうる」)
ヤシロ「……………………」
エステラ「おねがい、だよ?」(星「キラキラ……」)
ヤシロ「…………き、気が向いたら、な」
エステラ「やったぁ!」
ヤシロ「……(くっそ。なんで今、ちょっとときめいた!? あんなベタな甘えん坊口調ごときに!? ……不覚だ。一生の不覚だ……)」




