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異世界詐欺師のなんちゃって経営術【SS置き場】  作者: 宮地拓海


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【55話あとがき】蝋像はいつか有効利用される日が来るのか?

ネフェリー「こんにちは」

ジネット「あ、ネフェリーさん。こんにちは」

ネフェリー「今朝採れた卵を持ってきたわよ」

ジネット「いつもありがとうございます。では、こちらが本日出たクズ野菜です」

ネフェリー「でも、よく考えたわよねぇ。養鶏場と食堂で野菜の共同購入なんて」

ジネット「そうですね。おかげさまで料理で残ったクズ野菜を無駄にせずに済んで、わたしも嬉しいです」

ネフェリー「私たちとしても、クズ野菜をわざわざ買うより安く上がって大助かりだわ」

ジネット「ヤシロさんって、本当に凄いです」

ネフェリー「一見すると、目つきの悪い小悪党に見えるのにね」

ジネット「ダメですよ。ヤシロさんが気の毒です。……ふふ」

ネフェリー「ところで、あの像はなんなの? また何か面白いことを始めるつもり?」

ジネット「いえ、そうではなくて…………ご興味ありますか?」

ネフェリー「へ!?」

ジネット「いえ、やたらと真剣な眼差しで見つめておいででしたので」

ネフェリー「そ、そんなこと…………ない、けど……さ」

ジネット「よろしければ、お近くでご覧になりますか?」

ネフェリー「えっ!? …………じゃ、じゃあ、ちょっとだけ」


――ネフェリー、蝋像を観賞。キリッとしたヤシロの顔に少しドキドキ


ジネット「素敵ですよね、その表情。ヤシロさんの頼もしさがよく表現されていて」

ネフェリー「そ、そう? まぁ、でも……うん、言われてみれば、そうかもね、言われてみればね! うん……カッコいいかも」

ジネット「ふふふ。ですよね」

ネフェリー「…………ちなみに、さ。これって一体譲ってもらうわけには……?」

ジネット「申し訳ありません。これは今、ヤシロさんが必死に追いかけている方の手がかりでして……お譲りするわけには」

ネフェリー「あ、いや、別にいいのよっ! どうしても欲しかったわけでもないしっ!」

ジネット「ですので、いつでもご覧になりに来てください」

ネフェリー「う、うん……じゃあ、ヤシロのいない時に……」

アッスント「ごめんください」

ジネット「あ、アッスントさん。こんにちは」

アッスント「ヤシロ様はご在宅で?」

ネフェリー「……様って」

ジネット「申し訳ありません。ヤシロさんは現在中央広場で張り込みをされていまして……」

アッスント「そうですか。実はご相談したい商談があったのですが……いや、おいででないなら仕方ないですね。出直してくるとしま………………こっ! これはなんですかっ!?」


――アッスント、蝋像に駆け寄りまじまじと観察する


ジネット「最近、不法に設置されているヤシロさんを模した蝋像です」

アッスント「まるでヤシロ様の生き写しのようだ……芸術性は皆無ですので売値はつかないでしょうが…………信仰の対象としてならば需要があるかもしれませんね!」

ネフェリー「信仰って…………ヤシロを信仰する物好きなんているの?」

ヤップロック「どうも、ジネットさん。今日もお邪魔しに参りました」

ジネット「あ、ヤップロックさん。ウエラーさんにトットさんとシェリルさんも。こんにちは」

ヤップロック「早速なのですが……」

ジネット「はい。いつものやつですね。どうぞ、お好きなだけ」

ヤップロック「ありがとうございます。ほら、お前たち、準備をしなさい」


――ヤップロック一家、『解放の英雄』像の前にトウモロコシを供え、全員でひざまずく


ネフェリー「……な、なに? 何が始まるの?」

ジネット「ヤップロックさんご一家は、毎日ヤシロさんの蝋像にお祈りを捧げにいらしてるんですよ。うふふ」

ネフェリー「…………いたのね、信仰してる人…………」

ジネット「ご利益、あるそうですよ」

ネフェリー「嘘でしょ?」

ジネット「本当です。この像に祈りを捧げるようになってから、ヤップロックさんは持病の腰痛が改善したそうです」

ネフェリー「胡散臭いことこの上もないわねぇ!?」

ヤンボルド「…………ども」

ジネット「ヤンボルドさん、こんにちは。今日はお食事ですか? それともヤシロさんに御用ですか?」

ヤンボルド「…………像、撫でたい」

ジネット「どうぞ。お好きな物を」


――ヤンボルド、『俺色に染めてやるぜ』像の頭をゆっくりと撫で、満足そうに笑みを浮かべる


ヤンボルド「…………オレ、今日も、頑張る」


――ヤンボルド、踵を返し食堂を出て行く


ネフェリー「…………なんだったの、今の?」

ジネット「ヤンボルドさんは、ヤシロさんのことがお気に入りなようですね。うふふ」

ネフェリー「そんな微笑ましそうな顔してていい案件なの、今の?」

レジーナ「……陰ながらに恋心を燃やす第三の男やね…………今すぐ帰って書かねばっ!」


――レジーナ、凄まじいスピードで出て行く


ネフェリー「な、なに、今の!? いつからここにいたの!?」

ジネット「レジーナさんの気配を察知するのは困難を極めるんですよ。うふふ」

ネフェリー「……ヤシロって、色んな変わり者に好かれてるのね……」

ジネット「はい。ヤシロさんですから。うふふ」



――その日の夜



ヤシロ「くっそ! 今日も空振りだ!」

ジネット「お帰りなさい、ヤシロさん」

ヤシロ「おう。また捕まえ損ねたよ。で、また蝋像が増えた……」

ジネット「あ、あの、ヤシロさん……」

ヤシロ「なんだ? あ、そうか。こいつのせいで食堂が狭くなってるんだな? 悪いな。彫刻家を捕まえた時に言い逃れ出来ないよう、これらは証拠として残しておきたかったんだが……いくつか残してあとは処分してしまうか」

ジネット「でしたら、欲しいという方に差し上げるというのは?」

ヤシロ「絶対ダメだ!」

ジネット「ど、どうしてですか?」

ヤシロ「こんなもんを欲しがるヤツはろくでもないことにしか使わんからな」

ジネット「そうですか…………では、これと同じものを陽だまり亭で制作出来ないでしょうか?!」

ヤシロ「え、なに……ジネット、俺のこと嫌いなの?」

ジネット「い、いえ、そんなこと……っ! むしろ好…………ぅあえぁああっ!? な、なんでもないです!」

ヤシロ「とにかく、早く彫刻家を捕まえて、こいつらは溶かしてしまおう」

ジネット「と、溶かすんですか!?」

ヤシロ「そうすりゃ、再利用出来る」

ジネット「で、でも、この蝋像には、ご利益があるんですよ!?」

ヤシロ「どうしたジネット!?」

ジネット「この像に祈りを捧げると、腰痛が治るんです!」

ヤシロ「誰か!? ジネットが大変なことに! 今日はもう仕事させるな! ゆっくり休ませるんだ!」







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